2011年3月30日水曜日

カバジタキセル

(がんサポート情報センター:最新がんトピックス:2010/5)
カバジタキセルを開発したUSオンコロジー社の開発担当者は、「ホルモン除去療法が効かない転移性前立腺がんに対して、初めて明らかな有効性が示された試験であり、カバジタキセルは、ホルモン療法が効かなくなった後に、現在使われている化学療法剤の代わりに使われるべき薬剤だ」と、シンポジウムに先立って、記者会見で語った。
TROPIC試験と命名された、カバジタキセルの多国間臨床試験は、ホルモン療法が効かなくなり、進行前立腺がんに対する標準的化学療法剤であるタキソテール(一般名ドセタキセル)による治療を受けても、そのまま病勢が進行した前立腺がん患者755人を対象として実施された。
臨床試験に参加した患者は、〔カバジタキセル+プレドニゾン(一般名)〕投与群か、別の化学療法剤である〔ノバントロン(一般名ミトキサントロン)+プレドニゾン〕投与群に無作為に割りふられた。
観察期間の中央値12.8カ月の時点で、全生存期間中央値は、〔ノバントロン+プレドニゾン〕併用群が12.7カ月であったのに対し、〔カバジタキセル+プレドニゾン〕併用群では15.1カ月。この結果は死亡リスクを30パーセント減少させたことになる。
カバジタキセルはタキソテールと同様に、タキサン系の抗がん剤。タキソテールと同じく、細胞分裂の際に分裂の主体となる微小管の働きを阻害する薬剤でありながら、タキソテール抵抗性のがん細胞に対して効果を示すようにデザインされている。
前立腺がんの細胞は、タキソテールを細胞外に排出することで耐性を示すが、カバジタキセルは細胞外に排出されないため効果をあらわすと考えられている。
全生存期間の延長は、年齢や人種、合併症などの因子に基づいて分類した、サブグループすべてに一貫して現れ、無増悪生存期間や奏効率も、〔ノバントロン+プレドニゾン〕併用群より良かった。
副作用は、カバジタキセルを投与した患者で、発熱を伴う好中球減少症がより多くみられた。
カバジタキセルの投与においては、この毒性を注意深く観察する必要がある。
「2次化学療法でタキサン系の薬剤が使用でき、一定の有効性があり、十分耐え得る副作用であることは有望な結果です」
デューク大学医学部総合がんセンターの医師は、こう述べている。
また、タキソテールによる1次治療の反応が良好な患者では、カバジタキセルによる2次、3次治療でも反応が良い傾向にあり、「つまり、そのような患者にとっては、カバジタキセルによる治療は、1歩前進以上のものになる可能性がある」と、同医師は付け加えた。
がん治療の化学療法の進歩は常に緩やかであるが、今回の試験結果は、2004年に進行前立腺がん治療におけるタキソテールの有効性が示されたことに匹敵する、と同医師は述べてもいる。
カバジタキセルの製造会社である、サノフィ・アベンティス社は、米国食品医薬品局(FDA)に、本剤を、タキソテール耐性の進行前立腺がんに対する2次治療薬として承認申請するとみられており、カバジタキセルは、この適応でFDAの承認を受ける初めての薬剤となる可能性がある。
 →(注)2010年6月17日、FDAは、カバジタキセル(Jevtana)をプレドニゾン(ステロイド剤)との併用で承認!