前立腺がんの全摘術を受けた場合、短期的にはほとんどの人がなんらかの排尿障害を経験します。なかにはいつまでたってもひどい尿漏れが継続する、高度の排尿障害も見受けますが、それについては 別項(こちら) をご覧ください。
軽度の排尿障害では、骨盤底筋を鍛える運動が基本となりますが、 外尿道括約筋を締める薬(スピロペントetc)や、「切迫型」の尿漏れに対しては 過活動膀胱を抑える薬(抗コリン薬)を併用します。 適宜、尿パッドや失禁パンツなどのケアアイテムを用い、治療・訓練を続けるうちに数週間から数カ月で治るものがほとんどです。
薬が効きにくい軽度~中度の排尿障害では、装着型収尿器やペニクランプを用いたり、コラーゲン注入術や スリング術を行うこともあります。
● 尿パッド・失禁パンツ
ズレを予防できる男性専用パッドはほとんどないので、男女共用型を失禁量に合わせて使用する。(写真は男性用パッドの一例)
失禁パンツ(図-1)は、前側に吸収体が入っていて、30mL以内の少量の漏れに対応できる。
● 装着型収尿器
使い捨てタイプ(図-2)は、直接ペニスに付けるので、長時間付け続けるとスキントラブルを起こ す可能性がある。
再利用タイプ(図-3)は、パンツ内に固定された受尿器に逆流防止弁の付いたチューブ部分が接続されている。 スキントラブルはこのほうが少ない。
受尿器は、排泄姿勢により、一人ひとりに適したタイプが選べる。
● ペニクランプ
ペニスを挟み、漏れを防ぐ用具(図-4)です。簡便に使用でき、漏れその ものを抑えることができますが、少なくとも2~3時間ごとにペニスを解放する必要がある。 長時間、使用しているとうっ血を起こす可能性があるので、自己管理ができることが使用条件の一つ。
切迫性尿失禁で膀胱の収縮が激しい患者には適しない。
● コラーゲン注入術 (医療保険適用あり)
内視鏡を使い尿道粘膜の下にコラーゲンを注射する方法。
比較的簡単で合併症も少ないが、確実性と持続性に欠けるのが欠点。
● (尿道)スリング術 (医療保険適用あり)
外尿道括約筋の機能がある程度残っており、 腹圧時に尿道が後方にぐらつくタイプの尿失禁で、失禁量が200-300g/日 程度までの軽~中度の排尿障害に対しては、 尿道を恥骨側に人工テープで吊り上げる「スリング術」によりしばしば症状の改善がみられる。
女性の尿失禁にはこの「ぐらぐら型」が多いので、スリング術が広く用い
られているが、 全摘術後の尿失禁に対しては確実性は乏しい。ただし、
自然排尿ができるのが利点。