2014年10月9日木曜日

AR-V7(アンドロゲン受容体 Splice Variant 7)

大腸がんでは、全生存期間(OS)の予測は、血中循環腫瘍細胞(CTC)数に関連することが判ったという報告が最近ありましたが、(Journal of gastrointestinal and liver diseases誌2014年9月号)
前立腺がんでは、どうなんだろうと思いながら調べてみたところ、2014年AACR(米国腫瘍研究会) ではこのような発表がなされていました。 
既に見たことのある発表でしたが、内容が、遺伝子(RNAの変異)に関することで、一見用語が難しく思われたので、とりあえずスルーしていたのですが、よく読んでみると非常に重要なことが書かれていました。
http://www.nejm.jp/abstract/vol371.p1028

去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)では血液中循環腫瘍細胞(CTC)におけるAR-V7(AR Splice Variant-7=アンドロゲン受容体スプライスバリアント 7) の発現が20倍程度まで上昇するという報告もなされていますが、AR-V7ではAR阻害薬が結合できる部位が欠けているため、理論的にはAR阻害薬は無効となると言われています。
そこで、実際にCRPC患者をエンザルタミドとアビラテロンの2群に分け、血液中循環腫瘍細胞(CTC)におけるAR-V7 の発現状況と、その効果(抵抗性)のほどを調べてみたという報告で、少し手間をかけて一覧表にまとめてみるとこのような結果となりました。



注目すべきは、エンザルタミド、アビラテロンとも、AR-V7の発現があれば、PSAの反応(降下)はゼロ、つまりほとんど効果がないということになります。
AR-V7の発現が陰性だった患者では、いずれも過半数(エンザルタミド53%、アビラテロン68%)で効果が見られましたが、陰性でも効果がないという場合もあるわけです。
無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)でも陽性と陰性でははっきり差がついているようです。
ならば、AR-V7の発現の有無が手軽に調べられれば、無駄な投与が減らせると思うのですが、一般的にはこのような検査をやっている事例というのは、まだ耳にしたことはありませんし、現時点ではこのような解説を、患者に対してしてくれる専門医にも、まだ出会ったことはありません。
AR-V7の遺伝子検査は、日本ではまだほとんど実用化されていないと思われます。
しかし、逆にこうしたアンドロゲンレセプターに異常がある場合には化学療法が奏功しやすいという報告もあるので、これらの薬が有効でないと判った場合には、すみやかにドセタキセル(タキソテール)やカボザンチニブ(カバジタキセル)などの抗がん剤を検討するべきでしょう。 

前立腺がんに関しては、個別医療ではまだまだ遅れを取っていると思われます。
これはまだ小規模試験なので、これでAR-V7の発現率がどのくらいかは(62例中では約3割)良くわからないと思いますが、AR-V7の発現があれば、新しいホルモン療法の薬であっても、あまり期待がもてないということはまず間違いはなさそうです。
少し乱暴な計算ですが、全CRPC患者のAR-V7の陰性率を約7割とみなすなら、エンザルタミドが有効なのは約5割、アビラテロンが有効なのは約6割ということになります。

一方を使用して効果があった場合でも、やがて耐性を生じ、薬が効かなくなった後に、もう片方の薬を使ってもまた新たな効果が望めれば良いのですが、多くの場合交叉耐性(1種類の薬剤に対して耐性を獲得すると同時に別の種類の薬剤に対する耐性も獲得することをいう。一般に化学構造や作用機序が類似している薬剤間で生じる。)が生じて、効果が期待できなくなるようです。
これら2種の新薬はどちらかを選ぶことはできても、両方の恩恵には授かることはほとんど期待できないということのようです。
しかし、従来のホルモン療法とドセタキセルを組み合わせるだけでも、大きな効果が出ていることもあるように、他のがんでも、複数を薬を組み合わせると、意外な効果があると言う場合もめずらしくないようなので、そのあたりの臨床試験の進展にも今後期待を寄せたいところです。

これらの薬の承認は欧米より約3年遅れましたが、このタイムラグはこれらの薬の使い方の研究にもそれだけの遅れが生じているということで、このままだといつまでも米国などの後追いが続くのでしょうね。

2014年9月26日金曜日

ペプチドワクチン(免疫療法)臨床試験のお知らせ

前立腺がんを対象としたペプチドワクチン(免疫療法)の第III相臨床試験が始まっています。
市中のクリニックなどで自由診療(保険対象外)として行われている免疫療法は、高額な割にはほとんど効果が見られないという評も多いようですが、それとは異なる免疫療法の研究が、長年地道に進められてきており、このペプチドワクチン療法も、これまで行われた治験でもなかなか良い成績をあげているようで、副作用も少ないということです。

ランダム化比較試験(RCT)となるので、たとえ申込んでも、必ずしも本物のペプチドワクチンに当たるとは限らないのですが、それでも試してみようと考えておられる方は、詳細を良くお読みいただいた上で、ご自分でお申込みください。
http://fujifilm.jp/business/healthcare/medicine/vaccine_trial/


