2011年4月19日火曜日

前立腺がん取扱い規約

泌尿器科の現場ではこの本がかなり重要視されています。

「全国の先生方には、この取扱い規約に準じた同一基準で前立腺癌症例を正しく評価していただき、日本のデータを内外に積極的に発信していただきますことを期待致します。」(日本泌尿器科学会理事長 内藤誠二)
序文のこうした表現からもそれがわかると思います。

昨年までは、取扱い規約の第3版(2001年刊行)が使用されてきたのですが、なにぶん内容が古くて、実情に合わない部分も目立っていました。
このたび(2010年12月)第4版が刊行され、やっと実情に追いついてきたようです。

以前から気になっており指摘もしてきたことに「前立腺がん病期分類」があります。
国立がん研究センター「がん情報サービス」では
・T2a:片葉浸潤
・T2b:両葉浸潤
となっていますが、この根拠が前立腺癌取扱い規約第3版(2001年)であり、さらにその根拠はTNM分類第5版(1997年)ですから相当古いものです。

TNM分類第6版(2002年)以降は
・T2a:片葉の1/2以下
・T2b:片葉の1/2超
・T2c:両葉浸潤
となっており、このたびの取扱い規約第4版でやっと「原則としてTNM分類第7版(2009年)を用いる」
ということが決まりました。
「がん情報サービス」のHPは相変わらず古いままで、改訂されておりませんが・・・

その他、我々患者にも関心が深い改訂点がいくつかあります。

・作成委員会に「日本医学放射線学会」が加わった。(でも「日本放射線腫瘍学会」でないのはなぜ?)
・リスク分類に言及(2001年当時はリスク分類という概念がほとんどなかった)
・ノモグラムに言及(日本版術前ノモグラムも掲載してくれています)
・治療法で「密封小線源療法」「緩和療法」(ストロンチウム、ビスフォスフォネートにも簡単に触れています)
・病理学的分類は分化度(高・中・低分化)分類に代わり、グリーソン分類(ISUP2005)を採用。

10年に一度の改訂では時代遅れになるのもやむをえませんね。
前立腺癌診療ガイドラインも2006年版ですが、これもそろそろ新しいもの、できれば患者向けのものを刊行してもらいたいですね。