2016年2月4日木曜日

オラパリブがmCRPC患者の画期的治療薬指定(FDA)

経口PARP阻害剤オラパリブ[olaparib](Lynparza)は、2014年12月、BRCA1/2遺伝子変異陽性の進行卵巣がん患者に対して、すでにFDA(米国食品医薬品局)の承認を受けているが、卵巣がん以外にも、同様の変異がある乳がんや前立腺がんなどにも有効であるというデータが、ここ1~2年の間に示されてきた。このたび、これを受けた形で、特定の(*注)転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者に対し、単剤療法としてFDA(米国食品医薬品局)による画期的治療薬(The Breakthrough Therapy Designation)に指定されたとのこと。
 (アストラゼネカのプレスリリース参照)
 http://www.astrazeneca.co.jp/media/pressrelease/Article/20160202

*注:タキサンベースの化学療法及び新規ホルモン製剤 (アビラテロン or エンザルタミド) による前治療を受けた、BRCA 1/2 または ATM 遺伝子変異を有するmCRPC患者

「画期的治療薬指定」とこれまでの「迅速・優先承認」との違いが分かりにくいが、承認への近道であることには間違いなさそうだ。Breakthroughの意味から連想する通り、著るしい改善が見込める変革的治療薬のための制度で、これまで治療薬が存在しなかった分野や、予備的結果から既存薬と比べて著しい進歩が認められる治療薬が候補になるという。
ただ、その指定方法が不透明という声もあるようだ。

ジャーナル・オブ・クリニカル・オンコロジー誌からオラパリブの有効性に関する記事をピックアップすると次の通り。

 卵巣癌         乳癌        膵臓癌       前立腺癌
 約3割(60/193人) 1割強(8/62人)  2割強(5/23人)  5割(4/8人)

これをみる限り、卵巣癌がもっとも効果的。
前立腺癌は5割だが、N値が少ないので統計上の根拠は薄い。
有害事象で最も多かったのは疲労感、心臓に影響が出る悪心、嘔吐など。
グレード3以上の重い有害事象は54%で、貧血が最も多かった・・・要注意と思われる。

転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)では、その治療は延命、病勢進行の遅延、症状および生活の質の改善などが中心となり、BRCA1、BRCA2、ATMの体細胞もしくは生殖細胞遺伝子変異を有する患者に対する標的治療は存在しないが、2015年5月、米学術誌「セル」に掲載された研究によると、mCRPC患者の約2割は、オラパリブ(PARP阻害剤)が効く可能性があるという。

前立腺がんに用いられる抗がん剤といえば、タキサン系(ドセタキセル)が中心だが、今後、BRCA変異を有する場合は、乳がん・卵巣がんで使われてきた白金系抗がん剤(シスプラチン)をベースとする化学療法も有効となる可能性が考えられる。