去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)の薬物療法プロトコール

去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)に対する薬物療法の選択について、症例毎の優先順位を一覧表にしてみました。
米国泌尿器科学会のガイドラインを参考にしつつ、我国の事情に合わせ、適宜アレンジをしたものです。
女性ホルモン系薬剤については、米国では心血管疾患の副作用が懸念され、ほとんど使われておりません。ステロイドについても同様ですが、日本ではしばしば用いられてきました。

我国ではこのような基準がないので、どの薬をどの順序で飲むかということに関しては、基本的には、主治医と患者の話し合いで決まると言ってもいいでしょう。
新薬が出たからこそのうれいし悩み?かも知れません。
新薬の登場により、ドセタキセルが最後の砦であった時代は、ついに終わりを告げたわけですが、その新薬をドセタキセルの後で使うか、前に使うかという判断は、保険適応もからむのでちょっとややこしい様相を呈しています。
アビラテロンは、ドセタキセルの前後いずれでも認められていますが、エンザルタミドに関しては、ドセタキセル未使用の患者に対しても、保健扱いするかどうかは、それぞれの都道府県単位の判断にまかされているのが現状のようです。これまでに発表された臨床試験のデータからすれば、プレケモとして(ドセタキセルより先に)用いても良い結果がでているので、なんとか保健適応が可能な方向で、日本全体で統一していただきたいところです。

2014年9月25日木曜日

前立腺がんフォーラム(2014-9-23)を終えて

「前立腺がん情報は正しく患者に伝わっているか」・・・このようなことは、これまで何度も指摘させていただきました。国立がん研究センターの「がん情報サービス」も、2006年以来一度も更新されない状態が昨年まで続いていたわけですが、情報伝達そのものの伝達をおろそかにしていたということもあるでしょうが、そのような古い考え方のほうが、手術好きの先生にとっては都合が良いというのも、改訂が長らく放置されてきた原因の一つだったのではないでしょうか。治療法の選択の物差しは、古くは病期中心であり、生存率で、手術を放射線治療が追いかける状態が続いていましたが、現在は、病期以外にリスク分類の重要性が叫ばれ、治療法の選択の物差しは生存率から非再発率に移りつつあります。「がん情報サービス」も、極端な手術優先と小線源軽視の内容は改訂後影を潜めましたが、当たり障りのない最小限のものであり、依然として古い概念から脱却できてはおりません。シンポジウムでそれぞれが担当した分野は概ね次のようなものでした。

 伊藤一人先生:PSA検診と診断に関して。
 齊藤史郎先生:手術から放射線治療までを全般的に。リスク分類の解説も。
 岡本圭生先生:放射線治療、特に小線源とトリモダリティについて。
        非再発率と初回治療の重要性も。
 ひげの父さん:治療法の選択で注意しなければならない点について。
        セカンドオピニオンと新薬の話も少し。

・治療法を決めるのは生存率より非再発率
・キャンサーフリーを目指すなら初回治療が大切。
・病期だけじゃなくリスク分類を重視すべき。
・限局がんと診断されても、実際はそうとは限らず、
 リスクが高いほど、浸潤がんである可能性が大きくなる。
・前立腺がんの手術では、その構造上(直腸、膀胱、尿道括約筋、神経血管束などと接している)大きく切り取ることが難しいので、浸潤がんの場合には、手術より、ややはみ出して照射できる放射線治療のほうが有利となる。
・高リスクでは、同じ放射線治療でも、IMRTより「小線源療法+外照射」のほうが照射線量で優れている。
・患者は目の前の専門医の意見に流されやすい・・・セカンドオピニオンは必須。
・今年は3つの新薬が承認され、ドセタキセル以降の手詰まりにも希望の光が見えて来た。

このような考え方は、腺友ネットの掲示板を見ていただいている人であれば、すでにご存じだろうと思いますが、「がん情報サービス」には、ほとんど書かれていないことばかり。
しかし、欧米で信頼のあるNCCNのガイドラインには極めて近い考え方であり、どちらかと言えば「がん情報サービス」のほうが、ガラパゴスと言えるのではないでしょうか。
古い考え方(手術優先)から、なかなか脱却できない公的な医療情報サイトを尻眼に、公共放送のほうが先に、前立腺がん治療の、ここ10年の目覚ましい進歩に、興味を示していただいたということではないでしょうか。

シンポジウムで専門医と壇上に並んぶことは、これまでもなんどか経験はしていますが、前立腺がんに関する質問にはほとんど専門医が答え、私はたいてい「一患者」として体験にもとずいた意見を求められるだけというケースが、多かったわけですが、このたびは、「腺友ネット」による情報発信と、患者に対するサポート活動にも眼を向けていただき、(私と関わりのあった、お二人の患者さんにも、取材にご協力をいただきました。)専門医とほぼ同等の発言機会を与えていただいことは、特筆に値する出来事だと思っております。

2014年9月16日火曜日

新薬の使い方に関して


これまでのホルモン療法ではドセタキセル以降の手詰まりが最大の問題点であったわけですが、この突破口となるのが、これらの新薬の承認であり、もう一つは従来の治療法の見直しといえるでしょう。

ASCO2014で注目された発表(第Ⅲ相臨床試験)ですが、まだホルモン感受性のある転移性前立腺がんに対しては、従来のホルモン療法にドセタキセルを併用すれば、著しくOS(全生存期間)が延びることが判明しました。CRPC(去勢抵抗性前立腺がん)以前の段階でも、別の新しい選択肢が見えて来たわけです。

