2013年6月27日木曜日

放射線療法と併用するアンドロゲン除去療法の期間について

高リスク前立腺癌に対しては、放射線療法とアンドロゲン除去療法の併用が標準治療となっているが、最適と思われるアンドロゲン除去療法の期間は定まっていない。
これを確認するため、放射線療法と併用するアンドロゲン除去療法の施行期間について、36カ月(3年)と18カ月(1年半)の比較試験を行ったところ、2群間に有意差のないことが示された。(ASCO2013発表)

 カナダUniversitairede SherbrookeのAbdenour Nabid氏のグループは、2000年10月から2008年1月までに、放射線療法を行った高リスク前立腺癌患者を対象に、アンドロゲン除去療法の36カ月と18カ月の予後を比較する試験を行ったところ、PSA再発、骨盤内リンパ節転移、全生存期間(OS)のいずれにおいても、2群間に有意差はなく、全生存期間(OS)に関与する因子は、「患者の年齢」と「グリソンスコア7以上」の2つだけだったことが判った。
QOLの違いについては現在評価中とのことだが、アンドロゲン除去療法の短いほうが良いと考えるのが普通だろう。

よって、導き出される結論としては、放射線療法と併用するアンドロゲン除去療法の施行期間は1年半(18カ月)で良いということになるだろう。

エンザルタミド(MDV3100)欧州で承認

 2013年6月24日、欧州において、エンザルタミド(欧米での製品名「XTANDI」、開発名MDV3100)がドセタキセルによる化学療法施行歴を有する転移性去勢抵抗性前立腺癌の効能・効果で承認を取得した。
 欧州での承認取得は、フェーズ3試験(AFFIRM試験)の結果に基づいており、全生存期間を延長することが示されている。 我国でも、今年5月に「前立腺癌」の効能・効果として製造販売承認申請を行っており、このAFFIRM試験と併せて、国内で行ったフェーズ1・2試験に基づいて申請しており、フェーズ1試験は進行性去勢抵抗性前立腺癌患者を、フェーズ2試験ではAFFIRM試験と同様に、ドセタキセル治療歴のある進行性去勢抵抗性前立腺癌患者を対象に行っている。

2013年6月10日月曜日

「前立腺ガン 最善医療のすすめ」(藤野邦夫)書評

藤野邦夫さんの新著「前立腺ガン 最善医療のすすめ」を読んでみました。一部に意見の違いはあるものの、ズバリ言うならこれはお勧めの一冊といえるでしょう。
著者がもし
泌尿器科医であれば、もろもろの事情があって、治療法の良し悪しに関してはなかなかここまではっきり書く事はできないと思います。
翻訳を生業とし、前立腺がん関係の本の翻訳や著作もしてこられ、これまでに培われた専門医との繋がりもあり、なおかつ、ご本人も前立腺がんの体験者という立場であればこそ、ここまで踏み込んだ内容にすることができたのではないでしょうか。
前立腺がんの治療では、粒子線治療(先進医療)やロボット支援手術(昨年から保険適用)が、その華やかさもあって最新治療として注目されることが多いのですが、「最善」の治療方法というものは、案外静かに隠れているもので、この本をじっくり読めば、その答えを見つけることができるでしょう。

まず始めに、普通はなかなか治療がやっかいだと思われる「高リスク」の前立腺がん患者10名の治療例が出てきます。
ほぉ~と驚かれるような事例もあるかも知れません。
かなりのハイリスク症例でも「トリモダリティ」(3つの:tri + 治療法:
modality)すなわち「小線源療法(LDR or HDR)+外部照射+ホルモン療法(長期 or 短期)」が多く用いられていることに注目すべきでしょう。
ただ、ちょっと厳しい目で見ると、その多くはまだ経過年数が不十分な途中経過であって、医学的見地からはかなり不十分なデータと言わざるを得ないわけです。
引用例として弱みが感じられるのは否定できないと思うので、かなり
冷静に読む必要があるとは思うのですが、マスコミ等で取り上げられる事例というのはほとんどがこのレベルのものであり、本書も一般患者向けの読み物としてなら、許容範囲と言えるかも知れません。
我国でのトリモダリティの実績はまだ不十分なものの、小線源療法が日本より早くから始まっている欧米では、高リスク症例に対する「トリモダリティ」はすでに10年以上の実績があり、それらを勘案すると、一定の裏付けがあると判断しても良いのではないでしょうか。
「トリモダリティ」という用語に関しては、まだ認知度が低く、国内における長期的なエビデンスが確立できているとは言い難いものの、小線源療法(単独)、ならびにその進化版である「トリモダリティ」においては、国内医療機関のハイレベルな施設、アメリカでの一般的な水準にようやく追いついてきたというのが、今の我国の現状ではないでしょうか。

小線源療法をやっている施設なら、どこでもこのような「トリモダリティ」が可能なのか・・・
患者としてはこのあたりが気になるわけですが、それにはまだ無理があり、現状ではまだ一部の医療機関に限られると思った方が良さそうです。
外照射と小線源治療のレベルが共に一定の水準に達しており、泌尿器科と放射線治療科の連携も緊密にとれている病院ということになると、なかなか傍からは見つけにくいですよね。
こうした技量を持つ病院をリストアップしてお知らせできればと思うのですが、さてどうなりますか。

