2009年11月27日金曜日

膣トリコモナス症が致死的な前立腺癌のリスクを高める

日経メディカル(2009. 9. 15)

 一般的な性感染症である膣トリコモナス症が、悪性度が高く致死的な前立腺癌のリスクをかなり高めるようだ。米ハーバード大学パブリックヘルス校のLorelei Mucci氏らの研究結果が、9月9日付けの Journal of the National Cancer Institute誌電子版に掲載された。

 最近の研究では、膣トリコモナス抗体の存在が、その後の前立腺癌の発症に関連することが分かってきている。また、この研究チームも以前、同抗体の存在が前立腺癌の発症と死亡に関連することを確認している。

 今回の研究では、673人の前立腺癌患者について、診断の平均10年前に採取された血液サンプルと、前立腺癌ではない 673人の男性の血液サンプルについて、血清中の膣トリコモナス抗体の有無を調べた。

 膣トリコモナス抗体が陽性の場合、前立腺癌のリスクは1.23倍になったが、統計的に有意ではなかった。ところが、同抗体が陽性の場合、前立腺外に広がった前立腺癌の発症リスクは2.17 倍、最終的に骨転移へと進行する前立腺癌の発症あるいは前立腺癌による死亡リスクが2.69倍になった。

 膣トリコモナス症は、抗生物質で容易に治療可能だが、男性の場合ほとんど症状がないうえに、女性と比べて検出が困難だ。「今回の研究結果が大規模な前向き研究で確認されれば、膣トリコモナス症の予防と治療が、悪性度の高い前立腺癌の、数少ない修正可能なリスク要因といえるかもしれない」と、Mucci氏は語っている。

2009年11月14日土曜日

PSA値は副甲状腺ホルモンでも上昇

「前立腺生検は必ずしも必要とは限らない」

ウィンストンセーラム、ノースカロライナ-ウェイクフォレスト大学医学部の研究者とウィスコンシン-マディソンのウェイクフォーレスト医科大学と大学の研究者は、
前立腺特異抗原(PSA)の値の上昇は、体内の正常なホルモン活動によって引き起こされている可能性があり、必ずしも前立腺生検の必要性と結び付かないことを発見しました。
PSA値の上昇は、これまで前立腺癌の潜在的兆候を示すものとして、PSA検診の普及にも貢献していました。
しかしながら、研究者によると、副甲状腺ホルモン(血中カルシウム濃度を調節するために作り出される物質)が、前立腺癌と無関係な、いわゆる健康な男性のPSA値を押し上げている可能性があることがわかってきました。
これらの"非がん"PSA上昇が、多くの男性を不必要な生検に巻き込み、それがまた多くの不必要な治療につながってしまう恐れがあります。
「PSA値は前立腺がんだけではなく、前立腺に関する他の要因にも左右されます」と、研究責任者ゲーリーG.シュワルツ博士(MPH医科大学の癌生物学および疫学と予防の準教授)は言っています。

炎症やその他の要因でPSA値が高くなることもあります。PSA値が上がった場合、通常生検に回されることが多い。
問題は、男性の年齢にも寄りますが、しばしば、臨床的にはほとんど意味のない微小な前立腺癌が見つかってしまうことです。
臨床的に意味のないこれらのがんは、もし生検を受けなかったとしても、致命的ながんに浸展することはありません。
しかしながら、PSAのスクリーニングは普及してきており、より多くの男性に生検が施されています。
前立腺癌があると言われた男性の多くは、治療の必要がないにもかかわらず、治療を受けてしまうわけです。
現実には、未治療のままにしておいて致命的になりそうながんというのは、前立腺がんの生検診断において、6例中1例ぐらいしかありません。
前立腺生検率が高いため、過剰な治療が行われやすく、それが、勃起不全や尿失禁などの副作用の増加につながっているのが現状です。
シュワルツ氏はこのように述べている。

ハルシオンG.スキナー博士、MPH、とウィスコンシン大学のマディソンの共同執筆による研究は、Cancer Epidemiology"癌疫学"(Biomarkers&Prevention)の最新号に掲載されています。
研究者たちは、国民健康栄養調査2005-2006に参加した1273人から、現在感染症や前立腺の炎症がない人、過去1カ月で前立腺生検を受けていない人、調査時点で前立腺がん歴のない人を抽出しデータを分析した。
PSA値の増減には・・・年齢が高いほど増加傾向、黒人男性では増加傾向、肥満男性では低下傾向・・・などの傾向があるため、年齢、人種、肥満による影響を調整した結果、
血液中の副甲状腺ホルモン値が高ければ高いほど、PSAがより高い値を示す傾向があることが判明した。
副甲状腺レベルが通常範囲内の上位に位置する男性では、PSA値は43%増加していました。これらの多くは、泌尿器科医が生検をお勧めする範囲に含まれると言えるでしょう。