こうした従来の治療法の見直しと、相次ぐ新薬の登場とを合わせて考えると、今後のホルモン療法は一気に選択肢の多様化が進むわけで、2014年はまさに、薬物療法に頼らざるを得ない前立腺がん患者にとっては、新しい時代の到来と言っても過言ではないと思っています。

(米国では、2011年がこのような時代であり、我国では3年ほど遅れています)

以下は近畿大学病院泌尿器科植村教授のメディアセミナー(ヤンセン・アストラゼネカ、サノフィ)に関する複数の記事の報告を参考に、”ひげの父さん”がまとめなおしたものです。

                   *

前立腺がんには、外科的去勢や薬物去勢が施されるが、アンドロゲン分泌が抑制されているにもかかわらず、病勢が進行する状態をCRPC(去勢抵抗性前立腺がん)と呼ぶ。
早期のCRPCでは、抑制しきれていない副腎や前立腺がん細胞自身で作られるアンドロゲンにより、前立腺がんが悪化するため、さらにアンドロゲンを徹底的に抑制することが重要となる。

2014年、我国ではエンザルタミド、アビラテロン(ホルモン療法剤)、カバジタキセル(抗がん剤)が相次いで承認され、CRPC治療は新しい時代を迎えようとしている。
エンザルタミド(イクスタンジ)は、アンドロゲン受容体への結合を阻害する働きのほか、アンドロゲン受容体の核内移行とDNA結合を妨げ、活性化補助因子の動員を抑制する。
アビラテロン(ザイティガ)は、アンドロゲン合成酵素のCYP17活性を阻害する全く新しい作用機序の薬であり、早期のCRPCに対して、精巣・副腎・前立腺がん組織のすべてでアンドロゲン合成を抑制することにより、予後の改善が期待される。

しかしながら、CRPCにおける細胞増殖には、アンドロゲン非依存性の経路が存在するため、いずれホルモン療法によるアンドロゲン除去に抵抗性が生じてくる。
そのような場合にはドセタキセルが標準治療であるが、ドセタキセル後の治療選択肢として、このたびカバジタキセルが承認された。
アンドロゲン標的薬に抵抗性を示す患者さんも居るので、化学療法も重要な役割を持つ。

現在、アビラテロンだけが化学療法未治療のCRPCにも使用できるが、エンザルタミドも近く同様に使えるようになると思われる。

CRPC治療の今後の流れとしては、次のような手順が予測される。
 ①まずは、アビラテロンもしくはエンザルタミド。
 ②進行後にもう1つの薬剤を投与。(エンザルタミドもしくはアビラテロン)
 ③さらに進行した場合にドセタキセル。
 ④その後にカバジタキセル。・・・ドセタキセルによるしびれでADL(日常生活動作)が低下する
  ようなら、早めに切り替えても良い。

アビラテロンとエンザルタミドの使い分けについては、現状では大きな差はなさそうだ。

いずれにも目立った副作用はなさそうだが、アビラテロンについてはプレドニゾロン(ステロイド剤)の併用が必要なため、それに伴う副作用(疲労感、背部痛、悪心など)が生じるかも知れない。

カバジタキセルの副作用では、(発熱性)好中球減少が多く、骨髄抑制の対策が重要となる。

しかし、G-CSF製剤(注)の適切な投与と、生ものを食べない指導など、マネジメントをしっかりすれば、問題は少ないと思う。


注:G-CSF製剤とは遺伝子組換え技術によるタンパク質製剤。
  好中球(白血球の一種)を選択的に増加させ、その機能を高める働きをする。
  がん化学療法による好中球減少症の回復と、それに伴う様々なリスクを低下させる。

2014年9月1日月曜日

前立腺がんの新薬、アビラテロン

2014年8月27日、
メディアセミナー「急増中の前立腺がん 治療の最前線」(主催:ヤンセン、アストラゼネカ)
講師:植村天受氏(近畿大学泌尿器科教授)

去勢抵抗性前立腺がんを対象とする新薬3剤が相次ぎ登場することから、2014年は前立腺がん治療にパラダイムシフトが起きる。
・新規ホルモン製剤のイクスタンジ(一般名・エンザルタミド、アステラス)が2014年5月に新発売。
・ザイティガ(アビラテロン酢酸エステル、ヤンセン/アストラゼネカ)が9月2日に発売予定。
・抗がん剤のジェブタナ(カバジタキセル アセトン付加物、サノフィ)も9月2日に薬価収載される予定。

去勢抵抗性前立腺がん患者の特徴としては、
1)高齢などの理由で化学療法を受けられない患者が多い
2)予後が比較的短い などの問題があり、このようなメカニズムに即した新規のホルモン製剤が求められていた。

アビラテロン(ザイティガ)は、アンドロゲン合成酵素のCYP17活性を阻害する全く新しい作用機序の薬であり、精巣や副腎だけでなく前立腺がんの組織内にも作用し、前立腺がんに必要な男性ホルモンをシャットアウトする。
化学療法の既治療、未治療、いずれにおいても全生存期間(OS)の延長が認められた。
副作用も併用薬のプレドニゾロンに見られる症状(疲労感、背部痛、悪心など)が主であり、
長期的な観察は必要なものの、現時点では有効性、安全性が高い薬剤といえる。

