2013年8月30日金曜日

陽子線治療の保険適用が争点に

(ウォール・ストリート・ジャーナル8/29 を参照)
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887323779204579044262457153946.html

米国には陽子線治療施設が11カ所あり、現在計画中の施設はさらにそれを上回るという。
そんな背景の中、米国では最近になって、主要保険会社のうち少なくとも3社が、早期前立腺がんを対象とした陽子線治療を、保険の適用外であるという判断を下した。
ただし、最も影響力のある保険制度、メディケアは、まだ陽子線治療に対する支払いを続けている。

陽子線治療の擁護者は、この治療法はより高い精度で腫瘍に対処するため、副作用は減ると主張し、保険適用から外すという判断は、コストへの過剰な警戒感に基づく短絡的な考え方だと主張している。
一方、この治療法は、小児がんや脳腫瘍、眼腫瘍、膀胱腫瘍、脊髄腫瘍など、比較的まれな腫瘍にも用いられており、こうした利用法においては、波紋はあまり見られていない。

陽子線治療を、IMRTなどの標準的な治療法と比較した場合、陽子線治療のほうが効果が上回るという証拠はそれほど得られておらず、陽子線治療は有効な治療法の一つではあるものの、比較対象となる他の放射線治療に比べて、その費用が高く、コストパフォーマンスという点では大幅に劣ることは間違いない。

我国では、陽子線治療は、現在「先進医療」という扱いを受けており、保険が効かないわけですが、この治療を受けた前立腺がん患者の間では、陽子線治療の保険適用を望む声もあるようです。
でも、これは税金の無駄使いと言われても仕方がないと思っています。
標準治療である他の放射線治療と比べて、その効果や副作用に変わりがなく、うんと高価なわけですから、陽子線治療を選ぶ必然性に乏しいわけで、国民全体の医療費負担を考えても、前立腺がん患者への保健適用は、甘やかしと言われても弁解の余地はありません。このまま「先進医療」という形が続いても、止むを得ないのではないでしょうか。

ただし、がん種によっては、陽子線治療のほうが優れていると思われるものがあることも確かなので、こうしたがん種に対する健康保険の適用の話が持ち上がれば、喜んでご協力したいと考えています。

2013年8月26日月曜日

すい臓がん 早期発見が可能に

(2013/8/26 朝日新聞夕刊より)
罹患率は低くとも、死亡率が高く、早期発見も難しいと言われている膵臓がんですが、「アポリポたんぱく」のうち、アミノ酸の数が異なる2種類の量を血液検査で調べれば、早期の膵臓がんでも92%の精度で発見できることが、国立がん研究センターなどの研究で判明した。この方法と従来の腫瘍マーカーを組み合わせれば、ほぼ完全に膵臓がんの存在を把握できるという。


膵臓がんの5年生存率をおおざっぱに言えば、早期(Ⅰ期)に発見できれば3人に2人が生き残れるが、Ⅲ期だと4人に一人、Ⅳ期だと10人に一人しか生き残ることはできないと言われている。
いかに早く見つけるかが生存率向上の鍵となってくるわけです。

この発表が事実なら、膵臓がんの歴史上、最も画期的な出来事と言えるかもしれません。ただ、これが「膵臓がん検査として有用」と認められるには、「感度」の他に「特異度」も重要であり、この記事に書かれている「精度」とは、おそらく「感度」のことだと思われますが、詳しいことはまだわかっておりません。

2013年8月2日金曜日

カバジタキセル承認申請提出

2013年7月31日、サノフィは新しいタキサン系抗がん剤「カバジタキセル」(静注製剤)の承認申請を提出しました。
ドセタキセル治療歴のある転移性去勢抵抗性前立腺がん患者を対象とするもので、米国FDA(食品医薬品局)では、製品名「Jevtana」として2010年に承認されており、現在、すでに世界80数カ国で使われている薬です。

未承認薬の多かった前立腺がんですが、このところ次々と承認取得に向けての動きが始まっているようですね。^^