2013年7月30日火曜日

TAK-700 OSは改善せず

武田薬品により、TAK-700(一般名:orteronel)の国際共同臨床第3相試験の中間解析結果が発表されました。
主要評価項目である全生存期間(OS)においては、改善が見られず、副次評価項目である画像上での無増悪生存期間(rPFS)には、改善が見られたとのこと。
期待されていた薬なだけに、OSで評価されないとなると、やはり残念ですね。
臨床試験は継続されるとのことですが、道は少し険しくなったようで、簡単にはいかないのかも知れません。

2013年7月29日月曜日

アビラテロン承認申請提出

ヤンセンファーマ(株)によって、7月26日、去勢抵抗性の前立腺がん治療薬「アビラテロン酢酸エステル」の承認申請が出されました。
アビラテロン(
Zytiga)は、現在治療ニーズの高まっている去勢抵抗性前立腺がんの治療薬として、
欧米をはじめ世界77か国(2013年6月現在)で承認されている薬剤です。

2013年7月26日金曜日

ドセタキセルの感受性は復活可能!?

前立腺がんの抗がん剤「docetaxel(ドセタキセル)」の効果が薄れてきても、リバビリン(ribavirin)を添加すれば、再びその効果が復活し、抗がん剤に感受性を取り戻すことが可能であるという発表がなされました。
慶応大と産業技術総合研究所の共同研究によるものです。

(慶応大医学部 プレスリリース 2013/7/24)

既存薬をほかの疾患の治療に転用することを「ドラッグ・リポジショニング」と呼んでいますが、リバビリンというのは、本来は、インターフェロン(薬剤)との併用でC型肝炎の治療に用いられている抗ウイルス剤です。
「ドラッグ・リポジショニング」の例は色々ありますが、特に有名なのは、肺動脈性肺高血圧症の治療薬「シルデナフィル」が、「バイアグラ」として勃起不全の治療にも用いられていることです。
既存薬は、すでに安全性の検討は終えており、新薬開発に必要とされる膨大な時間と費用が大幅に削減されるので、この手法が今、製薬業界で注目されているとか。





抗がん剤に耐性を示すのには、多能性幹細胞が関わっており、多能性幹細胞には OCT4 という遺伝子転写因子の高発現が見られます。OCT4 の発現が高い細胞(耐性細胞)と、そうでない細胞(感受性)を分離し、ドセタキセルの効果を比較試験したところ、その違いは明らかであり、このOCTの発現を逆転させ、「抗がん剤耐性」を再び「感受性」に戻す、即ちリプログラミングさせるため、新たに開発されたプログラムで、既存薬の中から候補9種類をピックアップ。実験でこれらを検証、絞り込むことにより、リバビリンが浮上してきたとか。
慶応大では引き続き臨床試験を始めるべく検討を始めているとのことですが、普通は、ここから先が、思いのほか長くて厳しい道のりになるんですよね。

「ドラッグ・リポジショニング」の利点を生かして、なんとか早期に実用に漕ぎつけてもらいたいものです。

詳しくはこちらのプレスリリースをご覧ください。
http://www.keio.ac.jp/ja/press_release/2013/kr7a4300000ccfyu-att/130724_1.pdf
その要約がマイナビニュースにも書かれています。
http://news.mynavi.jp/news/2013/07/25/174/index.html


2013年7月20日土曜日

前立腺がんの治療情報は患者に届いているか

以下は、ひょうごがん患者連絡会のニューズレター30号(2013年7月発行)への寄稿文です。


前立腺がんの治療情報は患者に届いているか

前立腺がん支援ネットワーク 武内 務

前立腺がん支援サイトを立ち上げる

 前立腺肥大だろうと思いつつ足を運んだ病院で、PSA検査で異常高値が見つかり度肝を抜かれたのは2004年の秋、当時56歳の時でした。がんの一部はすでに前立腺の皮膜を突き破り、セカンドオピニオンでも「もはや手術は手遅れ、5年生存率2割」と告げられました。結局、IMRTという放射線治療に辿り着くわけですが、そのような答えは、一般書店で目に触れるどの本にも書いてなければ、多くの病院のサイトを渡り歩いても、なかなか見つけることが出来なかったのです。
たったこれだけのことを知るのに、なぜこれほどの苦労をしなければいけなかったのか。この怒りにも似た気持ちをバネに、治療後、自分で前立腺がんの解説サイトを立上げることを思い立ちました。