現時点では、イクスタンジが化学療法既治療患者(ポストケモ)に限られているのに対し、
ザイティガは化学療法未治療患者(プレケモ)でも対象となり得る。
ただ、イクスタンジも今後、プレケモとして使用できるようになる見通しであり、いずれはどちらを使っても良いということになる。
強いて使い分けを考えるなら、副作用に基づいた判断となってくるのではないか。
両薬の作用機序が異なることから、去勢抵抗性前立腺がん患者の治療選択肢の幅は大きく広がるだろう。

2014年7月26日土曜日

カバジタキセル(ジェブタナ)の用い方

7月10日(木)開催のメディアセミナー(主催:サノフィ株式会社)における要旨
(講師:横浜市立大学大学院医学研究科泌尿器病態学 准教授 上村 博司氏)

今年(2014年)承認された前立腺がんの治療薬は以下の3つ
・5月 エンザルタミド(イクスタンジ アンドロゲン受容体阻害薬) 発売済
・7月 アビラテロン (ザイティガ  アンドロゲン合成阻害薬)    未発売
・7月 カバジタキセル(ジェブタナ 化学療法剤  注射剤)      未発売

去勢抵抗性前立腺がんの標準治療であるドセタキセル無効後の治療選択として、実臨床ではまず経口薬であるアンドロゲン受容体標的薬2剤のどちらかを選択することが多いが、化学療法を優先すべき患者を見極めることも重要。

全身状態が良い(行動の自己管理ができ、貧血が軽度)のが前提であり、
経口ホルモン療法が効きにくい症例であること。
 1)転移部位が多く初期ホルモン療法の効果が短期間
 2)転移部位の症状が強くPSA上昇が速い
 3)肝臓・肺などに転移がある

先にアンドロゲン受容体標的薬による治療を行っている場合は、病勢の進行を見逃さず、適切なタイミングで治療を切り替えることが重要。

 1)最初から抵抗性を示す症例(プライマリーレジスタンス)
     ・・・治療開始から3ヵ月以内に画像上(CT・骨シンチ)で進行の有無を確認する!
 2)1年以内に無効となる部分的抵抗性症例
 3)1年半以上効果が継続する感受性症例

頻回なモニタリングが海外のガイドラインでも推奨されている。

2014年7月10日木曜日

カバジタキセル(ジェブタナ)承認

前立腺癌を対象とした抗がん剤「カバジタキセル(JEVTANA®)」の製造販売が、7月4日に承認されました。
カバジタキセルは細胞内の微小管に作用して細胞増殖を阻害するもので、ドセタキセル治療後の前立腺癌患者の全生存期間の延長を示すことが、海外で実施された第Ⅲ相臨床試験と国内での第Ⅰ相臨床試験結果で明らかになった。
海外で実施された第Ⅲ相臨床試験(TROPIC試験、NCT00417079)では、カバジタキセル群はミトキサントロン併用群に対し、全生存期間(OS)で2.4ヶ月(中央値)の有意な延長を示した。
カバジタキセルはドセタキセルと同じくタキサン系の抗がん剤で、2013年7月にサノフィが承認申請を行い、優先審査品目として審査されていたものですが、海外ではすでに85ヶ国で承認(2014年1月現在)されています。

「いのち」というのは「元気で長生き」が基本だと思うので、もしも副作用が辛くて「気力」がなくなるなら、2.4ヶ月という全生存期間の延長も、一概に喜べないと思うのですが、副作用の現れ方には個人差があるので、この薬の恩恵に授かる前立腺がん患者も少なからず居られるのではないでしょうか。

2014年7月4日金曜日

アビラテロン(ザイティガ)承認

2013年7月にヤンセンファーマ㈱より承認申請が出されていたアビラテロン(ザイティガ)ですが、本日(2014年7月4日)付で、去勢抵抗性前立腺がんの治療剤「ザイティガ®錠250mg(アビラテロン酢酸エステル)」として、製造販売承認を取得したというニュースが流れてきました。
使用のタイミングとしては「化学療法後」と明記されていないので、「化学療法前」でも使えるものと思われます。
アビラテロンはアンドロゲン合成酵素であるCYP17を選択的に阻害することで抗腫瘍効果を示すCYP17阻害剤で、プレドニゾロンと併用し、通常は1日1回1,000mgを空腹時に経口投与する。
昔より承認が早くなったという声も聞きますが。
2014年1月現在、アビラテロンは世界87カ国で承認されているので、相変わらず薬の承認では後進国と言われてしかたがないでしょう。

2014年6月20日金曜日

ドセタキセル併用(ホルモン療法)でOSが延長

ホルモン感受性の転移性前立腺癌に対し、ホルモン療法にドセタキセルを併用すれば、全生存期間(OS)が約13カ月(高腫瘍量の患者では17カ月)有意に延長することがランダム化第3相試験CHAARTED(E3805)で示された。
            ASCO 2014:Christopher Sweeney(Dana-Farber Cancer Institute)