「リスク分類」については、私も「前立腺がんガイドブック」 http://pros-can.net/01/01-1.html
などで、かなり早くから(2006年)その考え方に基づいた解説してきました。
6年ぶりに改訂された「前立腺癌ガイドライン2012」でも「リスク分類」の解説がなされるようになりましたが、本書でも「リスク別の治療法」という構成が取られています。
生存率ということばかりを考えると、どの治療法も大きな差がなく、結局その副作用を秤にかけて決めることが多いわけですが、非再発率に焦点を当てると、最善の治療法に辿り着く道筋は、もっと自然に浮かび上がってきます。
ハイリスクの限局がんや局所浸潤がんの治療においては、非再発率を重視すれば、手術(たとえロボットであれ)は明らかに近年の放射線治療に劣り、放射線治療の中においても、超
高線量の得られる「トリモダリティ」は、照射線量に限界のある外部照射を越える可能性を持っているということを、この本を読んで、しっかり知っておく必要があるのではないでしょうか。

見解が私と異なるのは、NCCN(National Comprehensive Cancer Network:米国)を始め、世界的なガイドラインでも、IMRT(強度変調放射線治療)「中・高リスク」の前立腺がんの標準治療と認められているにもかかわらず、この本ではIMRTを「中・高リスク」に適した治療法とは認めていないことです。ハイリスクの症例に、74Gy以下の照射線量しか当てられないようでは、技術レベルにも問題ありと思うのですが、76Gy以上の照射で、時間と共に変わる前立腺の位置変動にも、それにふさわしい制御技術で対応し(IGRT)、非常に好成績をあげている医療機関もあるわけで、私は2005年にIMRT(78Gy)による治療を受けたわけですが、当時としてはこれが最善であったと、今振り返ってもそのように思っています。

わざわざ確認したわけではありませんが、著者はおそらく、IMRTのトップレベルの医療機関における取材が不足していたのではないでしょうか。近年、照射線量という物差しで見れば、「トリモダリティ」がIMRTを追い越した感があるのは否定できませんが、部分的な骨転移やリンパ節転移への対応など、IMRTにしかできない強みもあることは確かなので、ここはもう少し冷静かつ客観的に、「適応あり」とすべきだったと思われます。
IMRTも、信頼できるのは一部(1~2割?)の医療機関かもしれませんが、高リスクでは手術に比べてはるかに好成績を上げています。トリモダリティとて、結局安心してまかせられるのは、小線源療法をやっている医療機関の一部(1割前後?)に過ぎないと思われます。
どんな治療法にもピン~キリがあるわけですが、この本では、小線源治療のピンの立場からIMRTのキリを眺めているだけのように思われて、少し残念な気がしないでもありません。

手術に限れば、熟練者による開腹手術であろうと、今流行りのダ・ヴィンチ手術であろうと、再発率そのものを一定以下にすることは難しく(厚労省研究班によれば限局がんであっても約25%が再発している)、放射線治療の上位施設とその成績を比較した場合、がんの制御率(非再発率)という点において、決定的な差があるということは否定のしようがありません。
前立腺がんにおいては、5年生存率というのはまったく無意味であり、生存率で治療法を選ぶことはほぼ不可能です。非再発率とその後のQOLで治療法を選ぶべきと思われますが、泌尿器科医にとっては、手術の再発率の高いこと(非再発率の低いこと)がどうしてもネックとなってしまいます。これが非再発率の公表は遅遅として進んでいない理由ではないでしょうか。

「たとえ再発してもまだ放射線治療がある」という説明が、泌尿器科医からなされることが多いのですが、放射線によるリカバリー照射は前立腺がない部分に放射線を当てるわけですから、上記の小線源やトリモダリティは不可能だし、結局やや広い範囲に、正常組織を壊さない程度の、やや弱目の放射線(せいぜい64~66Gy)を当てるという中途半端な手しかなく(*注)、初回のIMRTのような切れ味のするどい治療は到底望むことができません。
リカバリー照射と初回の高精度、高線量照射とは、はっきり別物だと思ったほうが良いでしょう。

患者が治療法を選択するにあたって、もっと言えば同じ治療法であってもより良い医療機関や医師を選択するにあたって、こうした情報の開示が欠かせないと思うのですが、なかなかそうのような環境が整っていないことが残念ですね。
 もっと「非再発率」に目を向けて!
 がん治療の基本は一発勝負!
これらを学ぶだけでも、この本の利用価値は十分あるのではないでしょうか。


*注(2016年8月追記)
近年はIMRTを用いて、耐容線量の小さな臓器を避けつつ、前立腺床付近に70Gyを越えるようなリカバリー照射も可能となってきました。(まだ一般的ではありませんですが)

