(第99回日本泌尿器科学会2011/4/21 三重J-Cap研究会発表より・・・データの解析がやや判りづらいのですが)
参考サイト:がんナビ http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/search/cancer/news/201104/519539.html&cnavi=1
注:CAB(Complete Androgen Blockade)療法=MAB(Maximal Androgen Blockade)療法
進行性前立腺癌に対するホルモン治療は、CAB療法が主流となっているが、限局性もしくは局所進行性前立腺がん(T1c─T3aN0M0)に対しては、LH-RHアゴニスト(リュープリンorゾラデックス)単剤で治療を開始し、PSAの上昇に応じて抗アンドロゲン剤(カソデックス)を追加する「遅延CAB療法」が有効である。
LH-RHアゴニストのみでPSAを制御できる可能性や抗アンドロゲン剤による副作用を回避するため、LH-RHアゴニスト投与後、PSAが測定感度以下に低下しないもしくはPSAが再上昇することを確認してから抗アンドロゲン薬を追加投与する遅延-CAB療法の有効性を検討してきた。
対象は2001年1月から2004年12月までに三重J-Cap研究会に登録された前立腺癌患者(640例)のうち、遅延CAB療法が施行されたT1c─T3aN0M0の患者92例。
観察期間中央値は52.8カ月で、導入時平均年齢は76.4歳。開始時のPSAは14ng/mL(3.6~492)。
T1c T2a T2b T3a ~6 7 8~10
ステージ 27 39 20 6(例) グリソンスコア 45 26 21(例)
抗アンドロゲン薬を追加するタイミングは次の通り。
・PSA nadirが0.2より高値である場合
・PSA nadirが0.2以下であるが、PSAが3ポイント連続して0.2を超えた場合
追跡の結果、LH-RHアゴニスト単剤治療で
・PSA nadirが0.2mg/mLより高値である症例は38例
・PSA nadirが0.2mg/mL以下の症例は54例
・5年PSA非再発率は62.4%
・8年PSA非再発率は42.3%
PSA再発を確認した31症例に抗アンドロゲン薬が追加投与され、
・追加後の8年PSA非再発率は60.9%
遅延CAB療法全工程での
・5年PSA非再発率は88.3%
・9年PSA非再発率は74.8%だった。
経過観察中の癌死は1例、他因死は9例で、
・5年癌特異的生存率は98.0%、全生存率は87.5%
・9年癌特異的生存率は98.0%、全生存率は83.5%
PSA再発に関し、遅延CAB療法の維持期間は、
LH-RHアゴニスト単体治療の維持期間(<14カ月)のみが有意な危険因子となる。
LH-RHアゴニスト単剤治療中におけるPSA再発の危険因子は次の3つ。
・グリソンスコア8以上
・PSA nadir 1.4ng/mL以上
・治療開始後のPSA半減期が1.2カ月以上
高リスク群(51例):これらの危険因子を1つ以上有する
低リスク群(41例):危険因子を有しない
PSA非再発率は次の通り
1年 3年 5年 9年
低リスク群 100%、100%、 95.0%、95.0%
高リスク群 100%、86.1%、 82.6%、58.6%
局所もしくは局所進行性前立腺癌において遅延CAB療法は長期に維持できる症例が多く存在し、遅延CAB療法中にPSA再発の危険因子をモニタリングすることで適切なタイミングで抗アンドロゲン薬追加投与を行うことができる。