ドセタキセルをホルモン療法開始時から併用することには賛否両論があったが、この検証の投げかける意味は大きいと思われる。

今回報告されたのは、2014年1月16日までの追跡機間中央値29カ月における解析結果。
(患者数はいずれも400人弱、両群の患者背景はほぼ同じ)

(全生存期間中央値の下段は、抗腫瘍量の患者を示す)

今回、高腫瘍量の患者で示された全生存期間の改善17カ月、死亡リスク低下40%があまりに大きいことについて、「信じてもいいのか?」という声もある。
同様のデザイン(ADT+ドセタキセル9サイクル)で行われたGETUG-15試験では全生存期間の改善を認めておらず、「むしろ、低リスクの患者に対しては、進行するまで化学療法を加えるベネフィットはないことを示唆したもの」という見方もあるので、今のところ、遠隔転移のない(低腫瘍量の)患者に対しては、今少し慎重な見極めが必要かもしれないが、高腫瘍量のがんに対しては、ドセタキセルの併用が有利といえそうだ。

参考:【がんナビ NEWS 
2014/6/3http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/news/201406/536773.html

少し角度の異なる記事がこちらです。
参考・【海外医療情報リファランス】 http://www.cancerit.jp/28083.html

この研究が画期的であるという、発表者の以下の見解も示されています。
「ホルモン療法は1950年代から前立腺癌患者の標準治療であった。このたびの研究は新たに転移性前立腺癌と診断された患者の生存期間を延ばす治療戦略を特定した最初の研究である。その延命効果は多大であり、高度進展型の癌で化学療法の適用に適した患者に対して新たな標準治療とするに値するものだ」



2014年4月15日火曜日

抗がん剤に思う

抗がん剤については、私はまだまだ悟りを開いておらず、あれこれ迷う事も多いのが現状です。
近藤先生のようにほぼ一律に否定するような気にはなれないし、前立腺がんに限ってみれば、ドセタキセルの延命効果もほんのわずかなので、被るダメ―ジと比較すれば、それほどありがたみもなさそうに思えるのですが、人によっては、たとえ寝た切りであろうと、数ヵ月でも長く生きられるほうを選びたいという人もおられるやも知れません。
1~3ヵ月という時間の長さをしっかり頭に入れた上で、それを「せいぜい」と思うのか「貴重」と思うのか、それぞれの価値観に照らしながら個別に考えるしかないのではと思っています。
がん全体を見渡した場合には、血液がんや固形がんのいくつかの種類においては、かなり良好な結果や、延命が期待できるものもあるのは事実です。
副作用の違いは人によって差が大きいことを考えると、抗がん剤に耐えれない人もおられれば、抗がん剤のベネフィットがリスクに優る人もおられるはずです。最近の分子標的薬では、副作用からの解放は読み通りには行かないようですが、抗がん剤=「毒薬」とばかりも言えなくなりつつあるのも確かなようです。

これまで、効かないと思われていた薬が「ある特定の遺伝子に特徴のあるグループでは思いのほか良く効く」ということが判明するようなケースも出てきました。
治験でトーナメントに勝ち残った薬がエビデンスのある薬だとされていますが、これはどこかに落とし穴がある考え方ではないかと思っています。
トーナメントで敗者となった薬も、適合グループを特定できなかっただけではないのか・・・もし、そのようなマッチングをうまく見つけることができるなら、我々はもっと抗がん剤の恩恵を被ることもできるのではないか・・・漠然とそんなことも考えています。

人間と抗がん剤との適合の妙が少しずつ見えてきて、効く人、効かない人の見分け方がわかって来ると、抗がん剤のイメージももう少し変わって行くように思うのですが、ことによるとまだまだこれから数十年、あるいは百年以上という長いスパンが必要なのかも知れません。
だったら無駄や、と言いきるのも一つの見解ですが、それなりの限界を知りつつ、わずかでも現在得られる恩恵にさずかろうというのも、患者の姿勢としてはむしろ自然ではないかと思っています。

2014年4月1日火曜日

エンザルタミド(イクスタンジ:XTANDI)を承認

2014年3月24日(昨日)アステラス製薬は、2013年5月に承認申請していた
経口アンドロゲン受容体シグナル伝達阻害剤「イクスタンジ®カプセル 40mg」
(開発コード:MDV3100、一般名:エンザルタミド)について、去勢抵抗性前立腺癌の効能・効果で製造販売承認を取得しました。
1日1回投与の経口剤で、前立腺癌の成長に重要なアンドロゲン受容体シグナル伝達を、複数の作用で阻害します。
本剤(欧米での製品名:XTANDI®)は、2012年8月に米国で、2013年6月に欧州において、ドセタキセルによる化学療法施行歴を有する転移性去勢抵抗性前立腺癌の治療薬として承認を取得しています。

<承認内容の概要>
製品名:イクスタンジ®カプセル 40mg(Xtandi® Capsules 40mg)
一般名 :エンザルタミド(Enzalutamide)
効能・効果 :去勢抵抗性前立腺癌

承認内容では、化学療法未治療の前立腺癌における有効性・安全性は未確立とされていますが、いずれ遠からず、化学療法未治療の前立腺癌に対しても、承認の下りることが予想されます。

