2016年3月24日木曜日

特筆すべき薬物療法(20年間で)

ここ20年ほどの間で(1990年代半ば以降で)特筆すべき薬物療法が3つある。

①グリベック(一般名イマチニブ)は、ある特定の白血病の原因になる異常な酵素を標的にする薬剤だ。この薬のおかげで米国ではこの白血病による死亡件数が半分以上減り、年間で1000件を下回るようになった。

②ハーセプチン(一般名トラスツズマブ)は主に乳がんの治療に用いられる薬剤で、細胞の増殖を促す特定の受容体に作用する。乳がん患者のうち15%から20%はこの特定の受容体が多いがんだとされている。2014年の研究によると、乳がんの10年生存率は75%から84%に上昇した。この薬剤は年間で米国の女性を数千人規模で救っている。

③ヤーボイ(一般名イピリムマブ)は進行性黒色腫を攻撃する免疫細胞を増やす作用がある。がん専門医はこの効果を称賛している。進行性黒色腫の5年生存率はこの薬剤を用いなければ5%にも満たないが、この薬剤を投与すれば20%台になる。治療は不快感を伴うが、これで完治する患者もいる。

4番目の画期的な治療法になるかもしれないのは、同じく免疫療法に用いられるキートルーダ(一般名ペンブロリズマブ)かもしれない。この薬剤がもっと早くできておれば、皮膚がんが他の部位にも転移したカーター元大統領の治療に役立った可能性もある。

メルビン・コナー博士(エモリー大学 人類学部&神経科学・行動生物学プログラム教授)
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ) 2016年03月23日 寄稿文より抜粋