2017年4月16日日曜日

不安が強いほど、不要な手術を選択する可能性が高い


「Journal of Urology」2017年2月号
 米ニューヨーク州立大学バッファロー校のHeather Orom氏らが、「限局性前立腺がん」と診断された男性1,531人を対象に、治療選択に関する行動を分析したところ、監視療法が妥当と思われる低リスク患者でも、がんと判明後の精神的な不安が強い患者ほど、外科手術を選択する確率が高いことが判明した。
Orom氏らは次のように述べている。
「精神的苦痛が、低リスクの前立腺癌患者に積極的治療を選択させる大きな誘因となっている。予後に関する明確な情報と不安への対処法を提供することで、治療に関する意志決定プロセスが改善され、過剰治療による生活の質の悪化を防ぐことが望まれる。外科手術や放射線療法などの積極的治療は、程度の差はあれ、勃起不全や尿失禁などなんらかの副作用を伴うもの。低リスクの前立腺がんであれば、監視療法の選択により、過剰治療を回避できる可能性がある。」

ASCO等による「前立腺癌患者の小線源療法に関する臨床ガイドライン」の改定について

米国臨床腫瘍学会(ASCO)とCancer Care Ontarioは、「前立腺癌患者の小線源療法に関する臨床ガイドライン」の改定に関し、共同発表を行った。
(Journal of Clinical Oncologyに2017年3月27日掲載)

http://www.asco.org/about-asco/press-center/news-releases/asco-and-cancer-care-ontario-update-guideline-radiation

今回のガイドライン更新では、専門家パネルによる、無作為比較試験5件(2011年から2016年12月まで)の検討が行われ、さまざまなリスクグループに対し、エビデンスに基づいた提唱が行われ、最も効果的な小線源療法があげられています。

(改定の要点をいくつか抜粋しておきます。)

・低リスクの前立腺がん患者の場合、低線量率小線源療法(LDR)単独、外照射単独、または手術が提唱されるべき。

・中・低リスクの前立腺がん患者の場合は、LDR単独 での対応が可能な場合もある。

・外照射 ( ホルモン療法(ADT)の有無を問わない)を選択する 中リスクの前立腺がん患者に対しては、LDR(低線量率小線源療法)またはHDR(高線量率小線源療法)よるブースト照射を追加する提案がなされても良い。

・「外照射 + ホルモン療法(ADT)」を受けている高リスクの前立腺がん患者に対しては、LDRまたはHDRによるブースト照射を提唱すべきである。

・患者に対しては、複数の分野からバランス良く、すべての治療選択肢(手術、EBRT、小線源療法、監視療法)を提示し、客観的な立場で相談にのる必要がある。

・小線源療法を選択する場合、患者は厳格な品質保証基準を提供してくれる医療施設に行くべきである。

少し補足しておきます(武内@ひげの父さん)
非再発率は、生物学的等価線量(BOD)が200~220Gyぐらいまでは、ほぼ照射線量に比例するので、外照射単独より小線源療法を併用したほうが良い成績がでると思われますが、複数の治療法を重ねると治療期間が延びることの他、副作用もやはり増大する可能性があるので、病状、年齢、健康状態などを総合的に考慮し、柔軟な判断をすべきと思われます。
外照射の技術の進歩も著しく、近年は同時ブーストが可能なSIB-IMRTなども使われるようになってきました。そのような場合には、小線源によるブーストの必要性は薄くなると思われます。