2014年2月4日火曜日

エンザルタミド(イクスタンジ)承認の見通し

今朝(2014/2/4)は前立腺がん患者にとってうれしいニュースが入ってきました

厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会は、アステラス製薬が、2013年5月に製造販売承認申請を行っていた前立腺がん治療薬「イクスタンジカプセル40mg」(エンザルタミド)について、その承認を了承した。3月の薬事分科会に報告される見通し。
MDV3100という開発コードがついていた頃から追い続けてきた薬ですが、エンザルタミドという一般名がつき、米国ではすでにXtandy(商品名)と言う名前で発売されています。エクスタンディと読むのかと思っていましたが日本名は「イクスタンジ」となったようです。
ドセタキセル治療歴のある去勢抵抗性前立腺癌患者(CRPC)を対象とした新しいタイプの抗アンドロゲン剤で、1日1回投与の経口薬で、テストステロンがアンドロゲン受容体に結合するのを阻害するアンタゴニストとしての作用のほか、アンドロゲン受容体の核内移行とDNA結合、活性化補助因子の動員を抑制するもの。
海外で実施したフェーズ3臨床試験(AFFIRM試験)では、全生存期間(OS)の中央値が4.8か月延長されています。
薬価で特にもめるようなことがなければ、春にも薬価が決まり、夏頃には、我々もこの恩恵に浴することができるのではないでしょうか?
米国から2年遅れ、欧州から1年遅れですから、タイムラグは縮小される方向にあるようです。

2013年10月7日月曜日

放射線治療と「手術給付金」

がん保険や特約付きの生命保険において、放射線治療を行った場合に「手術給付金」がもらえるのかどうか・・・
実はちょっと微妙な契約内容となっていることが多いようです。
放射線治療が手術と並んで給付対象とされる要件とされるのは、1981年に作成された「疾病・手術に関する全社統一約款」において、「総線量が50Gy以上の照射で、施術の開始日から60日の間に1回の給付を限度とする」という取り決めがなされており、多くの場合、現在でもそのまま用いられているというのが現状です。(運用上、多少の配慮はあるようですが)

問題点は二つあり、その一つ目は「総線量が50Gy以上の照射」に限定していること。
1981年と言えば、放射線治療はがん治療の亜流に過ぎなかったわけですが、その後30年を経過し、放射線治療もその進歩とともに多様化・個別化し、現在では、手術と並んで、がん治療の主流になってきたわけで、照射方法にも様々なものがあり、この規定は実際の臨床常識とは、大きくかけ離れていると言わざるを得ません。
前立腺がんの場合は、たいてい50Gy以上に該当するのですが、白血病や悪性リンパ腫などの治療では、50Gyを下回る照射が普通ですし、生物学的に同等の効果であっても、照射の分割回数によって総線量も変化し、照射回数が少なければ、総線量が50Gyを下回る場合も珍しくありません。
したがって、現在の治療技術と照らして明らかに不合理な「総線量50Gy規定」を廃止し、先の約款の文言から「50グレイ以上の照射で」を自主的に削除する保険会社も出はじめているのが現状です。

もう一つの問題点は、給付申請の期間が短すぎること。「施術の開始日から60日の間に1回の給付を限度とする」となっていますが、放射線治療に要する日数は、前立腺がんの高線量照射では約8週間を要します。治療後一息ついてから、保険の請求を行うとすれば、よほど手際よく準備を進めない限り、いつの間にか60日を過ぎ、すでに給付の期限を超えていたという可能性が高いのではないでしょうか。
放射線治療による給付金の請求を、制度上認めてはいるものの、あえて門を半分閉じたままの状態で据置き、保険会社の出費をなるべく抑えようとしているというのが本音のようです。
治療法の選定にあたって、事前に保険のシステムまで調べておかねば掛け損となるこのような取り決めは、保険の趣旨からすれば明らかに不誠実と言わざるを得ないし、ただでさえ動揺を来たしている患者にとっては辛い現実ですね。

西尾先生(元北海道がんセンター院長)が書かれた記事によると、2008年9月18日付で日本放射線腫瘍学会より生命保険協会に対して、「50Gyの線量規定」の撤廃を文書で要望したということですが、「この支払い基準について討論することは独禁法に違反になるためできない」といういかにも人を食った回答が返ってきただけで、(独禁法の趣旨で言えば、1981年の統一約款こそが問題とされても良さそうですが)保険業界に軽くあしらわれたままになっているとのこと。
http://www.com-info.org/ima/ima_20100922_nishio.html

前立腺がん患者さんから、保険の給付金に関する書き込みが掲示板にあったのをきっかけに、こうしたことを調べ始めましたが、保険の勧誘時にこうした説明を受けることはまずありませんよね。
実は、私も2005年に放射線治療を受けましたが、「手術給付金」はいただいておりません。(^^;

2013年10月2日水曜日

がん登録

全国がん登録法(議員立法)の制定に向け、前立腺がん患者の立場から見た意見書を、パブリックコメント(9/30締切)として提出しておりましたが、どうやら、私が取りまとめ「前立腺がん支援ネットワーク」名で提出させていただいた内容が、検討課題として取り上げられているようです。
「医療介護ニュース」にこのような記事が出ていました。
”全国がん登録、診療所は積極的に届け出を-治療法別「非再発率」求める声も”
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/41005.html