2013年5月25日土曜日

エンザルタミド(MDV3100)承認申請

アステラス製薬は5月24日、経口アンドロゲン受容体阻害薬エンザルタミド(開発コード:MDV3100)について、前立腺癌の効能・効果で厚労省に承認申請を行った。
 同剤は、1日1回投与の経口薬で、テストステロンがアンドロゲン受容体に結合するのを阻害するアンタゴニストとしての作用のほか、アンドロゲン受容体の核内移行とDNA結合、活性化補助因子の動員を抑制する。
 今回の申請の基となったのは、海外で実施したフェーズ3のAFFIRM試験と、国内で実施したフェーズ1・2試験など。AFFIRM試験は、ドセタキセル治療歴のある去勢抵抗性前立腺癌患者(1199例)を対象にしたもので、全生存期間中央値はプラセボ群が13.6カ月だったのに対し、MDV3100群は18.4カ月と有意に延長したことが示されていた。なお、国内フェーズ1・2試験結果については、現時点で未発表。
 そのほか日本では、化学療法前の転移性去勢抵抗性前立腺癌患者を対象にしたフェーズ3試験が進行中だ。
 海外では、米国食品医薬品局(FDA)が2012年9月、ドセタキセルによる化学療法施行歴を有する転移性去勢抵抗性前立腺癌の効能・効果で承認している。また、2013年4月には、欧州医薬品審査庁(EMA)の欧州医薬品委員会(CHMP)が同剤について、ドセタキセルによる化学療法施行歴を有する転移のある去勢抵抗性前立腺癌を対象にした販売承認勧告を採択している。

2013年2月23日土曜日

前立腺がんの治療情報と「がん情報サービス」

胃がんなど、一部のがんではともかく切ることが優先されるし、それが「世界標準」と一致している場合も多い。
誰が見ても、これしかなさそうだ、これがベストだろうといえるなら治療法の選択は簡単だけど、前立腺がんの特徴の一つは、治療法が非常にたくさんあることでしょう。
悩ましいのは確かだけど、これはうれしい悲鳴でもある・・・
治療法を選ぶのは最終的には患者本人ですから、結論は人それぞれ。
人生の歩み方、考えかたも人様々ですから、「結果」は尊重されねばなりません。
ただ、ちょっと気になってるのは、最終的な結論を出す前に、それを判断する十分な医療情報が患者にちゃんと届いているかどうかですね。
前立腺がんにおいては日本では手術が7割を占めるけれど、世界では放射線治療が7割を占めている。
世界の主流は放射線だということを、皆さんはお医者さんから説明を受けたでしょうか?

「泌尿器科医」ご自身は、たぶん、公平に話をしておられるつもりなんでしょうけど、彼らもやはり手術を重視する我国の伝統的な医療社会で育ってきているわけです。
多忙な中で、得意分野以外の事も新しい情報をきちんと把握し、それを噛みくださいて、患者に公平に説明できるお医者さんと言うのは、そうたくさんおられるわけではないんですよね。
医療機関によっても、その考え方に大きな違いがあるのが特徴ですね。
手術が9割以上を占めている病院もあれば、放射線治療がほとんどを占める病院もある。
役割分担という連携システムがあれば別だが、そうでなければ、こういう病院では、患者の選択以前に、ほとんど治療法が先に決まっているようなもの。
セカンドオピニンオンというのが必要なわけはこのへんにもあると思うし、こういう特徴を知らないまま、こうした施設でセカンドオピニオンを受けると大きな「誘導」が働いてしまいそうで、お勧めはしかねますね。

ならば世界標準の放射線治療が良いかと言えば、一概にそうとも言えない。
基本的には、照射線量が多いほど再発率が下がるんですが、どの病院がどの方式の照射法が得意で何グレイの線量を当てているのか、私達にはなかなか伝わってこない。
IMRTや粒子線などは狙いを絞りやすいのが特徴だけど、照射がいくら正確でもターゲットの位置は移動するので、患者の固定や管理法、照射誤差に対するマージンの設定法、画像誘導や動体追随法の導入など様々なノウハウが必要となる。
小線源療法は前立腺そのもに埋め込むわけだから、前立腺の位置変動には追随できるが、埋め込み時の線源のズレや、前立腺のある程度の変形は避けられない。リアルタイムで照射線量を把握、再計算したり、外照射併用でさらに照射線量を上げ、中・高リスクでも安心して対応できる医療機関はまだそれほど多くはない。
要は、放射線療法もかなり上手・下手があり、どこを選ぶかが大切になってくる。
治療法の選択に際し、決断は自分で下さなければならないけれど、それを判断するにはどうしてもこれらのデータが必要となってきます。
治療法毎、医療機関毎、リスク分類毎の非再発データというのは、本来公開されてしかるべきものだと思うのですが、我々はそれをなかなか入手できません。
前立腺がんの場合、たとえ大雑把であろうと、ここ10年の治療法の変遷と、日米の違いをしるだけでも、判断材料が大幅に増えるし、それを調べる時間が待てないほど切羽詰まったケースはまずないはずです。
納得のいく詳細な情報がうまく入手できるかどうかはともかくとして、「先生におまかせします」だけはやめた方が良いと思います。
「手術」を勧められても、その場で「即答」はしないほうが賢明でしょう。地方の中小病院であればなおさらだと思うのですが、手術以外の治療法に詳しくない泌尿器科医もめずらしくないということは、知っておいて損はないと思います。

