2009年11月7日土曜日

膠芽腫にウイルス療法が効果的

もっとも悪性度が高い脳腫瘍(しゅよう)「膠芽腫(こうがしゅ)」の増殖をウイルスを利用して抑える方法を、東京大のチームが見つけた

膠芽腫は脳腫瘍の約1割を占め、放射線や抗がん剤でたたいてもやがて再発し、患者の7割が診断から2年以内に亡くなるという。東京大医学系研究科博士課程4年の生島弘彬さんと東京大病院の藤堂具紀特任教授は、再発の理由は脳腫瘍のもとになる「がん幹細胞」が生き残るためだと考え、脳腫瘍患者から見つかった細胞増殖因子「TGFベータ」に着目した。その働きを抑える阻害剤を膠芽腫患者のがん幹細胞に作用させたところ、増殖が抑えられた。

ドイツの企業が脳腫瘍患者の脳にTGFベータ阻害剤を直接注入する臨床試験を実施中で、生島さんらは今回そのメカニズムを解明した。

チームの宮園浩平教授(分子病理学)は「がん幹細胞を阻害剤で無力化させ、残ったがん細胞を放射線や抗がん剤でたたくという組み合わせで、膠芽腫の治療が可能になるかもしれない。他のがんにも有効か今後調べたい」と話す。

膠芽腫は、脳腫瘍の約4分の1を占める神経膠腫(グリオーマ)のうち最も悪性とされ、年間10万人に1人の割合で発症。手術後、放射線治療と化学療法をしても平均余命は診断から1年程度で、特に再発した場合は有効な治療法はなかった。

藤堂特任教授らのウイルス療法は、口唇ヘルペスの原因となる単純ヘルペスウイルス1型を利用、3遺伝子を改変し、がん細胞だけで増殖するようにした。このウイルスをがん細胞に感染させると増殖し、感染したがん細胞を死滅させ、増殖したウイルスはさらに周囲のがん細胞に感染、次々と死滅させる。正常細胞に感染しても増殖しない。
ウイルス療法は、放射線治療や抗がん剤による化学療法と並び、新たな治療の選択肢になるのではないかとしている。