2014年9月25日木曜日

前立腺がんフォーラム(2014-9-23)を終えて

「前立腺がん情報は正しく患者に伝わっているか」・・・このようなことは、これまで何度も指摘させていただきました。国立がん研究センターの「がん情報サービス」も、2006年以来一度も更新されない状態が昨年まで続いていたわけですが、情報伝達そのものの伝達をおろそかにしていたということもあるでしょうが、そのような古い考え方のほうが、手術好きの先生にとっては都合が良いというのも、改訂が長らく放置されてきた原因の一つだったのではないでしょうか。治療法の選択の物差しは、古くは病期中心であり、生存率で、手術を放射線治療が追いかける状態が続いていましたが、現在は、病期以外にリスク分類の重要性が叫ばれ、治療法の選択の物差しは生存率から非再発率に移りつつあります。「がん情報サービス」も、極端な手術優先と小線源軽視の内容は改訂後影を潜めましたが、当たり障りのない最小限のものであり、依然として古い概念から脱却できてはおりません。シンポジウムでそれぞれが担当した分野は概ね次のようなものでした。

 伊藤一人先生:PSA検診と診断に関して。
 齊藤史郎先生:手術から放射線治療までを全般的に。リスク分類の解説も。
 岡本圭生先生:放射線治療、特に小線源とトリモダリティについて。
        非再発率と初回治療の重要性も。
 ひげの父さん:治療法の選択で注意しなければならない点について。
        セカンドオピニオンと新薬の話も少し。

・治療法を決めるのは生存率より非再発率
・キャンサーフリーを目指すなら初回治療が大切。
・病期だけじゃなくリスク分類を重視すべき。
・限局がんと診断されても、実際はそうとは限らず、
 リスクが高いほど、浸潤がんである可能性が大きくなる。
・前立腺がんの手術では、その構造上(直腸、膀胱、尿道括約筋、神経血管束などと接している)大きく切り取ることが難しいので、浸潤がんの場合には、手術より、ややはみ出して照射できる放射線治療のほうが有利となる。
・高リスクでは、同じ放射線治療でも、IMRTより「小線源療法+外照射」のほうが照射線量で優れている。
・患者は目の前の専門医の意見に流されやすい・・・セカンドオピニオンは必須。
・今年は3つの新薬が承認され、ドセタキセル以降の手詰まりにも希望の光が見えて来た。

このような考え方は、腺友ネットの掲示板を見ていただいている人であれば、すでにご存じだろうと思いますが、「がん情報サービス」には、ほとんど書かれていないことばかり。
しかし、欧米で信頼のあるNCCNのガイドラインには極めて近い考え方であり、どちらかと言えば「がん情報サービス」のほうが、ガラパゴスと言えるのではないでしょうか。
古い考え方(手術優先)から、なかなか脱却できない公的な医療情報サイトを尻眼に、公共放送のほうが先に、前立腺がん治療の、ここ10年の目覚ましい進歩に、興味を示していただいたということではないでしょうか。

シンポジウムで専門医と壇上に並んぶことは、これまでもなんどか経験はしていますが、前立腺がんに関する質問にはほとんど専門医が答え、私はたいてい「一患者」として体験にもとずいた意見を求められるだけというケースが、多かったわけですが、このたびは、「腺友ネット」による情報発信と、患者に対するサポート活動にも眼を向けていただき、(私と関わりのあった、お二人の患者さんにも、取材にご協力をいただきました。)専門医とほぼ同等の発言機会を与えていただいことは、特筆に値する出来事だと思っております。