2011年11月19日土曜日

期待される前立腺がん治療薬

■デノスマブ(denosumab)
FDAがホルモン療法を受ける前立腺がん患者の骨量減少予防の適応拡大申請を承認
骨関連事象(合併症)の出現を遅らせる効果はゾレドロン酸(ゾメタ)より優れているという。

■デガレリクス(degarelix)
Gn-RHアンタゴニスト。2008年にFDAが承認
LH-RHアナログ剤(リュープリン、ゾラデックス等)のようなフレアアップ現象(テストステロンの一時的な上昇)を来さない。
前立腺癌のアンドロゲン遮断療法のファーストラインになる可能性。

■アビラテロン(abiraterone)
去勢抵抗性転移性前立腺がんを対象にFDAが承認(2011年)。
「CYP17」を選択的に阻害し、精巣や副腎でのテストステロンの産生を抑える新薬。

■カバジタキセル(cabazitaxel)
新しいタキサン系抗癌剤。
FDAはドセタキセル治療歴のある転移性去勢抵抗性前立腺癌の治療薬として、2010年に承認

■プロベンジ(provenge)
前立腺がん治療用ワクチン。FDAが自己の細胞を用いた免疫療法を承認した(2010年)初めての事例。
臨床試験での全生存期間の延長は4.1カ月。高額(約700万円)。
我国では効果のほどを疑問視する声もあるので、国内での早期承認はなさそうです。

■TAK-700
非ステロイド系の男性ホルモン合成酵素阻害薬。
化学療法が無効で、去勢抵抗性の転移性前立腺癌患者を対象として、フェーズ3臨床試験が進行中。

■MDV3100
MDV3100は第二世代の経口抗アンドロゲン剤
カソデックスよりも優れたPSA抑制作用を示し、カソデックス抵抗性癌にも効果が見られる。
現在、ドセタキセル(タキソテール)の治療歴を有するホルモン非感受性前立腺癌患者を対象とした、国際第Ⅲ相臨床試験が進行中。

■Xofigo(alpharadin)
α線放出核種ラジウム223を用いた放射性医薬品。
フェーズ3臨床試験では全生存期間と骨関連事象(SRE)の発祥までの期間を有意に延長。
去勢抵抗性前立腺癌の治療薬としてFDAがファストトラック指定をしていてが、2013年5月16日、
骨転移を有する去勢抵抗性前立腺がんの治療薬として、FDAにより承認

■カボザンチニブ(cabozantinib)
新規チロシンキナーゼ阻害剤。
前立腺癌以外にも肝臓癌、卵巣癌等で高い腫瘍抑制効果が示され、骨痛に対しても良好な結果がASCO2011で報告されている。
転移性去勢抵抗性前立腺癌患者を対象にフェーズ3試験を2011年末にも実施予定。

■プロストバック(prostvac)
PSAを標的として、牛痘と鶏痘の水疱瘡ウイルスを用いて作られたワクチン。
転移性去勢抵抗性前立腺癌患者を対象とした前立腺癌治療ワクチンでフェーズ3試験が開始予定。
FDAよりファストトラック(優先審査対象)指定を受けている。

PROSTVAC

転移性去勢抵抗性前立腺癌患者を対象とした前立腺癌治療ワクチンPROSTVACのフェーズ3試験が開始される。
米国を含めた世界20カ国以上の約300施設が参加し、転移があるが症状の軽いホルモン抵抗性前立腺がん患者1200人を登録し、全生存期間を比較する予定。
PROSTVACは、PSAを標的として、牛痘と鶏痘の水疱瘡ウイルスを用いて作られたワクチンで、フェーズ2試験では、少ない副作用で生存期間中央値を8.5カ月延長した。
FDAよりファストトラック指定(優先審査対象指定)を受けている。

2011年11月7日月曜日

MDV3100

化学療法歴のある進行前立腺がんの治療薬 MDV3100(経口アンドロゲン受容体拮抗薬:米Medivstion社、アステラス製薬)は、フェーズ3臨床試験の中間解析において、好成績(生存期間の延長)が得られたため、予定を早めて臨床試験を打ち切った。
ドセタキセルを含む化学療法にもかかわらず、進行が止まらないホルモン療法抵抗性前立腺がん患者1199人に対しMDV3100(160mg/日)と偽薬のグループに分けて追跡調査を行った結果(←520人死亡時の中間解析)、全生存期間の中央値は、MDV3100群が18.4カ月、偽薬群が13.6カ月で、MDV3100群に4.8ヵ月の生存期間の延長が認められた。
2012年、FDAに対し承認申請が行われる見通しで、もしMDV3100が商品化されれば、ホルモン療法と化学療法を受けても進行が止まらない前立腺癌患者にとって新たな選択肢になると期待される。
MDV3100は、現在、これより初期の前立腺がんに対する臨床試験も進行中。
(↓参照)
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/search/cancer/news/201111/522309.html&cnavi=1

光感受性分子標的発熱剤

光を受けると発熱する化学物質を、がん細胞に特有なタンパク質をターゲットとした抗体に結合させた「光感受性分子標的発熱剤」の開発に、米国立保健研究所(NIH)の小林久隆チーフサイエンティストらが成功した。
がんを発生させたマウスにこの薬を注射すると、がん細胞だけに光感受性発熱剤が取り付き、これに近赤外線を照射すると、発熱して、熱エネルギーによってがん細胞の被膜が破壊されがん細胞を死滅させるという。マウスでは8割のがんが消えたとか。

がん特有の抗体を乗り物として、抗がん剤や放射性物質をがん細胞だけでに届ける手法はミサイル療法(ターゲット療法)と言われていますが、これは光に反応する人体に無害の物質を用いて、熱という物理的作用でがん細胞を短時間で破壊するもの。
がん腫によって、もちろんターゲットとなるタンパク質は変わるので、それぞれのがんに応じた「光感受性発熱剤」の開発が必要だと思われますが、特定のがん細胞だけに運ばれて、特定のがん細胞だけを攻撃するドラッグデリバリーシステムの進歩は著しいので、実用化もさほど難しい話ではないでしょう。
光感受性薬を用いた光線力学的療法(PDT)とか、増感剤を用いた放射線療法なども、広い意味ではこれと同類だと思いますが、薬剤を直接がんに届けるミサイル療法と、光・赤外線・X線等の照射との組合せは、テクノロジーとしても面白く、かつ期待できる分野ではないでしょうか。

朝日新聞(2011/11/7)http://www.asahi.com/health/news/TKY201111060396.html