2009年3月25日水曜日

abiraterone:(酢酸)アビラテロン

2008年のASCO(米国臨床腫瘍学会)では、再燃前立腺がんに対する有望な新薬アビラテロンが紹介された。
これまでのホルモン薬は脳下垂体の受容体をブロックして男性ホルモンの産出を止めたが、アビラテロンは、性ホルモンの合成に関与する酵素「CYP17」を選択的に阻害し、テストステロン(男性ホルモンの一種)の精巣や副腎での産生を抑制するまったく新しい薬だ。

東京慈恵会医科大学泌尿器科の穎川晋教授の解説によれば、 「アビラテロンは、ドセタキセル(商品名タキソテール)以来の期待できる薬です。従来のホルモン療法が効かない再燃前立腺がん患者への臨床試験では34人中22人、ドセタキセルが効かない再々燃前立腺がん患者でも、28人中10人でPSA値が50%以上低下した」とのこと。

米Cougar Biotechnology社は、2008年4月にフェーズ3(第3相)試験を開始している。
ホルモン耐性の転移性前立腺癌で、ドセタキセルベースの化学療法が無効となった患者を対象に、アビラテロンとプレドニゾンの併用と、プラセボとプレドニゾンの併用を比較する。
試験終了は2011年の予定。

これまでの臨床試験についてJournal of Clinical Oncology誌(2008/7/2)には、次のように書かれている。

・複数の被験者でPSA濃度が90パーセントも低下していることが示された。
・被験者の大部分で原発巣および転移巣のいずれも腫瘍が縮小していた。
・複数の試験参加者がこの薬剤を2年半服用し、良好に疾患をコントロールでき、
 副作用も少なかった。
・多くの患者が骨痛の緩和のために服用しているモルヒネをやめることができた。

「PSA値の低下や腫瘍の縮小は単なる薬理活性の証拠でしかない。患者と一般の人にとって重要なのは、生存期間の長さや生活の質の改善などを評価項目とした無作為に比較した臨床試験が必要なことである」
と米国がん協会はコメントしている。