2011年10月30日日曜日

ガイドライン改訂

このたび癌治療学会に参加して、知り得たことの一つに、「前立腺がんのガイドラインが近く改訂される」という情報がありました。
前立腺がんに特有の事情かも知れませんが、欧米で用いられているガイドライン(NCCN)と日本のそれとでは、治療体系(考え方)そのものが大きく食い違っています。
2003年のNCCNガイドライン制定以降、欧米では、ステージ・PSA・グリーソンスコア、三者の組合せにより、リスク分類を決定し、そのリスク分類に応じて治療法を選択するという、「リスク分類優先の治療体系」が採られて来ましたが、日本ではガイドライン制定が2006年であったにもかかわらず、NCCNの考え方が採択されず、「ステージ優先の治療体系」を継続しました。
その後、国内の医療者内部にも徐々にNCCNの考え方が浸透して行きましたが、ガイドラインの改訂はずるずると先送りされ、
(2008年に検診に関するガイドラインが増補されましたが、これは治療法とは無縁です)
その間、先進的な医療者は別としても、裾野を構成する医療者間では、ずっとステージを重視した治療法が採られてきました。
私が前立腺がんを患った2004年頃は、それこそ簡単すぎて何の役にも立たなかった国立がんセンターのHPが、2006年、がん情報サービスへの以降を契機に、その内容が一新されましたが、中身はやはりステージ重視の古い治療体系のままでした。
私が前立腺がんの治療を終えた2005年、「ひげの父さん」の名前で、HP「もしも”前立腺がん”を告げられたなら」
http://hige103.main.jp/soulful-world/guidebook/sheet000.htm
を立上げ、NCCNのガイドラインに基づく「リスク分類優先の治療体系」を紹介してきましたが、
治療法の解説サイトとしては、世界的なエビデンスがあるにも関わらず、国内では「異端」の様相を呈していました。
(「泌尿器科医に読ませたい」とおっしゃってくださった先生もおられましたが)
それが、現在検討中の新しいガイドラインでは、「リスク分類に応じた治療体系」を採用することになるだろうとのこと。
実際のガイドラインを見るまでは、まだまだ安心できないのですが、ガイドラインの内容が変われば、当然、がん情報センターのHPも変わるでしょうし、それに続いて、他のサイトや解説書の記載も変わっていくのでしょうから、やがて私のHPも「異端」からの脱出を果たす日も近いかと思われます。
それはそれでありがたい話ではあるのですが、いかんせん、待つ時間が長すぎます!6年ですよ、6年!
ドラッグ・ラグという言葉がありますが、これは完全にガイドライン・ラグですね。

2011年10月7日金曜日

アルファラディンのフェーズ3臨床試験結果

先にこの”MEMO”の中で、アルファラディン(Alpharadin:塩化ラジウム223)が
フェーズ3臨床試験中であることをお伝えしましたが、
http://higepapa.blogspot.com/2010/06/223alpharadin-asco2010-89-223-89.html
このほど、そのフェーズ3臨床試験の結果が判明しました。
(2011/9/23 EMCC・ストックホルム)

2個以上の骨転移を有する去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)患者922例に対し、
アルファラディンを投与する群と投与しない(プラセボ投与)群に分けて、
比較試験を行ったところ、全生存期間(OS)の中央値は、
プラセボ群が11.2カ月だったのに対してアルファラディン群は14カ月で、
アルファラディン群の方がOSを有意に延長していた。

骨関連事象(SRE)の発祥までの期間も、プラセボ群8.4カ月に対し、
アルファラディン群13.6カ月で、これもアルファラディン群の方が有意に延長していた。

アルファラディンは現在、米食品医薬品局(FDA)から優先承認審査(ファストトラック)の対象として認められているので、認可が下りるのも、さほど遠い話ではなさそうです。
米国で承認されてから、日本で承認されるまでの期間がいつも長くていやになるんですが・・・
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/sp/esmo2011/201109/521698.html&cnavi=1

デノスマブの適応拡大

デノスマブ(denosumab)は、2010年11月、骨転移を有する患者の骨関連事象の予防を目的としてFDAの承認を受けていたが、このたび、骨転移がなくてホルモン療法を受けている前立腺癌患者の骨量減少予防にも、その適応が拡大された。

デノスマブの骨量減少に対する影響を偽薬と比較した無作為化フェーズ3試験で得られた結果に基づくもの。
2年経過時点の腰椎の骨密度を比較したところ、偽薬群に比べデノスマブ群のほうが5.6%高かった。
3年経過時点では、両群間の差は7.9%に拡大しており、脊椎骨折の相対リスク減少は62%になった。