 前立腺がんと告げられた時、本当に欲しいと思う情報がすぐに見つかるサイトを作りたい・・・そう思いつつ躊躇する日々が続いたのですが、ともかく思いきってやってみないことには始まりません。
 前立腺がんの先進国、米国のサイトを参考にしながら形を整え、新たに掲示板を開設し、がん情報にアンテナを張り、加筆修正を加え、
患者さんの相談にも乗りながら、徐々に体裁を整えて行ったのです。

患者(素人)の立ち上げたサイトではありますが、昨年は、複数の専門医のチェックも受け、「腺友ネット」という前立腺がん支援サイトに装いを改めました。 http://pros-can.net/
これまでのサイトを引き継いでいるという遺産もあってのことだと思いますが、それからほぼ1年が経過した今、Googleで「前立腺がん 治療法」で検索すれば、<前立腺がん治療ガイドブック(旧バージョン)>がトップページに、「前立腺がん患者会」で検索すれば、<腺友ネット>がすべてのTOPに表示されます。

アカデミズムの世界とは

前立腺がん患者の支援活動を継続して約8年が経過した今、患者からは見えにくい「アカデミズムの世界」が、少しずつ見えてきました。

   ♪男と女の間には~ 深くて暗い川がある~
   ♪誰も渡れぬ川なれど~ エンヤコラ今夜も舟を出す~

ご存じの方が多いと思いますが、加藤登紀子や長谷川きよしが歌っていた「黒の舟歌」です。
大学という世界では、研究や教育などが全て縦割りとなっており、「隣は何をする人ぞ」ということも決して珍しくありません。
 泌尿器科と放射線治療科というのも、まったく別のアカデミズムの世界であり、お互い多少の交流はあったとしても、基本的にはそれぞれが別のシマであり、両者の間には、この歌に似た「深くて暗い川」が横たわっているのです。
泌尿器科医は、放射線治療のトレンドには関心が薄いし、たとえ知っていても、それを患者に勧めることは稀であり、泌尿器科のシマを飛び越えた情報は、なかなか患者には伝わってこないのです。ハイリスク前立腺がんを例にとれば、私の体験したIMRTが、当時隠されていたトレンド情報であり、ブラキセラピー(外照射+ホルモン療法併用)が、現在それと同様の扱いを受けていると言えるのではないでしょうか。

がん患者の教科書と言われている、国立がん研究センターの「がん情報サービス」にしても、前立腺がんの解説ページに書かれている内容は、まったく泌尿器科のシマ内のことであり、放射線治療の扱いも「深くて暗い川」を隔てて、向う岸をちらりと見やった程度に留まっています。
 前立腺がんの治療法は、これら二つのシマに分散配置されているのですが、患者には、この全貌を大所高所から見渡せる視座が与えられていないので、こうした「深くて暗い川」の存在に気付いたとしても、ほとんどの場合は治療を終えた後のこと・・・覆水盆に返らず、ですね。

セカンドオピニオンを受けるなら

前立腺がんの場合、患者がまず接するのは泌尿器科医。がんと診断されれば告知を受け、詳しい病状や治療法の説明を聞くわけですが、一人の医師からすべての治療法について客観的な説明を聞く事ができるというのは、よほど幸運なケースでしょう。
前立腺がんの治療法は多選択時代を迎えたと言われていますが、これらの治療法のすべてに精通した医師は、現実にはほとんどいないと思われます。

2007年、ASCOという世界的に有名な学会で、前立腺がんの治療法選択に関する研究発表がありました。泌尿器科医のみからインフォームドコンセントを受けた患者は、多くが「手術」を選び、手術の出来ない高齢者では、ホルモン療法を選ぶ人が多かったのですが、次に放射線治療医の見解も併せて聞いた場合では、こんどは年齢にかかわらず、ほとんどの患者が「放射線治療」を選んだというのです。
患者自身は、予備知識のないことが多いので、始めに説明を受けた先生を信頼し、その意見に追随することが多いからでしょう。

前立腺がんのセカンドオピニオンは、ぜひ放射線治療のシマに脚を運ぶべきです。
日本では泌尿器科のシマで手術を受ける人が7割ですが、欧米では逆に、放射線治療のシマで治療を受ける人が7割を占めています。
二つのシマの間に横たわる「深くて暗い川」は、患者自身で飛び越えようとしない限り、対岸の世界を知ることは難しいのです。

手術ならチャンスは2度?

