2012年5月30日水曜日

デノスマブ(ランマーク)と低カルシウム血症


2011年12月、我国でも、多発性骨髄腫および固形がんの骨転移による骨病変に対する治療薬としてデノスマブ(ランマーク皮下注120mg)が承認され、2012年4月よりこれが使用できるようになりました。
破骨細胞の活性化には、NF-κB活性化受容体(RANK)とそのリガンド(RANKL)とのシグナル伝達が関与していることが明らかになっていますが、デノスマブは、RANKLと結合し、破骨細胞及びその前駆細胞膜上に発現するRANKへのRANKLの結合を特異的に阻害する、いわゆる分子標的薬(ヒト型抗RANKLモノクローナル抗体製剤)と言われるものです。

前立腺がんの骨転移に対しては、これまでゾレドロン酸(ゾメタ)が多く用いられてきましたが、ゾメタはビスフォスフォネートと呼ばれる種類の薬で、元々は骨粗しょう症の治療薬として開発されたものですが、破骨細胞の働きを止めることにより、骨からのカルシウムの放出を防ぎ、骨転移による骨病変を抑えます。

骨関連事象の発現を遅らせる効果は、ゾメタよりデノスマブのほうが優れている(NCI Cancer Bulletin2010年11月30日)とも言われていますが、はっきりしたことは判りません。
ゾメタの副作用としては、腎機能の低下と顎骨壊死に注意が必要で、デノスマブの場合も、顎骨壊死に対する注意は同様だが、腎機能の低下の恐れはさほどでもなく、むしろ低カルシウム血症に対する注意が必要とか。
米国では重篤な症候性の低カルシウム血症(症状を伴う血中カルシウムの低下)による死亡例が報告されており、第一三共のHPにも、昨日(2012/5/29)、低カルシウム血症に対し注意を喚起する製品情報が掲載されました。
http://www.daiichisankyo.co.jp/corporate/pdf/20120529.pdf
手足のふるえ、筋肉の脱力感、けいれん、しびれ などの症状が出たら要注意とか。
いずれにせよ新しい機序の薬には、効能の裏にどんな副作用が隠れているかも知れませんので、少しでも異変を感じたら、すぐに主治医に訴えるほうが無難ではないでしょうか。

前立腺がんの低酸素状態と再発予測について


(2012年3月31日 Clinical Cancer Research誌の電子版に掲載)
多くのがん種で、腫瘍内は低酸素状態にあると言われているが、前立腺がんではこれまで一度も決定的な証明はされたことがない。
米国癌学会で発表されたこのたびの研究によれば、前立腺がんにおける低酸素(酸素欠乏)状態は、中間リスクの患者における早期の生化学的再発や放射線治療後の局所再発と関係していることが判った。

放射線治療前に限局性前立腺がんの男性247人の低酸素状態を測定し、6.6年間(中央値)追跡調査したところ(5年間の生化学的な無再発率は78%)、腫瘍内の酸素測定値が10mmHg未満であれば、早期の生化学的再発を予測できることが判った。
酸素測定部位において大きな腫瘍のある患者142人を特異的に調査した時、低酸素状態は早期の生化学的再発とより強い関連があることを発見した。
さらに、追跡期間中に生検が行われた70人の患者において、低酸素状態は再発を予測・同定した唯一の要因であった。

「前立腺がんが、低酸素状態であるならば、悪化もしくは、悪化するまでの期間が短縮され、治療後数年のうちに、がんが再発する傾向にある」と、研究者(Milosevic医師)は述べた。
しかし、前立腺がんの低酸素状態を厳密に測定することは簡単ではなく、広く日常臨床に普及させるためには、より適切で簡便な方法を探る必要がある。
前立腺がんのこの特性の発見は、低酸素状態あるいは低酸素の徴候を標的とする新しい治療概念の探索、ひいては患者の転帰の改善につながる可能性がある。

詳しくは「海外癌医療情報リファレンス」参照のこと  http://www.cancerit.jp/17349.html

2012年5月17日木曜日

ドセタキセル(プレドニゾロン併用)の症例評価


国立病院機構埼玉病院泌尿器科の金井邦光氏らは、
2008年12月から2012年3月に同科でドセタキセルとプレドニゾロン併用療法を2コース以上実施した去勢抵抗性前立腺がん患者、26症例を対象に解析評価を行った。
・ドセタキセル:70mg/m2(@3週間以上)
・プレドニゾロン:10mg/日を連日内服
・診断時患者背景:年齢の中央値=72歳(55~87歳)、
         PSA中央値=163(8~1165)、
         GS=8以上が73%、
         臨床病期:C=27%、D1=12%、D2=61%、
         初期治療で内分泌療法を選択した患者=88%
・ドセタキセル開始時:年齢中央値=76歳(59~88歳)、
         PSA中央値=33(3~2142)、
         痛み止めの使用=23%。
         エストラムスチン使用歴=31%。
・ドセタキセル投与回数:中央値=5(2~33)
・観察期間:中央値=11カ月(2~31カ月)
その結果、生存期間の中央値は19.5カ月で、1年生存率は63%だった。
ドセタキセル+プレドニゾロン療法によって、77%の患者でPSA値が低下した。
PSAが最低値に達するまでの期間中央値は3カ月(1~11カ月)だった。
PSA値の低下率:30%以上低下=61%
        50%以上低下=58%
        70%以上低下=35%
PSA値が50%以上低下したグループでは、生存期間の有意な延長が認められた。
治療開始時のPSA値<60 が生存期間を延長させる有意な予後予測因子だった。
副作用のため、38%の患者でドセタキセルの減量が必要となる一方、80歳以上の高齢者でも施行可能だった。


(詳細はがんナビ2012.5.17参照)
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/search/cancer/news/201205/524952.html&cnavi=1