また、今回の発見は黒人男性にとって特に重要である、とスキナーが付け加えた。
副甲状腺ホルモンのレベルが高いと言われているのは黒人男性では約20%、白人男性では約10%である。
この差が、黒人のほうが、生検を勧められて無駄な治療につながる可能性が高いということだ、と述べた。

この発見は、医療者が前立腺がんのスクリーニングに際し、生検を必要とするのか、そうでないのかを選別するのに役立つはずだ。とシュワルツ氏は言っている。
前立腺癌よりむしろ副甲状腺ホルモン値が高いために、PSAが上昇している男性がたくさん居るはず。

副甲状腺ホルモンは、甲状腺内にある4つの小いさな腺、副甲状腺細胞によって作られています。
副甲状腺ホルモンは主として血液中のカルシウム濃度を制御しますが、最近の研究では、副甲状腺ホルモンが前立腺がん細胞の増殖を促進することも示されている。
シュワルツ氏の研究とスキナーは、前立腺がんでない男性においても、副甲状腺ホルモンが前立腺細胞の成長をうながすことを、初めて示唆しました。

この研究は、国立衛生研究所とアメリカがん協会からの助成金によって賄われました。


Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention誌11月号(2009;8,11,2869-2873)
米ウェイクフォーレスト医科大学のGary G. Schwartz 氏らの研究結果

PSA値の上昇は、前立腺の異常だけではなく、副甲状腺ホルモンの増加とも関連している。
血液中の副甲状腺ホルモン値とカルシウム濃度が高いほど、PSA値も高くなる。
(副甲状腺ホルモンは血液中のカルシウム濃度を制御する働きを持つ。)

副甲状腺ホルモンのレベルが正常範囲高値の男性は、正常範囲低値の男性と比較して、PSA値が43%高かった。これは、多くの場合で泌尿器科医から前立腺生検を推薦されるレベルである。

最近の研究では、副甲状腺ホルモンが前立腺の癌細胞の増殖を促進させることも示されているが、
この研究は、副甲状腺ホルモンが前立腺癌でない男性においても前立腺細胞の成長を促すことを初めて示した。

2009年11月13日金曜日

樹状細胞ワクチン療法

(レーベンスクラフト最新医療情報2009/3/27)

バイオベンチャーのテラは免疫機能の司令塔である樹状細胞の働きを高め、がんを狙い撃ちする治療法を医療機関に提供している。

この「樹状細胞ワクチン療法」は副作用が少なく再発や転移したがんにも効果を示すという。従来の治療法では治せなかったがん患者を救おうと次世代型の治療法確立を視野に入れている。

樹状細胞は体内の異物を食べて特徴を認識、リンパ球に異物の特徴を覚え込ませる。これによりリンパ球は異物に照準を絞って攻撃できる。テラの治療法では、がんに細胞に特有なたんぱく質の断片を再現した人工抗原「WT1ペプチド」を樹状細胞に与え、リンパ球への司令を出させる。

大阪大学が持つ人工抗原に関する基礎技術を導入した。阪大はがん細胞が増殖したり生存したりするのに必要なたんぱく質断片を発見、多様ながんに使えるWT1ペプチドを開発した。従来の人工抗原はがんの種類によっては使えなかった。

樹状細胞ワクチン療法を提供しているのは、信州大学医学部付属病院などテラが契約した全国で約10ヶ所の医療機関。患者の血液から単球と呼ぶ細胞を採取・培養して樹状細胞を作製する。

そこに人工抗原を入れ患者に注射。治療は4ヶ月ほどで終わるのが特徴だ。東大発の培養技術に阪大の人工抗原を組み合わせることにより、新たながんの免疫療法を生み出した。

免疫療法で主流の「活性リンパ球療法」はリンパ球を増殖させて体内に戻す。がん細胞を攻撃する「兵隊」を増やす手法だが、司令塔の樹状細胞が標的であるがん細胞の特徴をとらえていないために的確な命令が下せず、がん細胞を見逃してしまう恐れがある。

がん治療には外科手術や放射線治療など様々な手法があるとはいえ、転移したり、抗がん剤に耐性を持ったりしたがんの根治は難しい。樹状細胞ワクチン療法は、68万人いると言われているがん難民に新たな治療法を提供出来る可能性がある。

現時点でテラの樹状細胞ワクチン療法は臨床試験(治験)を実施しておらず、薬事法に基づく承認も受けていないため、保険適用外の自由診療として提供される。

樹状細胞を活用した治療法の歴史は浅く、エビデンス(科学的根拠)の蓄積も足りないのが実情。同社の累計症例数は1000件を超えているが、テラ以外では世界でも2000~3000件にすぎず、実績の積み上げが課題になる。

