2009年12月28日月曜日

間欠療法と持続療法のいずれが有利か

(私自身の「掲示板」への書き込みの控え)

ガイドライン(06年)では、「有用性についての結論は出ていない」とされています。 
→エビデンスの実証がないかぎりガイドラインには反映されませんから、ガイドラインというものはそもそも保守的なんですね。

しかし、間欠的内分泌療法は、海外ではかなり以前から普及しています。
副作用の軽減・治療費の軽減く加え、安全であることも認知されていましたが、
国内では、その採用には消極的な医療機関がほとんどでした。

しかし、今年、泌尿器の専門雑誌「Urology View」Vol.7 に、千葉医療センターにおける臨床試験の結果が報告がなされています。
PSA非再燃率の比較試験が行われ、間欠療法のほうが、有意にすぐれているという結論です。
(例:75ヶ月経過時点のPSA非再燃率は、間欠投与85%に対し、持続投与60%)

「がんサポート情報センター」
http://www.gsic.jp/cancer/cc_14/index.html
では、東京厚生年金病院の赤倉先生が、間欠療法についての解説をなさっていたので、
こちらもご覧になってみてはいかがでしょう。

2009年12月17日木曜日

PSA検診

PSA検診をすると受診者の約8%がPSA値4を超えるが、
生検などで癌が見つかるのは全体の1%程度。(←日経メディカル:赤倉先生)


2009年11月27日金曜日

膣トリコモナス症が致死的な前立腺癌のリスクを高める

日経メディカル(2009. 9. 15)

 一般的な性感染症である膣トリコモナス症が、悪性度が高く致死的な前立腺癌のリスクをかなり高めるようだ。米ハーバード大学パブリックヘルス校のLorelei Mucci氏らの研究結果が、9月9日付けの Journal of the National Cancer Institute誌電子版に掲載された。

 最近の研究では、膣トリコモナス抗体の存在が、その後の前立腺癌の発症に関連することが分かってきている。また、この研究チームも以前、同抗体の存在が前立腺癌の発症と死亡に関連することを確認している。

 今回の研究では、673人の前立腺癌患者について、診断の平均10年前に採取された血液サンプルと、前立腺癌ではない 673人の男性の血液サンプルについて、血清中の膣トリコモナス抗体の有無を調べた。

 膣トリコモナス抗体が陽性の場合、前立腺癌のリスクは1.23倍になったが、統計的に有意ではなかった。ところが、同抗体が陽性の場合、前立腺外に広がった前立腺癌の発症リスクは2.17 倍、最終的に骨転移へと進行する前立腺癌の発症あるいは前立腺癌による死亡リスクが2.69倍になった。

 膣トリコモナス症は、抗生物質で容易に治療可能だが、男性の場合ほとんど症状がないうえに、女性と比べて検出が困難だ。「今回の研究結果が大規模な前向き研究で確認されれば、膣トリコモナス症の予防と治療が、悪性度の高い前立腺癌の、数少ない修正可能なリスク要因といえるかもしれない」と、Mucci氏は語っている。

2009年11月14日土曜日

PSA値は副甲状腺ホルモンでも上昇

「前立腺生検は必ずしも必要とは限らない」

ウィンストンセーラム、ノースカロライナ-ウェイクフォレスト大学医学部の研究者とウィスコンシン-マディソンのウェイクフォーレスト医科大学と大学の研究者は、
前立腺特異抗原(PSA)の値の上昇は、体内の正常なホルモン活動によって引き起こされている可能性があり、必ずしも前立腺生検の必要性と結び付かないことを発見しました。
PSA値の上昇は、これまで前立腺癌の潜在的兆候を示すものとして、PSA検診の普及にも貢献していました。
しかしながら、研究者によると、副甲状腺ホルモン(血中カルシウム濃度を調節するために作り出される物質)が、前立腺癌と無関係な、いわゆる健康な男性のPSA値を押し上げている可能性があることがわかってきました。
これらの"非がん"PSA上昇が、多くの男性を不必要な生検に巻き込み、それがまた多くの不必要な治療につながってしまう恐れがあります。
「PSA値は前立腺がんだけではなく、前立腺に関する他の要因にも左右されます」と、研究責任者ゲーリーG.シュワルツ博士(MPH医科大学の癌生物学および疫学と予防の準教授)は言っています。

