2008年8月9日土曜日

Provenge® ―前立腺がん治療用樹状細胞ワクチン

Provenge®(一般名sipuleucel-T)は米Dendreon社(NASDAQ:DNDN)が開発した前立腺がん治療用ワクチンである。Dendreon社は1992年に設立されたバイオベンチャー。米国シアトルに本拠地を置き、免疫系を利用したがん治療薬の開発を行う。2000年、NASDAQに上場した。Provenge®は患者自身の樹状細胞と融合たんぱく質から成る。融合たんぱく質には抗原となるPAP(前立腺がんの多くで見られる前立腺酸性ホスファターゼ)と樹状細胞を刺激するGM-CSFが含まれる。患者の血液中から採取した樹状細胞の前駆細胞にPAP抗原と上記の融合たんぱく質を作用させ、活性化した樹状細胞を患者に戻す。樹状細胞に刺激されたT細胞が抗原を有する前立腺がんを攻撃すると考えられる。前立腺がん患者23を対象としたフェーズⅢ臨床試験(多施設におけるプラセボ24対照ランダム化二重盲検比較試験)では、Provenge®投与群はプラセボ投与群に比べ生存期間の中央値が4.5カ月延長し、死亡リスクが41%減少したもよう。同社は2006年11月にFDAに対して生物製剤承認(Biologics License Application:BLA)を申請した。FDAの諮問委員会からはProvenge®の一定の安全性と有効性を認められたものの、承認可能通知25と共に追加の臨床試験データの提出を求められた(2007年5月9日同社プレスリリース)。現在進行中のホルモン不応答性前立腺がん患者を対象としたフェーズⅢ試験では全生存期間(overall survival)を評価しており、2008年に中間結果が得られる見込みである。

2008年8月8日金曜日

前立腺がん検診:75歳以上は行わず(米国)

米国でPSAによる前立腺癌検診は75歳以上には行わないことを推奨。

米国Preventive Services Task Force(USPSTF)は、75歳以上の男性には、PSA(前立腺特異抗原)検査による前立腺癌検診を行わないように推奨する新しいガイドラインを発表した。同ガイドラインでは、75歳未満の男性においても、PSA検査による弊害が有効性に勝るという十分なデータがないとしている。

  このガイドラインは、Annals of Internal Medicine誌の8月5日号に掲載された。同ガイドラインによると、75歳以上の男性もしくは予想される余命が10年以下の場合には、前立腺癌検診で 発見された癌を治療することで得られる利益は少なく、検査陽性時に行う生検などで生じる不利益に勝らないとした。そのため、75歳以上の男性に対しては、 PSAを用いた前立腺癌検診は行わないよう推奨するとしている。

 また、75歳未満の場合でも、前立腺癌検診で得られる利益に関する十分な科学的データがなく、生検などで生じる不利益に勝るかどうかの判断を行うことができないとした。そのため、75歳未満についても、PSA検査による前立腺癌検診の有効性を判断していない。

 日本においても、PSA検査による前立腺癌検診を巡って、厚生労働省と泌尿器科学会が対立している。今回米国で発表された新しいガイドラインは、日本におけるPSA検査のあり方にも影響を及ぼしそうだ。

小板橋 律子=日経メディカル別冊

前立腺癌にabirateroneが顕著な結果

前立腺癌の新薬abirateroneの著しい結果が英国他で期待を集めている。
Abiraterone(アビラテロン)はテストステロンを阻害する薬剤で、最新の第2相試験では、前立腺癌のマーカーであるPSA値を半分に下げ、治療後増殖していた腫瘍をも縮小させた。

この発表は7月8日の欧州癌学会(ESMO)年 次総会で報告されたもので、Institute of Cancer ResearchおよびInstitute and The Royal Marsden NHS Foundation Trustによる進行前立腺癌対象の2つの第2相試験からの結果である。両試験でabirateroneは患者のPSA値を50%低下させた。

両試験では、テストステロンの生成を抑えるため精巣を摘出していた参加者全員がabiraterone1,000ミリ/日を受けた。
1つの試験は、化学療法を受けていない患者が対象とされた。34人のうち22人で2ヵ月後にPSA値が50%低下、一部の患者で腫瘍縮小が認められた。も う1つの試験では、標準であるドセタキセル化学療法にも進行した患者28人にabirateroneを投与した結果、10人で50%以上のPSA減少が 3ヶ月以上進んだ。大きな副作用は報告されていない。
男性ホルモンは主に精巣で生成されるが、副腎やほかの場所でも作られる。これらのホルモンが前立腺癌を促進するため、まず、精巣でのテストステロン生成を 阻害する治療が行われるが、精巣以外で作られるホルモンに対して有効でなかった。Abirateroneはその他の場所で男性ホルモンを作る際に必要な酵 素を標的にしている点でこれまでの治療と異なっている。

研究者らは、この結果はあらゆる治療が効かなくなった前立腺がん患者にとって大きな前進となるであろうこと、および、この薬剤はこれまで治療不可能とされ た患者にとってきわめて有望であると述べている。しかし、この結果は初期段階であり、極端な期待はしないようにとの勧告も出された。同薬は2011年ごろ 利用可能となる見込みとのこと。
原文記事Cancer Research UK