2009年2月16日月曜日

前立腺がんの新しいマーカー

悪性度の高い前立腺がんでは、アミノ酸の一種サルコシンが患者の尿中に増加していることが判明。米ミシガン大などの研究チームは、サルコシンが前立腺がん診断のバイオマーカー候補になりうることを、英科学誌ネイチャー(2/12)に発表した。血液を採取するPSA測定より、簡単でより正確な診断法の開発につながる可能性があるという。

参照:asahi.com の「医療・健康」
http://www.asahi.com/health/news/TKY200902150124.html

2009年2月13日金曜日

循環がん細胞検出検査(CTC)について

(参考文献): New England Jounal of Medicine 2004,351,781-791
        2004年 ASCO 抄録9552

 従来のCTやPET検査では既に病巣として5mmもしくは1cm以上のものがないと検出できませんでしたが、CTCが血液中にあるがん細胞を検出できる方法として、米国FDAで測定方法として2004年1月に認可されました。

1.CTCが測定する価値がある病態
 A.手術後転移がないか調べる場合 
  (手術後再発予防の治療を受ける必要があるかどうか)
 B.CTやPETでは転移が明らかでないが再発の超早期の検診を希望する
  場合
 C.CTやPETでは転移が明らかでないが腫瘍マーカーなどが高く再発が
  懸念される場合
 D.長期にわたり再発しやすい乳がん、前立腺がん、腎がん、肝臓がん
  などのfollowの場合

2.CTCがあまり意味がない場合
 A.既に再発場所が明らかな場合
 B.健康診断あるいは人間ドックの代わりのがん検診
 C.血中転移が少ないタイプのがん

3.CTCを推奨するタイプのがん
 乳がん、前立腺がん、大腸がん、胃癌、膵臓がん、肺癌、卵巣がん、
 子宮がん、腎臓がんなど

4.測定方法
 単なる血液検査であり、採血のみで患者自身に負担がかかりません。

5.検査精度
 1回の検査で血液中にあるがん細胞を平均36%で検出可能です。検査陽性だが実は転移がない擬陽性は0.3%以下で信頼度は高い検査です。
 つまり検査陽性の例はまず間違いなく、転移・再発があると考えられます。偽陰性が高いのが難点ですが、血液中のがん細胞を発見する方法が他にない上、この検査を時期を置いて2回練り返す事により偽陰性の割合は半減することができます。

P53遺伝子変異

肺、前立腺、咽喉頭、食道、肝臓、乳がんに対して、
P53遺伝子変異が有る場合

 ・5-FU系の抗がん剤は効きにくい。
 ・将来的には遺伝子治療薬Adveinが希望。

以上 あきらめない診察室

抗サイトカイン療法

がんの悪液質は、血液中のサイトカインが高くなっているため、 このサイトカインが悪さをして進行がん患者のQOLを下げているのだと言うことは、 以前当サイトにも記したことですが、この事実を裏付ける記事が医学雑誌に載りました。
(日本医事新報 2007 No.4359 p49~52、p57~69)

 この記事は大変参考になりますので、是非一度読むことをお勧めします。
 がんの悪液質改善、抗がん剤治療後の副作用を抑えるには、サイトカインを抑制する必要があること、 そのために抗サイトカイン療法を行う事が必要となります。

 従い、改めて進行がん患者及び抗がん剤治療中の患者に、抗サイトカイン療法、 即ちレミケード、エンブレルの投与を呼びかけます。 一人でも多くの方に抗サイトカイン療法の恩恵がある事を期待します。

がん患者のあきらめない診察室 2008年5月28日

2009年2月12日木曜日

前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)の鎮痛効果

ノースカロライナ大学医学部とヘルシンキ大学の研究グループは、前立腺癌(がん)の腫瘍マーカーのひとつ、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)が、痛みを引き起こす化学伝達物質を痛みを抑える物質に変換する、痛覚ニューロンにみられる蛋白と同一であることを突き止めた。
 マウスを用いた試験の結果、PAPの単回投与(single dose)によって、モルヒネと同等の鎮痛効果が認められ、さらに持続時間はモルヒネよりも大幅に長いことが判明した。モルヒネ単回投与の効果持続時間が5時間なのに対し、PAP単回投与では最長3日間とはるかに長い。
「この蛋白(PAP)には革新的な疼痛治療をもたらす可能性がある。モルヒネのように注射して疼痛治療に用いることもできるが、錠剤として使用できるようにしたい。」とノースカロライナ大学細胞分子生理学助教授Mark J. Zylka氏は述べている。