炎症やその他の要因でPSA値が高くなることもあります。PSA値が上がった場合、通常生検に回されることが多い。
問題は、男性の年齢にも寄りますが、しばしば、臨床的にはほとんど意味のない微小な前立腺癌が見つかってしまうことです。
臨床的に意味のないこれらのがんは、もし生検を受けなかったとしても、致命的ながんに浸展することはありません。
しかしながら、PSAのスクリーニングは普及してきており、より多くの男性に生検が施されています。
前立腺癌があると言われた男性の多くは、治療の必要がないにもかかわらず、治療を受けてしまうわけです。
現実には、未治療のままにしておいて致命的になりそうながんというのは、前立腺がんの生検診断において、6例中1例ぐらいしかありません。
前立腺生検率が高いため、過剰な治療が行われやすく、それが、勃起不全や尿失禁などの副作用の増加につながっているのが現状です。
シュワルツ氏はこのように述べている。

ハルシオンG.スキナー博士、MPH、とウィスコンシン大学のマディソンの共同執筆による研究は、Cancer Epidemiology"癌疫学"(Biomarkers&Prevention)の最新号に掲載されています。
研究者たちは、国民健康栄養調査2005-2006に参加した1273人から、現在感染症や前立腺の炎症がない人、過去1カ月で前立腺生検を受けていない人、調査時点で前立腺がん歴のない人を抽出しデータを分析した。
PSA値の増減には・・・年齢が高いほど増加傾向、黒人男性では増加傾向、肥満男性では低下傾向・・・などの傾向があるため、年齢、人種、肥満による影響を調整した結果、
血液中の副甲状腺ホルモン値が高ければ高いほど、PSAがより高い値を示す傾向があることが判明した。
副甲状腺レベルが通常範囲内の上位に位置する男性では、PSA値は43%増加していました。これらの多くは、泌尿器科医が生検をお勧めする範囲に含まれると言えるでしょう。

また、今回の発見は黒人男性にとって特に重要である、とスキナーが付け加えた。
副甲状腺ホルモンのレベルが高いと言われているのは黒人男性では約20%、白人男性では約10%である。
この差が、黒人のほうが、生検を勧められて無駄な治療につながる可能性が高いということだ、と述べた。

この発見は、医療者が前立腺がんのスクリーニングに際し、生検を必要とするのか、そうでないのかを選別するのに役立つはずだ。とシュワルツ氏は言っている。
前立腺癌よりむしろ副甲状腺ホルモン値が高いために、PSAが上昇している男性がたくさん居るはず。

副甲状腺ホルモンは、甲状腺内にある4つの小いさな腺、副甲状腺細胞によって作られています。
副甲状腺ホルモンは主として血液中のカルシウム濃度を制御しますが、最近の研究では、副甲状腺ホルモンが前立腺がん細胞の増殖を促進することも示されている。
シュワルツ氏の研究とスキナーは、前立腺がんでない男性においても、副甲状腺ホルモンが前立腺細胞の成長をうながすことを、初めて示唆しました。

この研究は、国立衛生研究所とアメリカがん協会からの助成金によって賄われました。


Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention誌11月号(2009;8,11,2869-2873)
米ウェイクフォーレスト医科大学のGary G. Schwartz 氏らの研究結果

PSA値の上昇は、前立腺の異常だけではなく、副甲状腺ホルモンの増加とも関連している。
血液中の副甲状腺ホルモン値とカルシウム濃度が高いほど、PSA値も高くなる。
(副甲状腺ホルモンは血液中のカルシウム濃度を制御する働きを持つ。)

副甲状腺ホルモンのレベルが正常範囲高値の男性は、正常範囲低値の男性と比較して、PSA値が43%高かった。これは、多くの場合で泌尿器科医から前立腺生検を推薦されるレベルである。

最近の研究では、副甲状腺ホルモンが前立腺の癌細胞の増殖を促進させることも示されているが、
この研究は、副甲状腺ホルモンが前立腺癌でない男性においても前立腺細胞の成長を促すことを初めて示した。