2009年11月7日土曜日

粒子線治療装置を小型化(従来の10分の1)

(産経新聞 2009/10/13)

患部を切らずにがん細胞を破壊する「粒子線治療」で使われる装置を従来の10分の1程度に小型化する技術の開発に、日本原子力研究開発機構光医療研究連携センター(京都府木津川市)の福田祐仁研究副主幹らの研究チームが成功した。現在は300万円前後かかっている粒子線による治療費も、新技術導入で約30万円に抑えられる見通しという。成果は13日付の米物理学会誌フィジカル・レビュー・レターズ(電子版)で発表される。

粒子線治療は高速で照射する炭素などのイオンが身体の表面ではあまり作用せず、がん細胞を重点的に破壊する効果がある。現在使われている粒子線治療装置は大型の加速器を使っているため、体育館サイズの施設が必要で治療費も高額となっている。

福田さんらは特殊なノズルを使って、真空中に高圧の二酸化炭素・ヘリウム混合ガスを噴射し、横からレーザー光を当てる手法で、炭素イオンなどを加速させる手法を開発した。この技術を使えば大型の加速器が不要になり、治療装置は教室サイズに小さくできるという。福田さんは「7年後を目標に試作機を完成させ、実用化のメドをつけたい」と話している。

膠芽腫にウイルス療法が効果的

もっとも悪性度が高い脳腫瘍(しゅよう)「膠芽腫(こうがしゅ)」の増殖をウイルスを利用して抑える方法を、東京大のチームが見つけた

膠芽腫は脳腫瘍の約1割を占め、放射線や抗がん剤でたたいてもやがて再発し、患者の7割が診断から2年以内に亡くなるという。東京大医学系研究科博士課程4年の生島弘彬さんと東京大病院の藤堂具紀特任教授は、再発の理由は脳腫瘍のもとになる「がん幹細胞」が生き残るためだと考え、脳腫瘍患者から見つかった細胞増殖因子「TGFベータ」に着目した。その働きを抑える阻害剤を膠芽腫患者のがん幹細胞に作用させたところ、増殖が抑えられた。

ドイツの企業が脳腫瘍患者の脳にTGFベータ阻害剤を直接注入する臨床試験を実施中で、生島さんらは今回そのメカニズムを解明した。

チームの宮園浩平教授(分子病理学)は「がん幹細胞を阻害剤で無力化させ、残ったがん細胞を放射線や抗がん剤でたたくという組み合わせで、膠芽腫の治療が可能になるかもしれない。他のがんにも有効か今後調べたい」と話す。

膠芽腫は、脳腫瘍の約4分の1を占める神経膠腫(グリオーマ)のうち最も悪性とされ、年間10万人に1人の割合で発症。手術後、放射線治療と化学療法をしても平均余命は診断から1年程度で、特に再発した場合は有効な治療法はなかった。

藤堂特任教授らのウイルス療法は、口唇ヘルペスの原因となる単純ヘルペスウイルス1型を利用、3遺伝子を改変し、がん細胞だけで増殖するようにした。このウイルスをがん細胞に感染させると増殖し、感染したがん細胞を死滅させ、増殖したウイルスはさらに周囲のがん細胞に感染、次々と死滅させる。正常細胞に感染しても増殖しない。
ウイルス療法は、放射線治療や抗がん剤による化学療法と並び、新たな治療の選択肢になるのではないかとしている。

ウイルス療法

さまざまな病気を引き起こすウイルスだが,うまく手なずけるとがんを効果的に攻撃する新しい治療法に道が開ける。腫瘍細胞だけで増殖するウイルスを利用するウイルス療法(virotherapy)だ。

がん患者が偶然ウイルスに感染し、そのウイルス疾患が軽快するとともにがんも縮小するということが、古くは1900年代の初めに報告されていた。その後の研究で、単純ヘルペスウイルスをはじめとするいくつかのウイルスにはがん細胞を殺す作用があることが発見され、さらに研究が進むにつれ、それは、“免疫”にも関係していることが判ってきた。
ウイルス感染が起こったことによりヒトの体中で免疫が活性化し、がん細胞に対する免疫も高まり、直接あるいは間接的にがん細胞を壊したり食べたりしてしまうという。

ウイルスをがん細胞だけに選択的に感染させて殺す臨床試験が進んでいる。現在,がん細胞には効率よく感染するが正常細胞には影響を与えないようなウイルス(特にアデノウイルス)を開発するため,さまざまな方法が試されている。

ウイルス療法の標的指向性を高めるには,大きく分けて2つのアプローチがある。1つは「遺伝子導入の標的化」で,がん細胞に特異的に感染(遺伝子導入)できるようにウイルスを改良する。もう1つは「転写活性の標的化」で,ウイルスが運ぶ遺伝子ががん細胞でのみ活性化される(転写される)ように改良する。