患者が出くわすケースで最も多いのは、泌尿器科医のこういう説明です。
「手術ならたとえ再発しても、また放射線治療を受けるチャンスがあります。でも、放射線治療なら、チャンスは1度しかありません」
これを聞いて「じゃあ、手術に決めた」という患者さんが大勢おられますが、はたしてこれは本当でしょうか?
初回治療で用いられる放射線治療は、ブラキセラピー(単独or外照射併用)かIMRTが多くなってきました。
 しかし、術後再発のあとの放射線治療では、念を押すまでもありませんが、ターゲットとなるべき前立腺はすでにありません。リカバリー照射というは、元々前立腺があったと思われるそのあたりを狙って、さほど強くない(強すぎると正常な組織を傷めます)放射線を当てるだけの治療ですから、成功率はせいぜい50%、切れ味の鋭い初回の放射線治療とはまったく別物だということを、しっかり知っておく必要があるでしょう。
無意識あるいは故意に、高性能照射とリカバリー照射を同一視していることが一番の問題であり、二つ目の問題は、それぞれの治療法の治癒率(PSA非再発率)を示していないことです。手術と放射線治療は同等と思ってくださいという説明も良くなされますが、これは死亡率の比較であって、再発率の比較ではありません。
限局がんで例えると、手術なら2~3割が再発しますが、適切なブラキセラピー(単独or外照射併用)やIMRTでは9割以上、それも低・中リスクに限定すればほぼ全てが再発もしないで治っているのです。
再発の可能性の高い治療を2回受けるか、初回治療の一発勝負で治したいかと問われれば、患者は後者を選ぶに違いありません。
「手術ならチャンスは2度」というのは、まやかしに過ぎません。

新しい治療法

今振り返っても、私が治療を受けたIMRTは当時としては最善の選択であったと思うのですが、現在ならどうするかと聞かれると迷いますね。IMRTは画像誘導や自動制御ではその後も進化が見られますが、照射線量がさほど増えていないのが不安要素です。
 ハイリスクの前立腺がんにおいては、ブラキセラピー(外照射+ホルモン療法併用)の好成績が、ここ数年目立つようになってきました。IMRTを凌駕する線量を、安全に照射することが可能で、一定の浸潤にも対応でき、高い「非再発率」が期待できる一押しの治療法と言えそうです。

粒子線治療が最先端技術のように言われていますが、300万前後の費用がかかるにもかかわらず、ブラキセラピーやIMRTと比較し、治療成績が上回るという報告はありません。重粒子線のようなエネルギーの高い放射線でなければ太刀打ちできないがんもあるので、その必要性は判るのですが、現在、我国では次々とこれらの大型施設の建設が進んでいます。しかも、その患者の多くは、ぜひ粒子線治療が必要だとは思えない前立腺がんの患者です。こうした治療を受けた前立腺がん患者からは、保険適用を望む声もあるようですが、これにより、ますます前立腺がん患者の不必要な囲い込みが強まることには、少し違和感を覚えています。

手術分野で最近注目を浴びているのは、やはりダ・ヴィンチ(ロボット支援手術)でしょう。離れた場所で3次元画像を見ながら、360度回転する腕を細かく操作できるというのは、アトム世代の我々よりも、ガンダム世代の医者のほうが飛びつきやすいのではないでしょうか。腹腔鏡に比べ、操作が覚えやすいとか、患者の出血量も減ったとか言われていますが、前立腺がん手術のほとんどがこれに置き換わった米国では、「ダ・ヴィンチ訴訟」というものが増えており、非再発率も開腹手術と比べても、ほとんど改善されていないということなので、むやみに飛びつくと期待外れに終わることもありそうです。

治療法選択の物差し

前立腺がんの5年生存率は、去勢抵抗性の転移・再発がんを除いて、ほぼ100%に近づいたと言われています。どの治療法を選んでも、すぐに死亡するということはめったになくなり、治療法の選択において、「生存率」という物差しはすでにその意義を失いつつあります。今後注目すべきは「非再発率」という物差しではないでしょうか。がん登録の統計として公表されているのは「死亡率」や「罹患率」ですが、これに「非再発率」も加えていただけるなら、大変ありがたいと思っています。

QOL」というのも良い物差のひとつと言えるでしょう。治療時の身体への負担もそうですが、後で振り返れば、治療時限定のことと言えばほとんど一時的。治療後も継続する、もしくは治療後に出てくる副作用は、下手をすれば一生それを引き摺って生きていかねばなりません。