本来こうした情報はすべて公開されるべきで、現状としてはまず国立がん研究センターの「がん情報サービス」に集約されてしかるべきだと思うのですが、実際は何年も前の情報が更新されないまま色あせた状態になったままだし、詳しい説明やこうしたデータはまずどこにも見当たらない・・・
「がん情報サービス」そのものが、多くの専門医の英知を集約した、患者の為の、真剣かつ公平な情報提供システムとは、今の状態ではとても思えませんね。
もう少し、なんとかならないものかと常々思ってるしだいです。
国立がん研究センター中央病院そのものが、手術が7割を占め、伝統重視の体質のように思うので、本来なら組織的にも独立した第三者機関(それぞれの学会・多くのがんセンター・さらには患者も交えての)によるがん情報の提供が望ましいと思うのですが、だれもこういうことを大きな声で言う人はいませんね。
これってはたして前立腺がんだけの特殊な問題なんでしょうか?(他のがんでもこうした問題がありそうに思うのですが)
がん医療情報というのは古くなるとほとんど「間違い」に等しくなりますから、せめて、こまめに更新するという努力だけでも怠らないでいてほしいものです。

2012年12月26日水曜日

アビラテロン適応追加承認(FDA)


アビラテロン(CYP17阻害薬)は、プレドニゾンとの併用で、化学療法の治療歴のある転移性去勢抵抗性前立腺がん患者に対する治療薬として、米食品医薬局(FDA)に承認(2011年4月)されていましたが、ヤンセンは12/10(米国発表、我国での発表は12/25)、化学療法未治療の転移性去勢抵抗性前立腺がん治療にも適応追加の承認が得られたと発表しました。
これまでのホルモン薬は脳下垂体の受容体をブロックして男性ホルモンの産出を止めたが、アビラテロンは、性ホルモンの合成に関与する酵素「CYP17」を選択的に阻害し、テストステロン(男性ホルモンの一種)の精巣や副腎での産生を抑制するまったく新しい薬。2012年3月時点ですでに世界39カ国の承認が得られているが我国では未承認。

2012年12月10日月曜日

PSA検診不要論に対する私見

米国予防医療専門委員会(USPSTF)が「PSA検診不要論」を打ちだしてから、この問題が多く取りざたされるようになってきました。
PSA検診を不要とする主な理由は以下の二つです。
(これに財政問題を加える人もあり)

1.死亡率を下げるという根拠がない

臨床系医師の多くは「死亡率を下げる」といい、公衆衛生や予防医学に関わる人の多くは「下げるとは言えない」という。それぞれ自説に有利なランダム化比較試験を持ちだしている。
好きに論争していただければけっこうなので、特にコメントはしない。
ただ、PSA検診を止めれば、低リスクがんの発見が減ると共に、がん発見のタイミングも遅れるので、骨転移などの進行がんの比率が高まるのは否定できない。米国では3倍になるとう報告もある。

2.がん死を防ぐメリットよりも、生検や不必要な手術によって被るデメリットの方が大きい。

デメリットそのものは否定しないが、デメリットが大きいことの説明に用いられているこの図(元は英文です)は、我国では非常に誤解を生みやすい。

下の図によれば、検診により前立腺がんと診断されるのは1000人中「110人」、そのうちなんらかの治療によって合併症を引き起こすのは、少なくとも「50人」。
しかし、我国の実情はこれ(下)が正解です。
PSA検診によってがんと診断されるのは1000人中「11人」そのうちなんらかの合併症を生じるのは「5人ほど」。

前立腺がんの罹患率は米国の1/10以下であり(米国:93.4 対 日本:8.5)、実際の住民健診データ(45万人)の分析でも、がんと診断されるのは「11/1000」であることが裏付けられています。がん治療によりなんらかの合併症を引き起こすのは約0.5%。これを多いと思うか少ないと思うかはともかくとして、デメリットを10倍に拡大されたような図を見せられて、どや!と言われても、ちょっと返事に困ってしまいます。
米国のデータですから「正しい」ことには間違いないのでしょうが、注記もなくこれを日本語で見せられると、我国もこれと同等と早合点しかねません。強烈な「誘導」となってしまうのではないでしょうか。
PSA検診の普及率も日米では雲泥の差ですよね。米国ではほぼ8割ですが、日本は2割にも満たない。
PSA検診を受けた1000人当たりの比較はこの数値だけれど、実数ではもっととんでもなく大きな開きがあるわけです。

PSA検診事情においては米国は日本よりはるかに成熟しています
発展を追い求めて成熟した先進国が、「公害」の広がりに気付いてその行きすぎの修正に乗り出したというのが今の米国のPSA検診事情ではないでしょうか。
はたして、我国が発展途上国であることを自覚しないまま、ストレートに米国に追随して良いものでしょうか。

PSA検査の年間費用は少なくとも30億ドルにのぼり、米国の保険財政を圧迫しているという話も聞きます。日本の財政事情には詳しくありませんが、この数値も我国では桁違い、米国とは大きく異なるはずです。
しかし医療財政に関わる人にとっては、是非とも取り上げたい話題でしょう。
PSA検診の規制につながる動きには、純学問的な話以外に、それぞれの国情が大きく関与しているように思われます。

