2009年7月30日木曜日

前立腺がん治療法の選択は医師の専門分野に影響される

「日経メディカルオンライン」2007. 7. 23 より引用

[リポート]ASCO 2007 [07 Summer]

 患者の局所前立腺がんの治療法選択において、最初にコンタクトした医師の専門分野が大きな影響を及ぼしていることが、米国立がん研究所(NCI)サーベイランス・疫学・最終結果プログラムのデータ分析で明らかになった。

 局所前立腺がんの治療オプションとしては、前立腺切除術、放射線療法、ホルモン療法、待機管理(watchful waiting)があり、治療効果とともにそれぞれに有害作用をもたらすリスクが存在する。

 研究では、1994~2002年の間に局所前立腺がんと診断された65歳以上の男性8万5088例のデータを解析した結果、医師の専門性と患者の治療法選択の間に強い相関のあることが明らかになった。

 65~69歳の男性では、泌尿器科医に診断評価された場合には70%が前立腺切除術を選択、75歳以上では泌尿器科医のみに評価された場合には、83(75~79歳)~97%(80歳以上)が待機管理かホルモン療法を選択していた。

 これに対して、年齢に関係なく全男性において、泌尿器科医と放射線腫瘍専門医の両方に評価されたケースでは、放射線療法の選択頻度が高く、65~69歳で78%、70歳以上85%であった。泌尿器科医と臨床腫瘍医の両方に評価されたケースでは、また異なる傾向が認められた。

 前立腺がん患者の大部分は、最初に泌尿器科医に診察を受けるケースが多いが、報告者の米Memorial SloanKettering Cancer Center(ニューヨーク)泌尿器科のThomas L. Jang氏は「現状では、どのような患者が泌尿器科医にかかるべきか確立されたガイドラインはない。しかし今回の知見からは、前立腺患者は特定の治療法を選択する前に、あらゆる情報にアクセルすることが好ましいことが示唆される」と述べている。「早期前立腺がん治療の優位性は確立しておらず、患者は最初に医相談した医師の勧めに従いやすい。患者は、バイアスのかかっていない、バランスのとれた治療オプションを選択することが重要」としている。

2009年7月22日水曜日

アスピリンと大腸がん死亡率

アスピリン(NSAIDs)はシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)の活性を阻害する薬剤のひとつですが、
その服用者に大腸がんや乳がんなどの発症率が低いことがすでに知られています。

大腸がん、乳がん、胃がん、食道がん、肺がん、肝細胞がん、膵がん、頭頚部の扁平上皮がんなどでは、
ヒト癌細胞でのCOX-2の発現増強が見られますが、どのがんに対しどの程度の効果があるかという
定量的な解析はあまり進んでいません。

 多くのNSAIDsはがん発生の予防に必要なCOX-2の阻害に留まらず、COX-1も阻害してしまうため、それに
 関連して種々の副作用、特に消化管障害を引き起こす危険性があります。そのためにCOX-2のみを選択的に
 阻害する薬剤も開発されていますが、これにも心血管障害などの副作用があり、やはり注意が必要です。

このたび、マサチューセッツ総合病院のAndrew T.Chan氏は、大腸がんとアスピリンの関係について、
後向きの分析調査を行い、大腸がんと診断された後にアスピリンを定期的に服用すると、
死亡率の大幅な低下がみられることを、2009年の米国消化器学会(シカゴ)で発表しました。

ステージ1~3の大腸がん患者1279人について、2008年まで平均11.8年間追跡した結果。
(この間に480人が死亡、うち222人が大腸がんによる死亡)

・診断前から定期的にアスピリンを服用していた場合は、その後の服用の有無にかかわらず、
 大腸がんによる死亡率に差はみられなかった。
・診断後定期的にアスピリンを服用した場合、死亡率は29%低下。
 その内、診断前にアスピリンを服用していなかった患者に限定すると、死亡率は47%低下。
 さらに、COX-2の過剰発現が認められた患者に限定すれば、死亡率は61%低下。

結論としては、アスピリンの常用によりCOX-2を過剰発現する大腸癌のリスクは低下するが、
COX-2発現の弱いまたは認められない大腸癌のリスク低下はあまり期待できないようです。