従来の化学療法剤に対する感受性を高めるような遺伝子をがん細胞に選択的に導入するという考え方や,ある種の酵素を作り出す遺伝子をウイルスに組み込んでがん細胞で発現させ,その酵素によって無害な化学物質を強い毒性を発揮する化学療法剤に変えるといったやり方もある。

ウイルスに蛍光物質や放射性核種の標識をつけて利用することも考えられている。これを投与するとがん細胞のところに集まってくる。将来は微小ながんの転移巣を検出する画像診断が可能になるだろう。

2009年11月6日金曜日

運動は前立腺がんの発症リスクを低下させる

スウェーデンのカロリンスカ研究所のNicola Orsini氏らによる研究結果(2009/10/27)によると、
デスクワーク中心の男性は、身体をよく動かす仕事に就く人よりも、前立腺癌の発症リスクが約3割も高い。
毎日1時間以上のウオーキングかサイクリングをした男性は、40分以下の男性に比べて、前立腺ガンのリスクが14%低く、
ウオーキングかサイクリングの時間が 30分増加するごとに、前立腺癌リスクが7%(進行癌のリスクが12%)低くなる。
仕事中に椅子に座って過ごす時間をできるだけ減らすか、1日に30分間以上のウオーキングかサイクリングをすることは、
前立腺癌の予防に役立つだろうと、この研究者は述べている。

2009年11月4日水曜日

前立腺がん治療薬MDV3100

(10/29 がんナビ記事より)
アステラス製薬は10月28日、米Medivation社と同社の前立腺がん治療薬MDV3100について、全世界における開発・商業化に関する契約を締結したと発表した。

 MDV3100は第二世代の経口抗アンドロゲン剤で、ドセタキセルによる化学療法の治療歴を有する去勢抵抗性前立腺がん患者を対象とした国際フェーズ3臨床試験AFFIRMが現在行われている。日本における開発については検討中だ。

 MDV3100は前臨床試験で、最も使われている抗アンドロゲン剤のビカルタミドよりも優れたアンドロゲン受容体経路の抑制作用を示したという。また、MDV3100はビカルタミド抵抗性がんで、アンドロゲン受容体へのテストステロン結合阻害、前立腺がん細胞核へのアンドロゲン受容体の転移阻害、DNAへの結合阻害によって、がん細胞の増殖抑制、細胞死を誘導した。

 契約に基づいて両社は、今後、後期及び初期ステージの前立腺がんを対象に、追加試験を含むMDV3100の広範囲な開発プログラムを共同で進める。米国ではMDV3100の商業化は両社共同で行うが、米国以外の地域についてはアステラス製薬が独占的に開発・販売を行う。

2009年10月13日火曜日

プロベンジ(免疫療法)により転移性前立腺癌の生存率が改善

(NCI Cancer Bulletin 2009/5/5)
先週シカゴで行われた米国泌尿器科学会年次総会において、転移性前立腺癌の男性で、研究中の免疫療法を受けた場合はプラセボ投与に比べ全生存期間が約4カ月延長したことが報告された。これは、sipuleucel-T(Provenge〔プロベンジ〕)の第3相ランダム化二重盲検試験であるIMPACT試験の結果に基づいたものである。Sipuleucel-Tとは患者の血中から抗原提示細胞を分離し、腫瘍特異的な免疫反応を活性化させ、再度患者に注入する免疫療法である。試験に参加した500人以上の患者は無症候性あるいはわずかな症状のみの転移性アンドロゲン非依存性前立腺癌であった。免疫療法群では、sipuleucel-Tが1カ月に3回に分けて投与され、生存期間の中央値はプラセボ群に比べて22.5%改善した(25.8カ月対21.7カ月)。Sipuleucel-Tのより早期の2つの試験でもそうであったように、無増悪生存期間、つまり腫瘍の増殖が認められない状態で生存できる期間については、統計的に有意な改善はみられなかった。試験の主導者のひとりである、南カリフォルニア大学のDr. David Penson氏によると、有害事象は軽度でわずかであるという。Sipuleucel-T投与の翌日に最も多く見られた事象としては、発熱、悪寒および頭痛があったが、これらの副作用は通常1~2日で解消した。全体として、免疫療法群では患者の約99%が3度の投与をすべて受けた。
生存期間に関するデータは、特に年齢、治療前PSA値、および骨転移の程度などによるサブグループ分析のすべてにおいて「極めて一貫していた」とPenson氏は説明している。「これは非常に心強い結果である」と彼は言う。