提出したパブコメの内容は以下の通りです。

「がん登録等の推進に関する法律案」に関する“パブリックコメント”

                                  平成25年9月21日
「国会がん患者と家族の会」の皆さま
                                  前立腺がん支援ネットワーク
                                  代表 武内 務
                                  (ひょうごがん患者連絡会事務局長)

がん登録法の制定に賛同すると共に、皆様方の推進へ向けての熱意と活動に、心よりの敬意を表しております。なお可能ならば、以下の3点にもご配慮を賜れば幸いです。

■五大がんに準じたデータ分析が欲しい 【データの活用】
 

 前立腺がんは、男性のがんでは、罹患率は胃がん、肺がん、大腸がんに次いて第4位、近年伸び率も高く、ここ10年以内には1~2位になるのではと予想されています。
死亡率は第6位ですが、現存する患者数では、すでに男性のがんではトップというデータもあります。「五大がん」に前立腺がんが含まれていないというのは、過去、我国ではまだ前立腺がんは少ないと思われていた時代のなごりではないでしょうか。

■病状と治療法に応じた、非再発率データが欲しい 【データの活用】
 

 前立腺がんには、多くの治療法がありますが、5年生存率ではどれも大差はありません。しかし、患者がショックを覚えるのは、まずはがんと告げられた時であり、次には再発を告げられた時です。初回の治療だけでがんから解放されるのと、再発し、治療を継続しつつ生き長らえるのとでは、精神面でも、QOLにおいても大違いです。治療法の選択に当たって、非再発率は重要な指標の一つであると思いますが、現在、患者にはこれが示されておりません。

■地域医療連携に組み込まれる診療所にも院内登録の義務付けを 【登録の義務付け】

 近年、地域医療連携が加速し、前立腺がんにおいても、一次治療後のPSAによる経過観察を診療所が担うケースが増えて来ており、非再発率を知るためには、どうしても診療所の協力が必要です。全ての診療所に、がん登録の義務を負わせるのが現実的でないとすれば、せめて、地域医療連携に組み込まれた診療所だけでも、院内登録に準じた義務を負わせるか、連携先の病院の院内登録に抜かりなく組み込まれるシステムを構築していただきたいものです。
                                                    以上

2013年10月1日火曜日

MRIガイドによる生検

フィリップスエレクトロニクスジャパンは、MRIガイド下で前立腺がんの針生検を行うシステムを2013年11月に発売するという。
MRI画像をリアルタイムで確認しながら生検のシミュレーションを行うことが可能で、病変部を的確に狙ったがん細胞の採取が可能となる。
前立腺がんの生検は、これまでは超音波を使った針生検が一般的だったが、超音波は前立腺がんを描出しづらく、病変部に狙い通りに針を刺すのも困難なため、ランダムに針を数回刺して細胞を採取しなければならなかった。
MRI画像では、病変の位置や悪性度を診断できることから,MRIガイド下生検が従来の生検の弱点を克服できると共に、これまでの生検では前立腺がん細胞が見つからなかった症例に対しても、検出が容易となる。

これまでの生検というのは、確かに原始的でしたね。
痛みに対する配慮もそうですが(これで酷い目に会いました)、精度においてもかなり適当なものでした。
MRIは3テスラを導入している所はまだ多くないので、1.5テスラでもどの程度実用に足るものなのか、気にはなっているのですが、そのあたりの情報はまだ掴めておりません。
こちら(下)の動画(米国)では、MRIとPETで病状を詳しく確認し、MRIとUS(超音波)の合成画像を用いて、リアルタイムで針先を確認しながら生検が行われていますね。
http://www.cancerchannel.jp/posts/2011-02-03/2224.html

我国では、PETの併用と言うのはあまり聞いたことがないのですが、MRIとUS(超音波)の合成はすでに一部で行われているようです。
テンプレートを用いた多個所立体生検をやっているところも徐々に増えつつあるようです。
生検技術の向上が、より低侵襲な治療法の普及に結びつくと考えても良いのではないでしょうか。
前立腺内におけるがん細胞の正確な位置を多個所立体生検で把握し、小線源療法による部分的治療(フォーカルセラピー)を、すでに行っている医療施設もあります。

間欠的ホルモン療法について

ホルモン療法に感受性のある転移、再発がんに対しては、通常持続的ホルモン療法が行われることが多いが、「間欠的ホルモン療法」でも、はたして同等の効果が得られるのか。
2005年に「前立腺癌の間欠的内分泌療法」(赤倉功一郎)が出版されて以来、これまでに、いくつかの研究発表がなされてきた。

2009年
泌尿器の専門雑誌「Urology View」 Vol.7 での報告によると、千葉医療センターのグループが、千葉前立腺研究会の臨床研究を基に次のような結果を発表している。
75ヶ月経過時点のPSA非再燃率は、間欠投与85%に対し、持続投与60%となり、間欠療法のほうが、PSA再燃を遅延させることが判った。

2012年
ASCOでの発表によると、転移がんの前立腺患者約3000人を登録。導入時ホルモン療法(MAB療法7カ月)で、PSAが4以下となったケースの中から、1500人を、持続ホルモン療法群(ADT)と間欠ホルモン療法群(IAD)に、ランダム(約半々)に振分けた。
間欠ホルモン療法では、PSA=20でホルモン療法開始、7カ月以降にPSAが正常化したらホルモン療法を休止し観察に移行する。
結論として、広範転移型では間欠療法が優位となったが、狭小転移型では逆に持続ホルモン療法が優位、総合的には間欠療法の非劣勢は認められないということになった。