2009年11月13日金曜日

樹状細胞ワクチン療法

(レーベンスクラフト最新医療情報2009/3/27)

バイオベンチャーのテラは免疫機能の司令塔である樹状細胞の働きを高め、がんを狙い撃ちする治療法を医療機関に提供している。

この「樹状細胞ワクチン療法」は副作用が少なく再発や転移したがんにも効果を示すという。従来の治療法では治せなかったがん患者を救おうと次世代型の治療法確立を視野に入れている。

樹状細胞は体内の異物を食べて特徴を認識、リンパ球に異物の特徴を覚え込ませる。これによりリンパ球は異物に照準を絞って攻撃できる。テラの治療法では、がんに細胞に特有なたんぱく質の断片を再現した人工抗原「WT1ペプチド」を樹状細胞に与え、リンパ球への司令を出させる。

大阪大学が持つ人工抗原に関する基礎技術を導入した。阪大はがん細胞が増殖したり生存したりするのに必要なたんぱく質断片を発見、多様ながんに使えるWT1ペプチドを開発した。従来の人工抗原はがんの種類によっては使えなかった。

樹状細胞ワクチン療法を提供しているのは、信州大学医学部付属病院などテラが契約した全国で約10ヶ所の医療機関。患者の血液から単球と呼ぶ細胞を採取・培養して樹状細胞を作製する。

そこに人工抗原を入れ患者に注射。治療は4ヶ月ほどで終わるのが特徴だ。東大発の培養技術に阪大の人工抗原を組み合わせることにより、新たながんの免疫療法を生み出した。

免疫療法で主流の「活性リンパ球療法」はリンパ球を増殖させて体内に戻す。がん細胞を攻撃する「兵隊」を増やす手法だが、司令塔の樹状細胞が標的であるがん細胞の特徴をとらえていないために的確な命令が下せず、がん細胞を見逃してしまう恐れがある。

がん治療には外科手術や放射線治療など様々な手法があるとはいえ、転移したり、抗がん剤に耐性を持ったりしたがんの根治は難しい。樹状細胞ワクチン療法は、68万人いると言われているがん難民に新たな治療法を提供出来る可能性がある。

現時点でテラの樹状細胞ワクチン療法は臨床試験(治験)を実施しておらず、薬事法に基づく承認も受けていないため、保険適用外の自由診療として提供される。

樹状細胞を活用した治療法の歴史は浅く、エビデンス(科学的根拠)の蓄積も足りないのが実情。同社の累計症例数は1000件を超えているが、テラ以外では世界でも2000~3000件にすぎず、実績の積み上げが課題になる。

2009年11月7日土曜日

粒子線治療装置を小型化(従来の10分の1)

(産経新聞 2009/10/13)

患部を切らずにがん細胞を破壊する「粒子線治療」で使われる装置を従来の10分の1程度に小型化する技術の開発に、日本原子力研究開発機構光医療研究連携センター(京都府木津川市)の福田祐仁研究副主幹らの研究チームが成功した。現在は300万円前後かかっている粒子線による治療費も、新技術導入で約30万円に抑えられる見通しという。成果は13日付の米物理学会誌フィジカル・レビュー・レターズ(電子版)で発表される。

粒子線治療は高速で照射する炭素などのイオンが身体の表面ではあまり作用せず、がん細胞を重点的に破壊する効果がある。現在使われている粒子線治療装置は大型の加速器を使っているため、体育館サイズの施設が必要で治療費も高額となっている。

福田さんらは特殊なノズルを使って、真空中に高圧の二酸化炭素・ヘリウム混合ガスを噴射し、横からレーザー光を当てる手法で、炭素イオンなどを加速させる手法を開発した。この技術を使えば大型の加速器が不要になり、治療装置は教室サイズに小さくできるという。福田さんは「7年後を目標に試作機を完成させ、実用化のメドをつけたい」と話している。