前立腺がん患者のほとんどはPSA検診は必要だと考えているように思うのですが、私はもともと公的検診の普及にはどちらかと言えば慎重な方でした。しかし、我国の現状を見ずして安易に「PSA検診廃止」の論調に乗っかろうという動きには、どうしても違和感を覚えてしまいます。
「公害」に十分注意を払いながら、先進国の仲間入りをするという手を模索して行くべきではないでしょうか。

2012年10月24日水曜日

デガレリクス(ゴナックス)発売開始


テストステロンの産生を抑制する前立腺がんの治療薬デガレリクス(ゴナックス=GnRHアンタゴニスト)が、昨日(10/23)より発売開始となりました。我国では本年6月末に世界で60番目に承認された皮下注射薬です。
(FDAの承認は2008年12月ですから、承認の遅れは約3年半)
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/search/cancer/news/201210/527349.html&cnavi=1
これまでは、前立腺がんのホルモン療法(アンドロゲン遮断療法)と言えば、ほとんどの場合LH-RHアゴニスト(リュープリンやゾラデックス)が、単独もしくはビカルタミド(カソデックス)等との併用で用いられてきましたが、デガレリクスは、LH-RHアゴニストに比べ、PFS(無増悪生存期間)で優位性を示したことや、要注意とされてきたフレアアップ現象(一時的なテストステロンの上昇)もなく取扱がより単純になるので、ホルモン療法のファーストラインとしてLH-RHアゴニストに置き換わる時期もそう遠くはなさそうです。
LH-RHアゴニストに対して耐性が生じた場合、セカンドラインとしてデガレリクスが有効かどうかは、現時点で情報がありません。(私見としては、「下垂体」以降の薬の機序はほとんど同じはずなので、薬の交替による新たな効果は期待できそうにないと思いますが、専門家のアドバイスがいただければありがたいですね)
参考:アゴニスト=類似薬、アンタゴニスト=拮抗薬

アステラス製薬のニュースリリースは ↓こちらから
http://www.astellas.com/jp/corporate/news/detail/gnrh-2.html

2012年10月3日水曜日

エンザルタミドは骨関連事象と疼痛増悪のリスクを低下させる


第37回欧州臨床腫瘍学会(ESMO2012)での発表によると、去勢抵抗性前立腺癌患者を対象としたフェーズ3試験で、エンザルタミド(Xtandi:米国では発売済)は全生存期間を延長すると共に、骨関連事象と疼痛増悪のリスクを低下させることが確認された。

                プラセボ群  エンザルタミド群
                 (399人)    (800人)
全生存期間中央値     13.6カ月    18.4カ月
骨関連事象出現中央値  13.3カ月    16.7カ月
疼痛(QOL調査票)     23%悪化    7.5%改善

エンザルタミド(enzalutamide)は、アンドロゲン受容体シグナル伝達経路において、テストステロンのアンドロゲン受容体への結合を競合的に阻害、アンドロゲン受容体の核内移行を阻害、そしてアンドロゲン受容体とDNAの結合阻害といった3段階の阻害作用を示す。

私見ですが、期待度は高まるばかり。日本での早期承認を期待したいですね。

参照サイト:
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/sp/esmo2012/201210/526988.html&cnavi=1

本ブログにおける関連記事:
http://higepapa.blogspot.jp/2012/09/xtandimdv3100.html
http://higepapa.blogspot.jp/2012/09/mdv3100fda.html
http://higepapa.blogspot.jp/2012/03/mdv3100.html
http://higepapa.blogspot.jp/2012/02/mdv3100.html

2012年9月27日木曜日

生検前の画像診断(米国)

針生検の時、日本ではエコー(超音波)を見ながら、このあたりと半ば適当に検討をつけて針を刺すだけですが、さすが米国は進んでいますね。
MRI(3テスラ)とPET情報を融合し、がんの位置や悪性度まで予測しながら、その情報を生検前にエコーに送って、リアルタイムで観察しながら、狙った位置に針を刺すことができるということです。
判りやすい動画(日本語字幕付き)がコレ。
http://www.cancerit.jp/1079.html

PSAが高く、強く前立腺がんが疑われる人でも、生検でなかなかがんが見つからないケースがありますが、そういう人にもこの方法は有用ではないでしょうか。

Xtandi(エンザルタミド)・・・開発コード:MDV3100

アステラス製薬は、FDA(米食品医薬品局)から承認を取得した抗がん剤「エンザルタミド」を、2012年9月14日から米国で発売したと発表した。
これまでは開発コード「MDV3100」と呼ばれていましたが、今後は米国での商品名Xtandiもしくは一般名エンザルタミドという名前で呼ばれますのでご注意ください。
転移または再発性の去勢抵抗性前立腺がん患者、言いかえればドセタキセルによる化学療法施行歴を有する前立腺がん患者を対象に承認された治療薬です。

Xtandi(エンザルタミド)は、テストステロンのアンドロゲン(男性ホルモン)受容体への結合を阻害、アンドロゲン受容体が前立腺癌細胞の核へ移行するのを阻害し、受容体がDNAへ結合することを阻害してアンドロゲン受容体の発現量が上昇している時でもがん細胞死を誘導することで効果を発現する

2012年9月12日水曜日

「ランマーク」注意喚起情報

骨転移のある患者さんは特にご注目を!