ホルモン療法と化学療法の併用療法

Recently, researchers in England conducted a clinical trial evaluating treatment consisting of hormone therapy plus the chemotherapy agent mitozantrone versus hormone therapy alone for patients with locally advanced prostate cancer.
Hormone therapy in this trial consisted of injections of an agent that reduced the production of androgens (particularly testosterone) in the body.
Ninety-five percent of patients who received the combination treatment experienced a complete or partial disappearance of their cancer, compared to only 53% of patients who received only hormone therapy.
Importantly, the average duration of survival following therapy was significantly higher in patients who received both Novantroneツョ and hormone therapy, nearly 7.5 years, compared to 3 years for patients receiving only hormone therapy.

最近、イギリスの研究者は、局所進行前立腺癌患者を対象とし、ホルモン単独療法・・・アンドロゲン(特にtestosterone)の生産を抑える薬剤(LH-RHアナログ剤)・・・と、ホルモン療法と化学療法(ミトキサントロン)の併用療法を比較評価する臨床試験を行いました。
がんが消滅もしくは縮小(complete or partial disappearance)したと判断しうる割合は、ホルモン療法だけを受けた患者では53%でしたが、併用療法を受けた患者では95%パーセントに達しました。
注目すべきは治療後の生存期間の平均値で、ホルモン療法だけを受けた患者の約3年と比べて、併用療法を受けた患者では約7.5年と明らかに高い数値を示しました。

2009年2月10日火曜日

NOTES(経管腔的内視鏡手術)

外科手術は、侵襲の大きい外部からの切開から、内視鏡やロボットなどを利用した低侵襲手術へ移行しつつありますが、
このNOTESという手法はそれをさらに進化させたもの。
内視鏡の進入口(あるいは臓器の摘出口)を人体の自然孔、口(胃壁)、肛門(大腸壁)、膣(膣壁)等を利用することで、
より患者への負担を少なくし、傷跡もより目立たなくすることができるという。
現段階でヒトに応用されているのは経胃と経膣の2つで、腸壁への応用は感染制御法の確率が先決。
ただ、内視鏡の操作性などの問題から「ピュア(完全)NOTES」は少なく、腹腔鏡のアシストを伴う「ハイブリッド(混合)NOTES」が大勢。
インドや南米では臨床応用がすでに盛んに行われているとのこと。

【参考実施例】
・従来なら開腹をしなければわからなかった膵がんの病期診断を、口からの内視鏡で経胃的に腹腔内観察を行う。
 (大分大第一外科北野正剛教授)

・経膣的胃粘膜下腫瘍切除を55歳女性と63歳女性に対して施行し成功。術後の疼痛の訴えは皆無に近かった。
 (阪大消化器外科中島清一助教)

・経膣的腎移植(48歳の女性から姪に)に成功。ドナーには特に低侵襲性(痛み・傷跡が小さい)が求められる。
 (米国:ジョンス・ホプキンス大)

前立腺切除に、はたしてNOTESが応用できるのか?
直腸経由となるので、傷口からの感染がやはり一番問題になるでしょうね。
会陰式同様リンパ節の郭清は難しいと思うので、初期がんに限られるでしょうし、
初期がんなら、ブラキセラピーなどもっと楽な方法もありますね。
腎臓の手術でもオトコは膣がないので難しいでしょうね。ここでも女性優位?

2009年2月6日金曜日

ダヴィンチ手術について

■医学的に期待しうる効果
- Improved cancer control
がん制御率の向上
- Early return of urinary function
排尿関連機能の早期回復
- Improved outcomes for potency
性機能を保持する可能性の向上

■術者(医師)から見たメリット
- Enhanced 3D view of the operating area
3次元画像の進歩による操作視野の向上
- Improved dexterity
器用さを発揮するための操作性の向上
- Greater surgical precision
手術精度の飛躍的増大
- Increased range of motion
操作可能範囲が広がった
- Improved access
とっつきやすい術式である
- Reproducibility
再現性がある

■患者から見たメリット
- Less pain following the operation
低進襲手術である(痛みが少なく傷跡も小さい)
- Fewer complications
煩わしさが減る
- Less risk of infection
感染の危険性が低い
- Less anesthesia
麻酔が少ない
- Less blood loss
失血が少ない
- Shorter hospital stay
入院が短くなる
- Faster and more complete recovery
より速くて、より完全な回復
- Quicker return to normal daily activities
通常の毎日の活動への、より迅速なリターン