膠芽腫にウイルス療法が効果的

もっとも悪性度が高い脳腫瘍(しゅよう)「膠芽腫(こうがしゅ)」の増殖をウイルスを利用して抑える方法を、東京大のチームが見つけた

膠芽腫は脳腫瘍の約1割を占め、放射線や抗がん剤でたたいてもやがて再発し、患者の7割が診断から2年以内に亡くなるという。東京大医学系研究科博士課程4年の生島弘彬さんと東京大病院の藤堂具紀特任教授は、再発の理由は脳腫瘍のもとになる「がん幹細胞」が生き残るためだと考え、脳腫瘍患者から見つかった細胞増殖因子「TGFベータ」に着目した。その働きを抑える阻害剤を膠芽腫患者のがん幹細胞に作用させたところ、増殖が抑えられた。

ドイツの企業が脳腫瘍患者の脳にTGFベータ阻害剤を直接注入する臨床試験を実施中で、生島さんらは今回そのメカニズムを解明した。

チームの宮園浩平教授(分子病理学)は「がん幹細胞を阻害剤で無力化させ、残ったがん細胞を放射線や抗がん剤でたたくという組み合わせで、膠芽腫の治療が可能になるかもしれない。他のがんにも有効か今後調べたい」と話す。

膠芽腫は、脳腫瘍の約4分の1を占める神経膠腫(グリオーマ)のうち最も悪性とされ、年間10万人に1人の割合で発症。手術後、放射線治療と化学療法をしても平均余命は診断から1年程度で、特に再発した場合は有効な治療法はなかった。

藤堂特任教授らのウイルス療法は、口唇ヘルペスの原因となる単純ヘルペスウイルス1型を利用、3遺伝子を改変し、がん細胞だけで増殖するようにした。このウイルスをがん細胞に感染させると増殖し、感染したがん細胞を死滅させ、増殖したウイルスはさらに周囲のがん細胞に感染、次々と死滅させる。正常細胞に感染しても増殖しない。
ウイルス療法は、放射線治療や抗がん剤による化学療法と並び、新たな治療の選択肢になるのではないかとしている。

ウイルス療法

さまざまな病気を引き起こすウイルスだが,うまく手なずけるとがんを効果的に攻撃する新しい治療法に道が開ける。腫瘍細胞だけで増殖するウイルスを利用するウイルス療法(virotherapy)だ。

がん患者が偶然ウイルスに感染し、そのウイルス疾患が軽快するとともにがんも縮小するということが、古くは1900年代の初めに報告されていた。その後の研究で、単純ヘルペスウイルスをはじめとするいくつかのウイルスにはがん細胞を殺す作用があることが発見され、さらに研究が進むにつれ、それは、“免疫”にも関係していることが判ってきた。
ウイルス感染が起こったことによりヒトの体中で免疫が活性化し、がん細胞に対する免疫も高まり、直接あるいは間接的にがん細胞を壊したり食べたりしてしまうという。

ウイルスをがん細胞だけに選択的に感染させて殺す臨床試験が進んでいる。現在,がん細胞には効率よく感染するが正常細胞には影響を与えないようなウイルス(特にアデノウイルス)を開発するため,さまざまな方法が試されている。

ウイルス療法の標的指向性を高めるには,大きく分けて2つのアプローチがある。1つは「遺伝子導入の標的化」で,がん細胞に特異的に感染(遺伝子導入)できるようにウイルスを改良する。もう1つは「転写活性の標的化」で,ウイルスが運ぶ遺伝子ががん細胞でのみ活性化される(転写される)ように改良する。

従来の化学療法剤に対する感受性を高めるような遺伝子をがん細胞に選択的に導入するという考え方や,ある種の酵素を作り出す遺伝子をウイルスに組み込んでがん細胞で発現させ,その酵素によって無害な化学物質を強い毒性を発揮する化学療法剤に変えるといったやり方もある。

ウイルスに蛍光物質や放射性核種の標識をつけて利用することも考えられている。これを投与するとがん細胞のところに集まってくる。将来は微小ながんの転移巣を検出する画像診断が可能になるだろう。

2009年11月6日金曜日

運動は前立腺がんの発症リスクを低下させる

スウェーデンのカロリンスカ研究所のNicola Orsini氏らによる研究結果(2009/10/27)によると、
デスクワーク中心の男性は、身体をよく動かす仕事に就く人よりも、前立腺癌の発症リスクが約3割も高い。
毎日1時間以上のウオーキングかサイクリングをした男性は、40分以下の男性に比べて、前立腺ガンのリスクが14%低く、
ウオーキングかサイクリングの時間が 30分増加するごとに、前立腺癌リスクが7%(進行癌のリスクが12%)低くなる。
仕事中に椅子に座って過ごす時間をできるだけ減らすか、1日に30分間以上のウオーキングかサイクリングをすることは、
前立腺癌の予防に役立つだろうと、この研究者は述べている。