厚生労働省からデノスマブ(ランマーク皮下注120mg)に関する注意喚起情報(2012/9/11)が出されました。


”骨病変治療薬「ランマーク」投与患者での重篤な低カルシウム血症に関する注意喚起について”
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002jjwe.html

○ 「ランマーク」【別添1】は、多発性骨髄腫による骨病変及び骨転移を有する固形癌の骨病変の進展を抑える薬剤で、破骨細胞の活性化を抑制することで、骨からカルシウムが溶け出すことを抑制する作用があり、低カルシウム血症を起こすおそれがあることが知られている。

○ 7月10日に、「使用上の注意」を改訂し、重篤な低カルシウム血症が発現することについて注意喚起を行ってきたが、その後、関連性の否定できない低カルシウム血症による死亡例が2例、厚生労働省に報告されている。

○ 患者の安全確保のため、
 1.投与前及び投与後頻回に血清カルシウムを測定すること。
 2.充分量のカルシウム及びビタミンDを合わせて服用すること。
 3.重度の腎機能障害者では、低カルシウム血症を起こすおそれが高いため、
   本剤を慎重に投与すること。
 4.低カルシウム血症が認められた場合には速やかに適切な処置を行う事。

○ また、本剤投与中の患者にあっては、高カルシウム血症の場合を除き、医師の指示に従ってカルシウム及びビタミンDを合わせて服用し、手足のふるえ、しびれ等の症状がある場合には直ちに医師に連絡することが重要である。

○ このため、【別添2】のとおり、「使用上の注意」の改訂を行うとともに、医薬関係者等に対して、【別添3】により、速やかに情報提供するよう、製造販売業者に対して指示した。

 ・ 別添1(PDF:185KB)http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002jjwe-att/2r9852000002jjxv.pdf
 ・ 別添2(PDF:81KB)http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002jjwe-att/2r9852000002jkti.pdf
 ・ 別添3(PDF:1,093KB)http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002jjwe-att/2r9852000002jktw.pdf

本ブログ(2012年5月30日)の”デノスマブの副作用(低カルシウム血症)に注意”でも、米国における死亡例をお伝えしていましたが、結局、日本でも同様の事例が見つかるに到り、改めて「安全性速報」(危険性速報?)という名の注意喚起情報が出されるに至りました。
医療者患者の双方に冷静さが求められると共に、正しい使用法が望まれます。

(以下、5/30書き込みの再掲です)

2011年暮れに承認された骨転移による骨病変に対する治療薬デノスマブ(ランマーク皮下注120mg)が、2012年4月から実際に使用できるようになりました。
骨関連事象の発現を遅らせる効果は、ゾメタよりデノスマブのほうが優れている(NCI Cancer Bulletin2010年11月30日)とも言われていますが、注意を要する副作用情報が入ってきました。

米国では重篤な症候性の低カルシウム血症(症状を伴う血中カルシウムの低下)による死亡例が報告されており、昨日、第一三共のHPにも、低カルシウム血症に対し注意を喚起する製品情報が掲載されました。
http://www.daiichisankyo.co.jp/corporate/pdf/20120529.pdf
手足のふるえ、筋肉の脱力感、けいれん、しびれ などの症状が出たら要注意とか。
いずれにせよ新しい機序の分子標的薬ですから、効能の裏にどんな副作用が隠れているかも知れません。
治療を受けていて少しでも異変を感じたら、すぐに主治医に訴えるほうが無難ではないでしょうか。

2012年9月4日火曜日

MDV3100(エンザルタミド) FDAが承認


2012年9月3日、アステラス製薬は、米国メディベーション社と共同で開発を進めているエンザルタミド(enzalutamide, 開発コード:MDV3100, 米国商品名:XTANDI)について、ドセタキセルによる化学療法施行歴を有する転移性去勢抵抗性前立腺がんの効能・効果で、米国食品医薬品局(FDA)より承認を取得したと発表した。
エンザルタミドは、テストステロンがアンドロゲン受容体に結合するのを阻害するアンタゴニストとしての作用のほか、アンドロゲン受容体の核内移行とDNA結合、活性化補助因子の動員を抑制する。

日本では、化学療法前の転移性去勢抵抗性前立腺がん患者を対象にした第3相試験のほか、化学療法後の患者を対象にした第1・2相試験が進行中。


http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/search/cancer/news/201209/526586.html&cnavi=1


2012年7月13日金曜日

画像検査の必要性について(低リスクでは不要)

米国臨床腫瘍学会(ASCO)は、臨床的裏付けのない一般的な検査や治療を制限し、がん診療の質を向上させる5つのレビューを発表した。(Choosing WiselyR campaign「賢い選択を」キャンペーン)
http://www.cancerit.jp/16935.html

そのうち「NO.3」が前立腺がんに関するもので、
以下のような生検結果の患者に対しては、転移の有無を見極める病期判定に際し、次のような画像検査を実施しないよう勧告している。
(No.1、2、4、5は省略)

低リスクの前立腺がん患者
(グリソンスコアが6以下でPSA値が10未満)に対しては、転移判定にあたり次のような検査技術を用いないこと。
  ・PET検査  ・CT検査  ・骨シンチ検査