患者が治療法を選択するにあたっての物差しは、人によって異なります。これまで生きてきた背景が異なるゆえ、むしろそれは当然のことと言えるでしょう。患者が最終的に下した判断は、決して横からとやかく言われる筋合いのものではなく、最大限尊重されねばなりません。
それだけに、患者が治療法を選択するにあたり、公平な情報をどれだけ事前に正しく伝えることができるのか、このあたりが重要なポイントとなりそうです。

前立腺がんにも患者会が欲しい

腺友ネットのアクセスは約150/日、その中の掲示板へは、直接アクセスする人も含めると平均約250/日。すべてが患者ではないものの、患者中心のクラスターの存在は感じられると思うのです。そう思う人も増えて来たせいでしょうか、最近は、前立腺がんの患者会が欲しいとか、患者会を作らないのですかとか、そういった声をよく耳にするようになってきました。
女性のがんで患者数の最も多いのは乳がんであり、患者会の数も多いのですが、男性のがんで最多の患者数である前立腺がんには、未だに患者会が存在しません。(同種治療を受けた院内患者会はいくつかあります)

前立腺がんサイトを立上げた当初は、患者会の設立などということはまったく頭になかったのですが、昨年「腺友ネット」を立ち上げた頃から、前立腺がんにも患者会というものが必要かもしれないと思い始め、ぼんやりと構想を練ったりもしていたのですが、考えれば考えるほど、先が読めずに難しい。むしろ深く考えず、エイヤッと会員の募集を始めてしまったほうが良いのではないかと、近頃はそう思うようになってきました。
具体的に動き出すまでには、もう少し時間がかかりそうですが、いずれそう遠くないうちに前立腺がんの患者会の設立に向けてのスタートを切れればと思っています。

小さく生れて、ゆっくりと、大きく育つことを願いながら。

2013年7月17日水曜日

Xofigo(塩化ラジウム-223)

2013年5月16日、FDA(米国食品医薬品局)は、骨転移を有する(他臓器に転移のない)去勢抵抗性前立腺がんの治療薬として、Xofigo(塩化ラジウム-223)を、予定より3ヵ月前倒しで承認した。治療対象となるのは、テストステロンの産生を抑制する薬物療法や去勢術を受けたことのある前立腺がん患者で、全生存期間が約3ヶ月延長することが確認された。
Xofigoは、アルファ線を放出する放射性医薬品で、骨内のミネラル成分と結合し、骨腫瘍に直接放射線を照射するため、周辺正常組織へのダメージを抑えることができる。
アルファラディンの名称で臨床試験結果をお伝えしていたものと同じ薬剤で、呼称がXofigoと変わたもの。
臨床試験で報告された主な副作用は、悪心、下痢、嘔吐、ならびに、脚、足首、足の腫脹。
血液検査における異常は、赤血球、リンパ球、白血球、血小板、好中球の減少であった。

治療用放射性医薬品としては、すでにメタストロン注(ストロンチウム-89)が、我国でも用いられているが、メタストロン注がベータ線を放出するのに対し、Xofigo(塩化ラジウム-223)はアルファ線を放出する。
ストロンチウムとラジウムは、いずれもカルシウムと似た性格を持つため、骨に集まりやすい。
ラジウムの放出するアルファ線は、ストロンチウムの放出するベータ線に比べて、放射線のエネルギーが数倍高いが、飛程距離はうんと短いため紙1枚でも遮蔽でき、体外に放射線が漏れる心配はない。
放射性ラジウム226 は、1,500年という長い半減期を持っているので、被曝が重要問題となり、取り扱いも困難だが、今回承認された 223 は、数10分という半減期なので、短時間で放射能を失ってしまう。
半減期が50日ほどのストロンチウム89の効果持続期間がほぼ3ヵ月と言われているのに対し、Xofigo がほぼ1ヵ月という理由は、この半減期の違いによるものと思われる。

2013年7月8日月曜日

去勢抵抗性前立腺がんのホルモン療法

薬物的去勢を行う上で、ベースとなるのは、これまではLH-RHアゴニスト(リュープリンorゾラデックス)でしたが、現在は、これに加えて新薬ゴナックスが用いられるようになりました。
効果のほどはこのゴナックスのほうが優れている(特に初期のPSA効果が著しい)という報告もありますが、アゴニストに抵抗性を示した場合、ゴナックス(アンタゴニスト)に代えてみて効果があるかどうかは良く判っていないのが現状のようです。
しかし作用機順は少し異なるので、トライしてみる手はあるかも知れません。