デュタステリド&フィナステリド:前立腺がん罹患予防に有効

(NCI Cancer Bulletin 2009/5/5)
4月27日シカゴで行われた米国泌尿器科学会年次総会において、dutasteride〔デュタステリド〕(Avodart〔アヴォダート〕)は、前立腺癌リスクが高い男性の罹患予防に役立つ可能性があると、大規模国際臨床試験の初期データで示されたことが報告された。
REDUCEと呼ばれるこの試験では、前立腺特異抗原(PSA)値が高い前立腺癌高リスク男性8,200人に対して、デュタステリド治療とプラセボを比較した。全員、試験参加前6カ月以内に受けた前立腺生検で陰性であった。2年後および4年後に行った追跡生検により、デュタステリド群ではプラセボ群に比べ、前立腺癌リスクが23%減少したことが明らかになった。
また、デュタステリド群では高悪性度の前立腺癌リスクがプラセボ群と同程度であることも明らかになった。「これは、われわれに大きな希望を与えてくれる知見である」と、主任研究者であるワシントン大学医学部のDr. Gerald Andriole氏は声明の中で述べている。本研究はデュタステリドの製造元であるグラクソスミスクライン社による助成を受けている。
本研究結果と類似したものに、以前行われたNCI主導による前立腺癌予防試験(Prostate Cancer Prevention Trial: PCPT)があるが、これはフィナステリド(Proscar)という同系統の薬剤を用いた前立腺癌予防試験である。PCPTによる初期の知見は、フィナステリドは前立腺癌リスクを減少させる一方、より悪性度の高い癌においては発生リスクを増加させる可能性を示唆するものであった。NCIの研究者らにより行われたその後の調査では、フィナステリドが高悪性度の癌の発生を助長することはなく、実際にはそのリスクを減少させることが示された。フィナステリドおよびデュタステリドは共に前立腺肥大症の治療薬として承認されている。

2009年7月30日木曜日

前立腺がん治療法の選択は医師の専門分野に影響される

「日経メディカルオンライン」2007. 7. 23 より引用

[リポート]ASCO 2007 [07 Summer]

 患者の局所前立腺がんの治療法選択において、最初にコンタクトした医師の専門分野が大きな影響を及ぼしていることが、米国立がん研究所(NCI)サーベイランス・疫学・最終結果プログラムのデータ分析で明らかになった。

 局所前立腺がんの治療オプションとしては、前立腺切除術、放射線療法、ホルモン療法、待機管理(watchful waiting)があり、治療効果とともにそれぞれに有害作用をもたらすリスクが存在する。

 研究では、1994~2002年の間に局所前立腺がんと診断された65歳以上の男性8万5088例のデータを解析した結果、医師の専門性と患者の治療法選択の間に強い相関のあることが明らかになった。

 65~69歳の男性では、泌尿器科医に診断評価された場合には70%が前立腺切除術を選択、75歳以上では泌尿器科医のみに評価された場合には、83(75~79歳)~97%(80歳以上)が待機管理かホルモン療法を選択していた。

 これに対して、年齢に関係なく全男性において、泌尿器科医と放射線腫瘍専門医の両方に評価されたケースでは、放射線療法の選択頻度が高く、65~69歳で78%、70歳以上85%であった。泌尿器科医と臨床腫瘍医の両方に評価されたケースでは、また異なる傾向が認められた。

 前立腺がん患者の大部分は、最初に泌尿器科医に診察を受けるケースが多いが、報告者の米Memorial SloanKettering Cancer Center(ニューヨーク)泌尿器科のThomas L. Jang氏は「現状では、どのような患者が泌尿器科医にかかるべきか確立されたガイドラインはない。しかし今回の知見からは、前立腺患者は特定の治療法を選択する前に、あらゆる情報にアクセルすることが好ましいことが示唆される」と述べている。「早期前立腺がん治療の優位性は確立しておらず、患者は最初に医相談した医師の勧めに従いやすい。患者は、バイアスのかかっていない、バランスのとれた治療オプションを選択することが重要」としている。

2009年7月22日水曜日

アスピリンと大腸がん死亡率

アスピリン(NSAIDs)はシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)の活性を阻害する薬剤のひとつですが、
その服用者に大腸がんや乳がんなどの発症率が低いことがすでに知られています。

大腸がん、乳がん、胃がん、食道がん、肺がん、肝細胞がん、膵がん、頭頚部の扁平上皮がんなどでは、
ヒト癌細胞でのCOX-2の発現増強が見られますが、どのがんに対しどの程度の効果があるかという
定量的な解析はあまり進んでいません。

 多くのNSAIDsはがん発生の予防に必要なCOX-2の阻害に留まらず、COX-1も阻害してしまうため、それに
 関連して種々の副作用、特に消化管障害を引き起こす危険性があります。そのためにCOX-2のみを選択的に
 阻害する薬剤も開発されていますが、これにも心血管障害などの副作用があり、やはり注意が必要です。