これらの患者のがんの転移の可能性は極めて少なく、転移を検出するために高度画像技術を使用しても、その効果は少なく、むしろ、これらの検査は、誤診や偽陽性のリスクを増加させることが分かっており、それらの検査に起因して、必要のない侵襲的な処置や治療を受けることになり、最終的にはQOLを低下させ、ひいては寿命を縮めることにもなりかねない。

生検でがんが見つかれば、とりあえず画像検査もするというのが、日本の現状ではないかと思うのですが、低リスクの前立腺がん(GSが6以下で、かつPSAが10未満)であれば、画像検査は必要でなく、むしろすべきでない!というのが、
米国臨床腫瘍学会ASCOの新しい見解です。

2012年7月1日日曜日

デガレリクス(ゴナックス)


2012年6月29日、デガレリクス(ゴナックス:アステラス製薬)は、日本国内において、前立腺癌治療剤としての製造販売の承認を取得しました。
  ゴナックスは、皮下注射されるGnRH受容体アンタゴニスト。GnRHは脳の視床下部で産生されるホルモンであり、脳の下垂体に存在するGnRH受容体に結合することにより、男性ホルモンの一つであるテストステロンの産生に関わっています。
これに対し、ゴナックスは、GnRH受容体へのGnRHの結合を競争的に阻害することによってテストステロンの産生を低下させ、前立腺がんの増殖を抑制します。これまでのGnRH受容体アゴニストで認めらたテストステロンの一過性の上昇を伴わないことが特徴の一つです。
  海外においては、ゴナックスは既に59カ国で承認されています。

2012年6月9日土曜日

アルファラディンは全生存期間を延長




詳細は「がんナビ」参照、以下要約。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/sp/asco2012/201206/525286.html&cnavi=1

骨転移を有する去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)に対するラジウム-223(アルファラディン)投与は、有意に全生存期間(OS)を延長することが、フェーズ3臨床試験で確認された。

アルファラディンは、骨転移を有する癌患者の治療目的としたアルファ線放射性医薬品で、
カルシウムのように骨に取り込まれ、骨転移巣を攻撃する。

対象は複数の骨転移巣を有する(他臓器転移はない)去勢抵抗性前立腺がん患者、
計921例。平均年齢70歳。
アルファラディン投与群対プラセボ(非投与)群の比を2:1に振り分けた。

【結果】
・全生存期間中央値:プラセボ=11.3カ月、アルファラディン:14.9カ月
となり、全生存期間を有意に延長している。
・ドセタキセル投与歴があるグループや、ビスホスホネート製剤使用中のグループでも、
ほぼ同様の結果。
・ALPが低い(220未満)グループでは全生存期間に有意差は見られなかったが、
高い(220以上)グループでは、有意差(3.3カ月延長)が見られた。
・骨関連事象(SRE)の発症までの期間も、プラセボ=6.7カ月に対し、
アルファラディン12.2カ月と有意に延長していた。
・安全性と忍容性についても特に問題はなし。

米国臨床腫瘍学会(ASCO2012)でRoyal Marsden HospitalのChris Parker氏が発表しましたが、同氏は先に、2011/9/23 EMCC(ストックホルム)でも、同様の内容を報告しており、さきにここでも紹介しました。
http://higepapa.blogspot.jp/2011/10/blog-post_07.html

局所進行がんにはホルモン療法単独より放射線療法併用が有利

ASCO(米国臨床腫瘍学会)2012の情報です。
要約は次の通り。

局所進行前立腺がん患者を中心としたグループで、ホルモン療法単独の場合と
ホルモン療法に放射線療法を併用した場合を比較した結果、
放射線療法を併用したほうが、全生存率が優れていた。

【対象】局所進行前立腺癌(T3またはT4、N0またはNX)が9割近くを占め、残りは、
限局性前立腺癌(T2かつPSA>40μg/L、
またはT2かつPSA>20μg/LかつGleasonスコア8-10)

【方法】ホルモン療法:LH-RHアゴニスト(or精巣摘除術)
放射線療法:骨盤に45Gy+前立腺に20-24Gy(or前立腺のみに65-69Gy)
両群の人数:それぞれ約600人。
患者背景:両群は同様で、T3/T4の患者が9割を占める。

【結果】最終解析(追跡期間中央値は8.0年)

ホルモン療法単独群  放射線療法を併用群
10年全生存率     49%         55%   

この研究で裏付けが取れたという意味はあるのでしょうが、予測通りといいますか、
ほとんど当然と思える内容なので、それほど新鮮味はないですね。

2012年6月8日金曜日

転移がんに対する間欠療法は、持続療法より有利とは言えない


ASCO(米国臨床腫瘍学会)2012の情報がいくつか入って来たので、順に紹介させてもらいます。
元の記事(↓)は煩雑なので、かなり要約してあります。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/sp/asco2012/201206/525245.html&cnavi=1

転移がん(ホルモン感受性あり)に対する標準治療は「持続ホルモン療法」とされているが、QOLに優れる「間欠ホルモン療法」で、はたして同等の効果が得られるのか。
その研究結果がASCO(米国臨床腫瘍学会)2012で発表された。