これらと並行して抗男性ホルモン薬が用いられることが多いのですが、カソデックスから始まって、効果がなくなるたびに、オダイン、プロスタールと薬の種類を変えることが多いようです。

(→交替療法)
抗男性ホルモン薬を中止すると、PSAが下がる場合もあります。
(→アンチアンドロゲン除去症候群)


以下の順序は必ずしも決まっているわけではありませんが、これらの薬剤が次々と用いられることが多いと思われます。

・エストラサイト(抗がん剤:ナイトロジェンマスタードと女性ホルモン:エストラジオールの複合薬)
・プロセキソール(女性ホルモン剤)
・タキソテール(抗がん剤、プレドニンと併用で用いることが多い)
・デキサメタゾン(ステロイド)

これらと並行して考えなければならないのが、骨転移への対処です。

これまで多かったのはゾメタですが、近頃はランマークが使われることも増えてきました。
転移個所がすくなければ、放射線治療(外部照射)が有効ですが、多発転移に対しては、メタストロン注(ストロンチウム89)が用いられる場合もあります。
(参考:メタストロン注実施医療機関 http://www.nmp.co.jp/CGI/public/meta/top.cgi)

ここまで全て手をつくしてしまった場合は、新薬の臨床試験を受けるという手も考えられないことはありません。

海外ですでに承認済みであり、日本で治験が行われている薬がいくつかあります。
新規の抗アンドロゲン剤であるエンザルタミド(MDV3100)は、すでに治験を終了し、2013年5月、厚労省に対し承認申請が出されています。
アビラテロン、TAK700などの男性ホルモン阻害剤や、新規抗がん剤であるカバジタキセルで、現在治験が進められています。
これらの薬剤の治験にあったては、泌尿器科学会でも臨床研究推薦文を出して後押しをしてくれています。
シプロイセル-T(プロベンジ)という免疫系の薬も海外では承認済みですが、一部に薬効を疑問視する声もあったり、高額(900万)なこともあり、我国では、積極的に承認を求める声は多くなく、実際にそうした動きも鈍いようですね。

ただ、どこでこうした臨床試験が受けられるということはなかなか難しく、がん情報サービスにも一応関連リンク先情報はあるのですが、患者の閲覧に対する配慮がかけており、なかなかこれらのリンク先を辿るのは大変でしょう。

http://ganjoho.jp/public/dia_tre/clinical_trial/ct03.html
どこかでこうした治験を受けることができないか、主治医に相談を持ちかけるのが手っとり早いかもしれません。
エンザルタミドはおそらくここ1年の間に承認されるだろうと思われます。
前評判の良い薬なので、この薬の承認まで、色々とあの手この手でつないでいければ良いのですが。
                            *

補記:エンザルタミドとアビラテロンは2014年に承認されました。TAK700は開発を断念。
   カバジタキセル(抗がん剤)もドセタキセル(タキソテール)後の薬として承認されています。

2013年7月3日水曜日

術後/サルベージ放射線療法ガイドライン(米国)

米国放射線腫瘍学会(ASTRO)と米国泌尿器科学会(AUA)が、共同で、前立腺全摘除術後の ”術後/サルベージ放射線療法ガイドライン” を作成し、2013年5月7日、その内容が公表されました。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/search/cancer/news/201305/530396.html

”術後/サルベージ放射線療法ガイドライン” では、次のような臨床的事項について、医師はこれを患者に伝えなければならないとされています。(内いくつかの要約を下に抜粋)

1)全摘術を行った場合、病理検査の結果、当初の診断がより高リスク群に変更される可能性がある。

2)精嚢浸潤や断端陽性、皮膜外浸潤などを有する場合、全摘術に続いて術後放射線療法を追加すれば、PSA再発、局所再発、臨床的進行をきたすリスクが低下する。

3)術後PSA再発をきたした場合、転移リスクの上昇および死亡リスクの上昇に結びつくことがある。

4)PSA再発患者は再度病期診断を検討したほうが良いかもしれない。

5)遠隔転移のない症例に全摘術を行い、PSA再発または局所再発が確認された場合は、サルベージ放射線療法を勧める。

6)PSA再発症例に対するサルベージ放射線療法は、PSAが低値であるほど高い効果が得られる。

7)放射線療法は再発のコントロールには有用だが、排尿、排便、性機能などになんらかの副作用を生じる可能性がある。


我国の場合はどうでしょうか。
手術の前に、これだけの内容の説明を受けることは、まずほとんどないでしょうね。
泌尿器科の医師のコンセンサスが、まだ得られていない内容もありそうです。