2017年8月13日日曜日

「がん光免疫療法」について

「がん光免疫療法」は、米国立衛生研究所主任研究員の小林久隆先生がリーダーとなって進めている、近年、注目を集めている次世代の治療法です。
がん細胞特有のタンパク質(抗原)と結びつく抗体にIR700という光感受性物質をくっつけて体内に注入、近赤外線を当てると、熱エネルギーの作用でがんの細胞膜に傷が付き、細胞内に水分が進入、がん細胞が膨れ上がり、僅か1~2分で細胞膜が破壊される(ナノ・ダイナマイト)。
細胞膜が破壊されたがん細胞は、免疫による攻撃対象となるので、転移がんに対しても有効だが(複数のがん巣を設けたラットに対し、一か所のみに近赤外線照射を行っても、すべてが治癒したとか)、がんの免疫抑制細胞に対しても同様のナノ・ダイナマイトをしかければ、さらに確実性が増す可能性も。
細胞膜の破壊という物理的な現象は、生物全般に共通していることなので、ラットの成果はほぼそのまま人間にも通用すると見込まれており、実際、2015年から米国で始まった頭頚部がんの臨床試験(現在は第Ⅱ層試験中)では、予想通りの好成績が出ているとか。
身体に毒を入れず、がん細胞だけを破壊するので、副作用もほとんどなく、この治療で免疫細胞を弱らせることもない。
がん特有のタンパク質(遺伝子)変異に対する抗体6~7種類と、がんの免疫抑制に関与する抗体2~3種類を特定できれば、大部分の固形がんの治療が可能になるという。
頭頚部がんに続いて、臨床試験の準備が進んでいるのは、大腸がん、すい臓がん、乳がん、悪性黒色腫など。

前立腺がんも動物(ラット)実験では、良い結果が出ているとか。
近年の新薬は怖ろしく高額であり、医療行政の破綻も危惧さえているが、これで歯止めのかかる可能性もあるという。この治療法は2011年に論文として発表され、
(この時には、このブログ「前立腺がんMEMO」でも紹介をさせていただきました

 http://higepapa.blogspot.jp/2011/11/blog-post.html )
翌年には、
オバマ前大統領も一般教書演説で取りあげています。
このライセンスを持つベンチャー企業には三木谷さん(楽天)が資金面での支援を行っており、できれば日米ほぼ同時の実用化を目指したいとか。
興味があれば、まずはこちらの動画をご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=E3g1qVwNoZM
もう少し詳しく知りたい方にはこちらの本が良さそうです。

「がん光免疫療法の登場」(永山悦子著:2017/8/30出版)