このたび、マサチューセッツ総合病院のAndrew T.Chan氏は、大腸がんとアスピリンの関係について、
後向きの分析調査を行い、大腸がんと診断された後にアスピリンを定期的に服用すると、
死亡率の大幅な低下がみられることを、2009年の米国消化器学会(シカゴ)で発表しました。

ステージ1~3の大腸がん患者1279人について、2008年まで平均11.8年間追跡した結果。
(この間に480人が死亡、うち222人が大腸がんによる死亡)

・診断前から定期的にアスピリンを服用していた場合は、その後の服用の有無にかかわらず、
 大腸がんによる死亡率に差はみられなかった。
・診断後定期的にアスピリンを服用した場合、死亡率は29%低下。
 その内、診断前にアスピリンを服用していなかった患者に限定すると、死亡率は47%低下。
 さらに、COX-2の過剰発現が認められた患者に限定すれば、死亡率は61%低下。

結論としては、アスピリンの常用によりCOX-2を過剰発現する大腸癌のリスクは低下するが、
COX-2発現の弱いまたは認められない大腸癌のリスク低下はあまり期待できないようです。

2009年5月25日月曜日

5-アルファ還元酵素阻害薬(プロペシア、アヴォダート)

男性用育毛剤として用いられている5-アルファ還元酵素阻害薬フィナステリド(プロペシア)が前立腺癌リスクを
減少させる一方、悪性度の高い癌においてもそのリスクを減少させることが、すでに、NCIより報告されているが、
(当初発生リスクを増加させる可能性を示唆するものであったが、その後の調査でこのように変更された)
このたびシカゴで行われた米国泌尿器科学会年次総会(2009/4/27)において、
フィナステリドと同系列の薬剤 dutasteride:デュタステリド(アヴォダート)は、
高リスク前立腺癌患者の罹患予防に役立つ可能性があることが明らかになった。
「これは、われわれに大きな希望を与えてくれる知見である」と、主任研究者(Dr.Gerald Andriole氏:ワシントン大)は
述べている。ただしこの研究はデュタステリドの製造元グラクソスミスクライン社の助成を受けている。

2009年5月16日土曜日

Provenge

Provengeとは、ホルモン非応性前立腺がんに対し期待が持たれている活性化免疫細胞製剤です。
AUA(米国泌尿器科学会議:2009/4/28)における発表によると、
このたび、ホルモン非応性前立腺がん患者を対象とした第3相臨床試験において良好な結果が確認されたとのこと。
”生存期間は4.1カ月延長。3年生存率は38%の改善。死亡リスクは22.5%低下。安全性にも特に問題なし。”
4ヵ月を長いと見るか、短いと見るか、判断は分かれると思いますが、
前立腺がんのために開発された薬というのは、もうここ10数年登場していないのではないでしょうか?
前立腺がんでは免疫系の薬というのも初めてですし、そういう意味では画期的ですよね。

治験の担当医のコメントは次の通り。
「これらの結果は、進行前立腺がん患者におけるProvengeの臨床的価値を確実なものにした。
その上、がんと闘うため患者自身の免疫システムを活用するという長年の希望が実証された」

ここまで来るといずれ近い内にFDAでも承認されるでしょうが、問題はそこから先ですね。
早期承認が望まれますが、日本での承認はこれまでのペースでは早くても数年先になるでしょう。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/search/cancer/news/200905/510580.html

2009年4月27日月曜日

性機能温存にPDE阻害薬の術後早期投与が有効

全摘術での性機能温存は難しく、両側神経温存術でも性機能温存は半数強にとどまるが、
PDE阻害薬(PDE5i:バイアグラもこの1種)の術後早期投与が
補助療法として有効である可能性が示された。

両側神経温存手術を行った患者を対象にPDE5i内服群と非内服群に分け、
性機能を評価するEPICスコアを用いて比較追跡を行ったところ、
概ね次のような結果が得られた。

     術前  術後すぐ 術後3年
内服群   40   1桁   30
非内服群  30   1桁   10

PDE5iは前立腺全摘除後の性機能回復のリハビリテーションとして有効であり、
かつ術後早期からの投与がより効果的であると考えられる。
東北大では、手術直後からPDE5iの内服を開始、初めの1ヶ月は2回/週、あとは1回/週としている。

2009年4月10日金曜日

前立腺がん:照射線量はリスクによって調節

NCCNの第13回臨床ガイドライン(2008年)で、前立腺がん放射線治療ガイドラインの改訂版が発表された。

低リスク前立腺がんに対する線量は70~79Gyで十分であり,リンパ節には照射しなくてもよい。また,アンドロゲン抑制療法も必要ない。
前立腺の位置は膀胱や腸の充満状態により最大2cmは変化するため,75Gyを超える線量では,照射ごとに位置確認をする特別な作業が必要。

