2019年4月1日月曜日

性機能とホルモン療法の影響に配慮が必要

(Lancet Oncology誌 2019年3月号)

昨今の医療のトピックに「治す医療から支える医療へ」がある。
英国・リーズ大学のAmy Downing氏らは、英国のがん登録データベースを活用し、前立腺がん患者の健康関連QOLについて、後ろ向きの集団ベース研究を行った。
健康関連QOLは、限局がんと進行がんでは、大きく異なってはいないが、性機能障害のスコアは全般的に非常に低く、ホルモン療法を受けた患者は、ほてり、活力低下、体重増加、疲労などの問題を抱えていることを明らかにした。
発表者は次のようにまとめている。

「性機能障害がよくみられるが、ほとんどの男性は有益な介入や支援を提供されていない。性機能リハビリの改善やアンドロゲン除去療法の影響を軽減するための対策が必要だ」

調査対象:
前立腺がん診断後18~42ヵ月の男性を特定し、郵送によるアンケート調査を行い、以下の協力を得ることができた。
35,823例(StageⅠ/Ⅱ:63.8%, StagはⅢ:23.4%, StageⅣ:12.8%)


◆性機能障害はStageに関係なくスコアは非常に低いのが一般的で、この状態についてなんらの介入もなく放置されている患者は半数以上存在する(55.8%)

 性機能障害を有する割合:81%(80.6~81.5%)  *(  )内は95%信頼区間(以下共通)

 
◆ホルモン療法(ADT)を受けている患者と受けていない患者で下記の項目を比較したところ、中程度~重大な問題があると報告した。
  
       ホルモン療法:有     ホルモン療法:無 
 ほてり   30.7% (29.8~31.6%)   5.4% ( 5.0~ 5.8%)
 活力低下  29.4% (28.6~30.3%)  14.7% (14.2~15.3%)
 体重増加  22.5% (21.7~23.3%)   6.9% ( 6.5~ 7.3%)

◆一般的な健康関連QOLの自己評価は、
 下記の5項目の健康状態をそれぞれ5段階で評価するEQ-5D-5Lを用いた調査を行ったところ、
  ・移動の程度、・身の回りの管理、・日常の活動、・痛み/不快感、・不安/うつ
 StageⅠ~Ⅲでは類似、Ⅳでわずかに低下していた。