2013年
European urology誌のオンライン版、5月に掲載された記事によると、間欠的アンドロゲン除去療法が、従来の持続的アンドロゲン除去療法と比べて劣っていないという分析結果が出た。
4675人の参加者の成績を検証したところ、40カ月から108カ月の追跡で、間欠投与法(IAD群)は従来の持続投与法(ADT群)と、全生存率において同等であることが分かった。QOLはホルモン療法の休止に伴って向上していた。
これは、2012年のASCOでの発表より調査の対象数が多く、信頼性もある。

副作用の軽減に伴う休止期間中のQOLの回復と維持、医療費の軽減(削減)などを考えると、間欠ホルモン療法の魅力は大きい。
適応症例、治療薬剤の選択、投薬(休止)期間の目安、再燃の判定など、判断が難しいことも多いと思われるが、今後は、持続ホルモン療法(ADT)よりも間欠ホルモン療法(IAD)を優先する方向に進むことを期待したい。

2013年8月30日金曜日

陽子線治療の保険適用が争点に

(ウォール・ストリート・ジャーナル8/29 を参照)
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887323779204579044262457153946.html

米国には陽子線治療施設が11カ所あり、現在計画中の施設はさらにそれを上回るという。
そんな背景の中、米国では最近になって、主要保険会社のうち少なくとも3社が、早期前立腺がんを対象とした陽子線治療を、保険の適用外であるという判断を下した。
ただし、最も影響力のある保険制度、メディケアは、まだ陽子線治療に対する支払いを続けている。

陽子線治療の擁護者は、この治療法はより高い精度で腫瘍に対処するため、副作用は減ると主張し、保険適用から外すという判断は、コストへの過剰な警戒感に基づく短絡的な考え方だと主張している。
一方、この治療法は、小児がんや脳腫瘍、眼腫瘍、膀胱腫瘍、脊髄腫瘍など、比較的まれな腫瘍にも用いられており、こうした利用法においては、波紋はあまり見られていない。

陽子線治療を、IMRTなどの標準的な治療法と比較した場合、陽子線治療のほうが効果が上回るという証拠はそれほど得られておらず、陽子線治療は有効な治療法の一つではあるものの、比較対象となる他の放射線治療に比べて、その費用が高く、コストパフォーマンスという点では大幅に劣ることは間違いない。

我国では、陽子線治療は、現在「先進医療」という扱いを受けており、保険が効かないわけですが、この治療を受けた前立腺がん患者の間では、陽子線治療の保険適用を望む声もあるようです。
でも、これは税金の無駄使いと言われても仕方がないと思っています。
標準治療である他の放射線治療と比べて、その効果や副作用に変わりがなく、うんと高価なわけですから、陽子線治療を選ぶ必然性に乏しいわけで、国民全体の医療費負担を考えても、前立腺がん患者への保健適用は、甘やかしと言われても弁解の余地はありません。このまま「先進医療」という形が続いても、止むを得ないのではないでしょうか。

ただし、がん種によっては、陽子線治療のほうが優れていると思われるものがあることも確かなので、こうしたがん種に対する健康保険の適用の話が持ち上がれば、喜んでご協力したいと考えています。

2013年8月26日月曜日

すい臓がん 早期発見が可能に

(2013/8/26 朝日新聞夕刊より)
罹患率は低くとも、死亡率が高く、早期発見も難しいと言われている膵臓がんですが、「アポリポたんぱく」のうち、アミノ酸の数が異なる2種類の量を血液検査で調べれば、早期の膵臓がんでも92%の精度で発見できることが、国立がん研究センターなどの研究で判明した。この方法と従来の腫瘍マーカーを組み合わせれば、ほぼ完全に膵臓がんの存在を把握できるという。


膵臓がんの5年生存率をおおざっぱに言えば、早期(Ⅰ期)に発見できれば3人に2人が生き残れるが、Ⅲ期だと4人に一人、Ⅳ期だと10人に一人しか生き残ることはできないと言われている。
いかに早く見つけるかが生存率向上の鍵となってくるわけです。

この発表が事実なら、膵臓がんの歴史上、最も画期的な出来事と言えるかもしれません。ただ、これが「膵臓がん検査として有用」と認められるには、「感度」の他に「特異度」も重要であり、この記事に書かれている「精度」とは、おそらく「感度」のことだと思われますが、詳しいことはまだわかっておりません。

2013年8月2日金曜日

カバジタキセル承認申請提出

2013年7月31日、サノフィは新しいタキサン系抗がん剤「カバジタキセル」(静注製剤)の承認申請を提出しました。
ドセタキセル治療歴のある転移性去勢抵抗性前立腺がん患者を対象とするもので、米国FDA(食品医薬品局)では、製品名「Jevtana」として2010年に承認されており、現在、すでに世界80数カ国で使われている薬です。

未承認薬の多かった前立腺がんですが、このところ次々と承認取得に向けての動きが始まっているようですね。^^