中~高リスク患者では,75~80Gyの照射が必要で,骨盤リンパ節への照射も同時に検討すべきで、
照射療法後4~6か月間のアジュバントアンドロゲン抑制療法の併用を考慮すべきである。

標的臓器の移動には照射ごとの移動と1回の照射中の移動があり,照射中の臓器移動のほうが制御困難である。
照射中の標的臓器の移動は,患者の呼吸や心臓の鼓動,腸運動,嚥下,くしゃみなどの動作により発生する。
高線量を照射する際には,直腸などの近傍組織に有害な影響を与えないため,標的の移動制御はより重要となる。

2009年4月7日火曜日

グリソンスコアと生命危険度

(PDQより抜粋要約)
PSA検査の普及前に限局性前立腺癌と診断され、その後、注意深い経過観察もしくはホルモン療法により、
20年に渡り追跡観察された患者767人の、集団ベースコホート研究調査の長期追跡結果(米国)は次のとおり。

グリソンスコア  前立腺癌特異的死亡率(1000人当たり)
  2~4        6人
   5         12人
   6         30人
   7         65人
  8~10       121人

高分化がん(GS2~4)に対する低分化がん(GS8~10)の死亡率(生命危険度)は約20倍。

2009年3月26日木曜日

SBRT(体幹部定位照射)による寡分割照射

”限局前立腺がんの治療法として、体幹部定位照射(SBRT)による寡分割照射(5回)が有望”であるというニュースが、
日経メディカルやがんナビなどのサイトで、報道されました。(2009/3-19)
http://cancernavi.nikkeibp.co.jp/news/5_7.html

そのあとすぐ、もっと詳しい訳が「海外癌医療情報レファランス」に掲載されています。
http://www.cancerit.jp/xoops/modules/pubmed/index.php?page=article&storyid=451

日経メディカルとがんナビは姉妹サイトでもあるので、内容はほぼ同じ、某フリーの医学ライターの記事が元になっているようですが、これを読むと、
前立腺がんを「1回の照射線量を増やし、たった5日間で治療できる」時代が、もうそこまで来ているかのように感じてしまうのですが、
「海外癌医療情報レファランス」の訳文をよく読むと、だいぶニュアンスが異なりますね。
翻訳・要約の仕方には、どうしても、ライターの主観や先入観、時には誤解も混じりますから、読み手としても注意が必要だと思います。
上記2例の訳を比較参照しながら、これをより判りやすく、かつできるだけ間違いのないように要約してみました。

41例の低リスク前立腺患者に、サイバーナイフ(画像誘導装置:SBRT)で36.25 Gy(7.25Gyx5分割)を照射。
6カ月以上の追跡調査の結果、直腸・膀胱には早期・晩期とも"4度"の放射線障害は認めなかった。
"3度"の晩期放射線障害は膀胱で2例あったが、直腸では発生しなかった。
「隔日5回照射」と「5日間連続照射」を比較したところ、重篤な直腸障害はそれぞれ、
0%、38%となり、隔日照射のほうが副作用が少なかった。


つまり、5日間連続照射は、重篤な直腸障害が4割近くにも達し、まったく話にならないということです。

軽度のPSA上昇(中央値0.4)が治療後18カ月後(中央値)に12例(29%)で認められたが、
最終追跡時にPSA再発を来たした症例はなかった。
32例の12カ月以上の追跡で25例(78%)が、治療後3年までに測定底値0.4までのPSA低下が観察された。
前立腺がんに対する体幹部定位照射の副作用とPSAの反応は有望であり、今後さらなる症例の追加と経過観察が必要である。


詳細記事を見れば放射線晩期障害(後遺症)の内訳は、
 膀胱では1度:41%、2度:24%、3度:5%
 直腸では1度:33%、2度:15%
2度以上の障害というのはなんらかの対応が必要とされていますが、これはかなり大きな頻度ですね。
ちなみに、私が治療を受けたK大学病院のIMRT(2gyx39回)では、2度以上の直腸出血発生率は4%程度だと言われています。
この例は少ない方でしょうけど、他の施設でもIMRTで2度以上の直腸出血が10%を超えているところはないはずです。

「海外癌医療情報レファランス」の記事には、抄録訳者コメントならびに、別の医師からの批判文も掲載されています。
専門家としてちょっと理屈っぽいコメントも書かれていますが、要は、患者の安全を第一と考えるなら、
こうした実験は倫理的にも好ましくないというものです。

