2009年1月12日月曜日

骨転移の対処法

骨転移の対処法としては、次のような対応が一般的です。

1)まずは疼痛緩和を強く要望する
   痛みからの解放は、患者の権利でもあり、がん対策基本法でも重要項目として
   取り上げられている緩和医療の精神です。
   ただし、緩和ケア(WHO方式3段階除痛ラダー)に習熟した医師であることが必須。
   習熟した医師でもこれが効かない場合(骨痛の場合これもありえる)は(2)

2)神経ブロック あるいは オピオイド(医療用麻薬)のくも膜下投与。
   これで痛みは取れるはずですが、やはりその技量を持った医師が必要です。
   また、これだけでは骨転移そのものは改善しない為、以下の併用が望ましい。

3)ビスフォスフォネート剤(ゾメタ等)の静注。

4)骨転移が限局的であれば放射線の外部照射。

5)骨転移ヶ所が多ければ放射性同位元素(メタストロン)の静注。
   ただしこの処置ができる医療機関は限られています。

以上ですが、主治医とも良く相談なさってみてください。(私見)

2009年1月9日金曜日

東大、数学モデル用いた前立腺がんの治療法を開発

 東京大学生産技術研究所の合原一幸教授らは、数学モデルを用いた前立腺がんの治療法を開発した。前立腺がんの大きさを反映する、糖たんぱく質の一種「前立腺特異抗原(PSA)」に着目。微分方程式を応用し、PSAの数値から投薬の最適なタイミングを患者ごとに割り出す。有効な治療法の提供につながるため、患者のQOL(生活の質)の向上が期待できる。 前立腺がんに対し、国内の多くの病院では抗男性ホルモン剤などを投与するのが一般的。ただ投与をそのまま続けていくと効果が薄れ、がんが再発してしまうことがある。そのためPSAに応じて投与を中断・再開する治療法が提唱されているものの、患者により効果にバラつきがあるのが難点だった。(日刊工業新聞 2008年12月24日)

意味がもひとつ分かり難い記事ですが、推測するにどうも前立腺がんに詳しくない記者が書いたようです。

間歇療法を行う時は、PSAがどの数値まで下がればホルモン剤を休止し、どの数値まで上がれば再開するかが重要なポイントとなりますが、
「患者それぞれのPSAの値(初期値かどうかは不明)から、間歇療法におけるホルモン剤投与の休止と再開のタイミングを数式で判断可能とした」と言えばもっと明快になるでしょう。
その式の中でPSAの値を函数としてどのように扱っているのかをもっと知りたいですね。
素人には理解不能なほど高度な数式なんでしょうか?(^^;;;

2009年1月8日木曜日

術前の血漿HER2、EHFR値は予後に関連

ヒト上皮増殖因子受容体-2(HER2)および上皮増殖因子受容体(EGFR)発現は前立腺癌の進行に関連することが知られている。限局性前立腺癌に対し根治的前立腺摘出術ならびに両側リンパ節切除術を施行した患者227例の術前の血漿HER2およびEGFR値を市販のELISAにより測定した。術前血漿EGFRおよびHER2の中央値はそれぞれ31.4ng/mL(4分位範囲19.2ng/mL)および10.0ng/mL(2.7ng/mL)であった。精嚢浸潤のみられた患者ではHER2が上昇していた(p=0.033)。標準的な術前予測因子で補正した個別多変量解析では、EGFRの低値、HERの高値およびHER2/EGFR比の高値がPSA増悪と関連していた(それぞれp=0.003、p<0.001およびp<0.001)。標準的な術後予測因子で補正した個別多変量解析では、EGFRの低値およびHER2/EGFR比の高値がPSA増悪と関連していた(それぞれp=0.027およびp<0.001)。PSA増悪のみられた患者ではHER2が有意に高値(p=0.023)、EGFRが低値(p=0.04)であり、侵襲性癌の特徴(転移の発症、PSA倍加時間<10か月または局所救済放射線療法無効)を示した。
根治的前立腺摘出術前の血漿HER2およびEHFR値は術後の前立腺癌の進行に関連しており、長期の無再発生存期間および早期転移の予測ツールになりうると考えられた。
↓ 原文
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez?cmd=Retrieve&db=PubMed&dopt=AbstractPlus&list_uids=17875766

直腸脱気チューブ

前立腺がんの放射線治療で最もやりにくいのは直腸の位置が定まらないこと。
直腸脱気チューブは直腸に挿入して直腸の形状を固定し、放射線を前立腺のみに照射しやすくする器具。先端は滑らかな半球状で直腸に挿入しやすい。側面に細長い楕円(だえん)形の穴が複数空いており、挿入すると穴から直腸内を脱気できる。
アオイ(静岡県御殿場市)が製造し、ネジメーカーの東海部品工業(静岡県沼津市)が包装・検品を担当、医療機器専門商社の協和医科器械が販路を開拓する。(日刊工業新聞 2009年01月08日)

デガレリクス(Gn-RHアンタゴニスト)

米国食品医薬品局(FDA)2008年12月29日の発表によると、FDAは注射剤degarelix〔デガレリクス〕を前立腺がん治療薬として承認した。前立腺がん治療薬では数年ぶりの新薬となる。
Degarelixは進行性前立腺癌の治療を目的とする、Gn-RH(*)アンタゴニスト(受容体拮抗薬)。
リュープリンやゾラデックス等のLH-RHアゴニストがLH-RH受容体の働きを刺激する(ダウンレギュレーション作用で結局は抑制に働く)のに対し、
デガレリクスは同受容体と拮抗して直ちに抑制作用を発揮させるのが特徴。
この薬群は、前立腺癌が成長し続けるうえで重要な役割をもつテストステロンを抑制し前立腺癌の成長と進行を遅らせ、去勢と同等の状態を作り出す。
これまでのLH-RHアゴニスト(アナログ剤)というのは、要するにLH-RHの類似偽薬ですから、
LH-RHの自然な反応として、一時的せよテストステロンの上昇を招くことがあります(フレアーアップ現象)。
その過剰連続刺激に対する防御反応から、今度はレセプターが減少しテストステロンの産生が抑制されるわけですから、
初期投与時には、前もって抗男性ホルモンでテストステロンを下げておく等、それなりの注意が必要でしたが、アンタゴニストであるデガレリクス(degarelix)は直接テストステロンの産生を抑制するので、フレアーアップ現象はみられず、その必要はありません。
どちらの薬剤の投与でも、患者のほぼ全員に、精巣摘出術と同等レベルのテストステロン抑制効果があり、副作用に関しては類似しており特に優劣はありません。

* GnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン):
FSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体化ホルモン)を下垂体前葉から分泌させるペプチドホルモンで、視床下部で合成、分泌される。