2009年11月4日水曜日

前立腺がん治療薬MDV3100

(10/29 がんナビ記事より)
アステラス製薬は10月28日、米Medivation社と同社の前立腺がん治療薬MDV3100について、全世界における開発・商業化に関する契約を締結したと発表した。

 MDV3100は第二世代の経口抗アンドロゲン剤で、ドセタキセルによる化学療法の治療歴を有する去勢抵抗性前立腺がん患者を対象とした国際フェーズ3臨床試験AFFIRMが現在行われている。日本における開発については検討中だ。

 MDV3100は前臨床試験で、最も使われている抗アンドロゲン剤のビカルタミドよりも優れたアンドロゲン受容体経路の抑制作用を示したという。また、MDV3100はビカルタミド抵抗性がんで、アンドロゲン受容体へのテストステロン結合阻害、前立腺がん細胞核へのアンドロゲン受容体の転移阻害、DNAへの結合阻害によって、がん細胞の増殖抑制、細胞死を誘導した。

 契約に基づいて両社は、今後、後期及び初期ステージの前立腺がんを対象に、追加試験を含むMDV3100の広範囲な開発プログラムを共同で進める。米国ではMDV3100の商業化は両社共同で行うが、米国以外の地域についてはアステラス製薬が独占的に開発・販売を行う。

2009年10月13日火曜日

プロベンジ(免疫療法)により転移性前立腺癌の生存率が改善

(NCI Cancer Bulletin 2009/5/5)
先週シカゴで行われた米国泌尿器科学会年次総会において、転移性前立腺癌の男性で、研究中の免疫療法を受けた場合はプラセボ投与に比べ全生存期間が約4カ月延長したことが報告された。これは、sipuleucel-T(Provenge〔プロベンジ〕)の第3相ランダム化二重盲検試験であるIMPACT試験の結果に基づいたものである。Sipuleucel-Tとは患者の血中から抗原提示細胞を分離し、腫瘍特異的な免疫反応を活性化させ、再度患者に注入する免疫療法である。試験に参加した500人以上の患者は無症候性あるいはわずかな症状のみの転移性アンドロゲン非依存性前立腺癌であった。免疫療法群では、sipuleucel-Tが1カ月に3回に分けて投与され、生存期間の中央値はプラセボ群に比べて22.5%改善した(25.8カ月対21.7カ月)。Sipuleucel-Tのより早期の2つの試験でもそうであったように、無増悪生存期間、つまり腫瘍の増殖が認められない状態で生存できる期間については、統計的に有意な改善はみられなかった。試験の主導者のひとりである、南カリフォルニア大学のDr. David Penson氏によると、有害事象は軽度でわずかであるという。Sipuleucel-T投与の翌日に最も多く見られた事象としては、発熱、悪寒および頭痛があったが、これらの副作用は通常1~2日で解消した。全体として、免疫療法群では患者の約99%が3度の投与をすべて受けた。
生存期間に関するデータは、特に年齢、治療前PSA値、および骨転移の程度などによるサブグループ分析のすべてにおいて「極めて一貫していた」とPenson氏は説明している。「これは非常に心強い結果である」と彼は言う。