【試験内容】
転移がんの前立腺患者約3000人を登録。導入時ホルモン療法(MAB療法7カ月)で、PSAが4以下となったケースの中から、1500人を、持続ホルモン療法群と間欠ホルモン療法群に、ランダム(約半々)に振分けた。
間欠ホルモン療法では、PSA=20でホルモン療法開始、7カ月以降にPSAが正常化したら観察に移行する。

【患者背景】
振分け時の平均年齢70歳、PSA=0.2以下:35%、ホルモン療法歴なし:87%、骨痛あり:30%、GS=6以下:約25%、7:約50%、8-10:27%

【結果】
          持続ホルモン療法群  間欠ホルモン療法群
1)全生存中央値     5.8年         5.1年    ------- 全体
2)全生存中央値     4.4年         5.0年    ------- 広範転移型
3)全生存中央値     7.1年         5.2年    ------- 狭小転移型

【結論】
1):全体では、間欠ホルモン療法群の非劣性が示されず、
2):転移が広範な人では、間欠ホルモン療法の非劣性が示されたが、
3):転移が狭小な人では、持続ホルモン療法のほうが有意に優れていた。

全体的には、同等とは言えないという結果になったが、転移が広範な患者では間欠療法は持続療法と同等と言えるとのこと。
転移が広範な人と狭小な人でなぜ食い違う結果になったのか。
この原因が説明されていないので、評価に戸惑う記事と言える。

2012年5月30日水曜日

デノスマブ(ランマーク)と低カルシウム血症


2011年12月、我国でも、多発性骨髄腫および固形がんの骨転移による骨病変に対する治療薬としてデノスマブ(ランマーク皮下注120mg)が承認され、2012年4月よりこれが使用できるようになりました。
破骨細胞の活性化には、NF-κB活性化受容体(RANK)とそのリガンド(RANKL)とのシグナル伝達が関与していることが明らかになっていますが、デノスマブは、RANKLと結合し、破骨細胞及びその前駆細胞膜上に発現するRANKへのRANKLの結合を特異的に阻害する、いわゆる分子標的薬(ヒト型抗RANKLモノクローナル抗体製剤)と言われるものです。

前立腺がんの骨転移に対しては、これまでゾレドロン酸(ゾメタ)が多く用いられてきましたが、ゾメタはビスフォスフォネートと呼ばれる種類の薬で、元々は骨粗しょう症の治療薬として開発されたものですが、破骨細胞の働きを止めることにより、骨からのカルシウムの放出を防ぎ、骨転移による骨病変を抑えます。

骨関連事象の発現を遅らせる効果は、ゾメタよりデノスマブのほうが優れている(NCI Cancer Bulletin2010年11月30日)とも言われていますが、はっきりしたことは判りません。
ゾメタの副作用としては、腎機能の低下と顎骨壊死に注意が必要で、デノスマブの場合も、顎骨壊死に対する注意は同様だが、腎機能の低下の恐れはさほどでもなく、むしろ低カルシウム血症に対する注意が必要とか。
米国では重篤な症候性の低カルシウム血症(症状を伴う血中カルシウムの低下)による死亡例が報告されており、第一三共のHPにも、昨日(2012/5/29)、低カルシウム血症に対し注意を喚起する製品情報が掲載されました。
http://www.daiichisankyo.co.jp/corporate/pdf/20120529.pdf
手足のふるえ、筋肉の脱力感、けいれん、しびれ などの症状が出たら要注意とか。
いずれにせよ新しい機序の薬には、効能の裏にどんな副作用が隠れているかも知れませんので、少しでも異変を感じたら、すぐに主治医に訴えるほうが無難ではないでしょうか。

前立腺がんの低酸素状態と再発予測について


(2012年3月31日 Clinical Cancer Research誌の電子版に掲載)
多くのがん種で、腫瘍内は低酸素状態にあると言われているが、前立腺がんではこれまで一度も決定的な証明はされたことがない。
米国癌学会で発表されたこのたびの研究によれば、前立腺がんにおける低酸素(酸素欠乏)状態は、中間リスクの患者における早期の生化学的再発や放射線治療後の局所再発と関係していることが判った。

放射線治療前に限局性前立腺がんの男性247人の低酸素状態を測定し、6.6年間(中央値)追跡調査したところ(5年間の生化学的な無再発率は78%)、腫瘍内の酸素測定値が10mmHg未満であれば、早期の生化学的再発を予測できることが判った。
酸素測定部位において大きな腫瘍のある患者142人を特異的に調査した時、低酸素状態は早期の生化学的再発とより強い関連があることを発見した。
さらに、追跡期間中に生検が行われた70人の患者において、低酸素状態は再発を予測・同定した唯一の要因であった。

「前立腺がんが、低酸素状態であるならば、悪化もしくは、悪化するまでの期間が短縮され、治療後数年のうちに、がんが再発する傾向にある」と、研究者(Milosevic医師)は述べた。
しかし、前立腺がんの低酸素状態を厳密に測定することは簡単ではなく、広く日常臨床に普及させるためには、より適切で簡便な方法を探る必要がある。
前立腺がんのこの特性の発見は、低酸素状態あるいは低酸素の徴候を標的とする新しい治療概念の探索、ひいては患者の転帰の改善につながる可能性がある。

詳しくは「海外癌医療情報リファレンス」参照のこと  http://www.cancerit.jp/17349.html