このたび癌治療学会に参加して、知り得たことの一つに、「前立腺がんのガイドラインが近く改訂される」という情報がありました。
前立腺がんに特有の事情かも知れませんが、欧米で用いられているガイドライン(NCCN)と日本のそれとでは、治療体系(考え方)そのものが大きく食い違っています。
2003年のNCCNガイドライン制定以降、欧米では、ステージ・PSA・グリーソンスコア、三者の組合せにより、リスク分類を決定し、そのリスク分類に応じて治療法を選択するという、「リスク分類優先の治療体系」が採られて来ましたが、日本ではガイドライン制定が2006年であったにもかかわらず、NCCNの考え方が採択されず、「ステージ優先の治療体系」を継続しました。
その後、国内の医療者内部にも徐々にNCCNの考え方が浸透して行きましたが、ガイドラインの改訂はずるずると先送りされ、
(2008年に検診に関するガイドラインが増補されましたが、これは治療法とは無縁です)
その間、先進的な医療者は別としても、裾野を構成する医療者間では、ずっとステージを重視した治療法が採られてきました。
私が前立腺がんを患った2004年頃は、それこそ簡単すぎて何の役にも立たなかった国立がんセンターのHPが、2006年、がん情報サービスへの以降を契機に、その内容が一新されましたが、中身はやはりステージ重視の古い治療体系のままでした。
私が前立腺がんの治療を終えた2005年、「ひげの父さん」の名前で、HP「もしも”前立腺がん”を告げられたなら」
http://hige103.main.jp/soulful-world/guidebook/sheet000.htm
を立上げ、NCCNのガイドラインに基づく「リスク分類優先の治療体系」を紹介してきましたが、
治療法の解説サイトとしては、世界的なエビデンスがあるにも関わらず、国内では「異端」の様相を呈していました。
(「泌尿器科医に読ませたい」とおっしゃってくださった先生もおられましたが)
それが、現在検討中の新しいガイドラインでは、「リスク分類に応じた治療体系」を採用することになるだろうとのこと。
実際のガイドラインを見るまでは、まだまだ安心できないのですが、ガイドラインの内容が変われば、当然、がん情報センターのHPも変わるでしょうし、それに続いて、他のサイトや解説書の記載も変わっていくのでしょうから、やがて私のHPも「異端」からの脱出を果たす日も近いかと思われます。
それはそれでありがたい話ではあるのですが、いかんせん、待つ時間が長すぎます!6年ですよ、6年!
ドラッグ・ラグという言葉がありますが、これは完全にガイドライン・ラグですね。