デュタステリド&フィナステリド:前立腺がん罹患予防に有効

(NCI Cancer Bulletin 2009/5/5)
4月27日シカゴで行われた米国泌尿器科学会年次総会において、dutasteride〔デュタステリド〕(Avodart〔アヴォダート〕)は、前立腺癌リスクが高い男性の罹患予防に役立つ可能性があると、大規模国際臨床試験の初期データで示されたことが報告された。
REDUCEと呼ばれるこの試験では、前立腺特異抗原(PSA)値が高い前立腺癌高リスク男性8,200人に対して、デュタステリド治療とプラセボを比較した。全員、試験参加前6カ月以内に受けた前立腺生検で陰性であった。2年後および4年後に行った追跡生検により、デュタステリド群ではプラセボ群に比べ、前立腺癌リスクが23%減少したことが明らかになった。
また、デュタステリド群では高悪性度の前立腺癌リスクがプラセボ群と同程度であることも明らかになった。「これは、われわれに大きな希望を与えてくれる知見である」と、主任研究者であるワシントン大学医学部のDr. Gerald Andriole氏は声明の中で述べている。本研究はデュタステリドの製造元であるグラクソスミスクライン社による助成を受けている。
本研究結果と類似したものに、以前行われたNCI主導による前立腺癌予防試験(Prostate Cancer Prevention Trial: PCPT)があるが、これはフィナステリド(Proscar)という同系統の薬剤を用いた前立腺癌予防試験である。PCPTによる初期の知見は、フィナステリドは前立腺癌リスクを減少させる一方、より悪性度の高い癌においては発生リスクを増加させる可能性を示唆するものであった。NCIの研究者らにより行われたその後の調査では、フィナステリドが高悪性度の癌の発生を助長することはなく、実際にはそのリスクを減少させることが示された。フィナステリドおよびデュタステリドは共に前立腺肥大症の治療薬として承認されている。

2009年7月30日木曜日

前立腺がん治療法の選択は医師の専門分野に影響される

「日経メディカルオンライン」2007. 7. 23 より引用

[リポート]ASCO 2007 [07 Summer]

 患者の局所前立腺がんの治療法選択において、最初にコンタクトした医師の専門分野が大きな影響を及ぼしていることが、米国立がん研究所(NCI)サーベイランス・疫学・最終結果プログラムのデータ分析で明らかになった。

 局所前立腺がんの治療オプションとしては、前立腺切除術、放射線療法、ホルモン療法、待機管理(watchful waiting)があり、治療効果とともにそれぞれに有害作用をもたらすリスクが存在する。

 研究では、1994~2002年の間に局所前立腺がんと診断された65歳以上の男性8万5088例のデータを解析した結果、医師の専門性と患者の治療法選択の間に強い相関のあることが明らかになった。

 65~69歳の男性では、泌尿器科医に診断評価された場合には70%が前立腺切除術を選択、75歳以上では泌尿器科医のみに評価された場合には、83(75~79歳)~97%(80歳以上)が待機管理かホルモン療法を選択していた。

 これに対して、年齢に関係なく全男性において、泌尿器科医と放射線腫瘍専門医の両方に評価されたケースでは、放射線療法の選択頻度が高く、65~69歳で78%、70歳以上85%であった。泌尿器科医と臨床腫瘍医の両方に評価されたケースでは、また異なる傾向が認められた。

 前立腺がん患者の大部分は、最初に泌尿器科医に診察を受けるケースが多いが、報告者の米Memorial SloanKettering Cancer Center(ニューヨーク)泌尿器科のThomas L. Jang氏は「現状では、どのような患者が泌尿器科医にかかるべきか確立されたガイドラインはない。しかし今回の知見からは、前立腺患者は特定の治療法を選択する前に、あらゆる情報にアクセルすることが好ましいことが示唆される」と述べている。「早期前立腺がん治療の優位性は確立しておらず、患者は最初に医相談した医師の勧めに従いやすい。患者は、バイアスのかかっていない、バランスのとれた治療オプションを選択することが重要」としている。

2009年7月22日水曜日

アスピリンと大腸がん死亡率

アスピリン(NSAIDs)はシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)の活性を阻害する薬剤のひとつですが、
その服用者に大腸がんや乳がんなどの発症率が低いことがすでに知られています。

大腸がん、乳がん、胃がん、食道がん、肺がん、肝細胞がん、膵がん、頭頚部の扁平上皮がんなどでは、
ヒト癌細胞でのCOX-2の発現増強が見られますが、どのがんに対しどの程度の効果があるかという
定量的な解析はあまり進んでいません。

 多くのNSAIDsはがん発生の予防に必要なCOX-2の阻害に留まらず、COX-1も阻害してしまうため、それに
 関連して種々の副作用、特に消化管障害を引き起こす危険性があります。そのためにCOX-2のみを選択的に
 阻害する薬剤も開発されていますが、これにも心血管障害などの副作用があり、やはり注意が必要です。