「早期前立腺がんへの5日間の体幹定位放射線治療で有望な結果」というような「がんナビ」等の記事タイトルは、
現時点においては極めて誤解を招きやすい危険な内容を含んでいるように思います。
これはまだ第II相臨床試験に過ぎないわけですが、その説明もありません。
「5日間」を「隔日5回照射」と表現を変えるならまだしも、こうしたサイトでの紹介は影響が大きいだけに残念ですね。
日本でも、民間病院でこうした先端治療機器を導入する病院が出てきましたが、
少々の副作用には目をつぶるという安易な治療を助長してしまう恐れもなきにしもあらず。
患者の立場としても、落ち着いた判断が必要で、副作用の恐れが高く安全性の裏づけに乏しい照射方式に、
安易に飛びつくべきではないでしょう。

2009年3月25日水曜日

定位放射線治療

現在の高精度放射線治療は、定位放射線治療(stereotactic radiotherapy:SRT)、
定位手術的照射(stereotactic radiosurgery、SRS)、強度変調放射腺治療(intensity
modulated radiotherapy:IMRT)へと進歩し、さらには病巣を追跡しながら照射する4次元照射、動体
追跡照射(real-time tumor-tracking radiotherapy)へと進化した。

脳腫瘍、肺癌などの治療は、かつて手術が第一選択であったが、今や定位放射線治療で手術と同等の
治療成績が得られるようになった。
定位放射線照射法とは「多軌道の回転照射あるいは多門照射を用いて、小病変に対して線量を集中的に
照射する方法で、照射野の中心精度が頭部では±1mm以内、体幹部では左右背腹が±5mm 以内、
頭尾が±10mm 以内のもの」と定義されている。

1951年にスウェーデンの脳外科医Lars Leksell が定位放射線治療(stereotactic radiosurgery )の
概念を提唱し、1968 年にカロリンスカ大学において、ガンマナイフ(201 個のコバルトからガンマ線を
集中させ、癌を手術と同様に1回で治療する装置)による治療が始まった。
これが契機となり、一般的な放射線治療器であるリニアックに改良を加え、X線の集中精度を高める照射方
法として発達したのが定位放射線治療(stereotactic radiotherapy:SRT)で、その手法は脳腫瘍にと
どまらず、頭頸部腫瘍、肺癌、肝臓癌、前立腺癌へと適用されるようになった。

この方法により、通常の照射方法では困難とされるような大線量を投与できることになり、腫瘍制御率
が大幅に改善された。一回の線量は一般に広く用いられてきた2Gyかつ週5回の通常分割照射と異なり
1回が3Gy〜35Gyと大きい。そのためBiological Effective Dose(BED、生物学的等価線量)に換算して
評価し、通常分割照射と比較する。
10Gy ×5〜6回、12Gy ×4〜5回、15Gy ×3〜4回では、いずれもBED 100Gy 以上となる。

abiraterone:(酢酸)アビラテロン

2008年のASCO(米国臨床腫瘍学会)では、再燃前立腺がんに対する有望な新薬アビラテロンが紹介された。
これまでのホルモン薬は脳下垂体の受容体をブロックして男性ホルモンの産出を止めたが、アビラテロンは、性ホルモンの合成に関与する酵素「CYP17」を選択的に阻害し、テストステロン(男性ホルモンの一種)の精巣や副腎での産生を抑制するまったく新しい薬だ。

東京慈恵会医科大学泌尿器科の穎川晋教授の解説によれば、 「アビラテロンは、ドセタキセル(商品名タキソテール)以来の期待できる薬です。従来のホルモン療法が効かない再燃前立腺がん患者への臨床試験では34人中22人、ドセタキセルが効かない再々燃前立腺がん患者でも、28人中10人でPSA値が50%以上低下した」とのこと。

米Cougar Biotechnology社は、2008年4月にフェーズ3(第3相)試験を開始している。
ホルモン耐性の転移性前立腺癌で、ドセタキセルベースの化学療法が無効となった患者を対象に、アビラテロンとプレドニゾンの併用と、プラセボとプレドニゾンの併用を比較する。
試験終了は2011年の予定。

これまでの臨床試験についてJournal of Clinical Oncology誌(2008/7/2)には、次のように書かれている。

・複数の被験者でPSA濃度が90パーセントも低下していることが示された。
・被験者の大部分で原発巣および転移巣のいずれも腫瘍が縮小していた。
・複数の試験参加者がこの薬剤を2年半服用し、良好に疾患をコントロールでき、
 副作用も少なかった。
・多くの患者が骨痛の緩和のために服用しているモルヒネをやめることができた。

「PSA値の低下や腫瘍の縮小は単なる薬理活性の証拠でしかない。患者と一般の人にとって重要なのは、生存期間の長さや生活の質の改善などを評価項目とした無作為に比較した臨床試験が必要なことである」
と米国がん協会はコメントしている。