このたび、マサチューセッツ総合病院のAndrew T.Chan氏は、大腸がんとアスピリンの関係について、
後向きの分析調査を行い、大腸がんと診断された後にアスピリンを定期的に服用すると、
死亡率の大幅な低下がみられることを、2009年の米国消化器学会(シカゴ)で発表しました。

ステージ1~3の大腸がん患者1279人について、2008年まで平均11.8年間追跡した結果。
(この間に480人が死亡、うち222人が大腸がんによる死亡)

・診断前から定期的にアスピリンを服用していた場合は、その後の服用の有無にかかわらず、
 大腸がんによる死亡率に差はみられなかった。
・診断後定期的にアスピリンを服用した場合、死亡率は29%低下。
 その内、診断前にアスピリンを服用していなかった患者に限定すると、死亡率は47%低下。
 さらに、COX-2の過剰発現が認められた患者に限定すれば、死亡率は61%低下。

結論としては、アスピリンの常用によりCOX-2を過剰発現する大腸癌のリスクは低下するが、
COX-2発現の弱いまたは認められない大腸癌のリスク低下はあまり期待できないようです。

2009年5月25日月曜日

5-アルファ還元酵素阻害薬(プロペシア、アヴォダート)

男性用育毛剤として用いられている5-アルファ還元酵素阻害薬フィナステリド(プロペシア)が前立腺癌リスクを
減少させる一方、悪性度の高い癌においてもそのリスクを減少させることが、すでに、NCIより報告されているが、
(当初発生リスクを増加させる可能性を示唆するものであったが、その後の調査でこのように変更された)
このたびシカゴで行われた米国泌尿器科学会年次総会(2009/4/27)において、
フィナステリドと同系列の薬剤 dutasteride:デュタステリド(アヴォダート)は、
高リスク前立腺癌患者の罹患予防に役立つ可能性があることが明らかになった。
「これは、われわれに大きな希望を与えてくれる知見である」と、主任研究者(Dr.Gerald Andriole氏:ワシントン大)は
述べている。ただしこの研究はデュタステリドの製造元グラクソスミスクライン社の助成を受けている。

2009年5月16日土曜日

Provenge

Provengeとは、ホルモン非応性前立腺がんに対し期待が持たれている活性化免疫細胞製剤です。
AUA(米国泌尿器科学会議:2009/4/28)における発表によると、
このたび、ホルモン非応性前立腺がん患者を対象とした第3相臨床試験において良好な結果が確認されたとのこと。
”生存期間は4.1カ月延長。3年生存率は38%の改善。死亡リスクは22.5%低下。安全性にも特に問題なし。”
4ヵ月を長いと見るか、短いと見るか、判断は分かれると思いますが、
前立腺がんのために開発された薬というのは、もうここ10数年登場していないのではないでしょうか?
前立腺がんでは免疫系の薬というのも初めてですし、そういう意味では画期的ですよね。

治験の担当医のコメントは次の通り。
「これらの結果は、進行前立腺がん患者におけるProvengeの臨床的価値を確実なものにした。
その上、がんと闘うため患者自身の免疫システムを活用するという長年の希望が実証された」

ここまで来るといずれ近い内にFDAでも承認されるでしょうが、問題はそこから先ですね。
早期承認が望まれますが、日本での承認はこれまでのペースでは早くても数年先になるでしょう。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/search/cancer/news/200905/510580.html

2009年4月27日月曜日

性機能温存にPDE阻害薬の術後早期投与が有効

全摘術での性機能温存は難しく、両側神経温存術でも性機能温存は半数強にとどまるが、
PDE阻害薬(PDE5i:バイアグラもこの1種)の術後早期投与が
補助療法として有効である可能性が示された。

両側神経温存手術を行った患者を対象にPDE5i内服群と非内服群に分け、
性機能を評価するEPICスコアを用いて比較追跡を行ったところ、
概ね次のような結果が得られた。

     術前  術後すぐ 術後3年
内服群   40   1桁   30
非内服群  30   1桁   10

PDE5iは前立腺全摘除後の性機能回復のリハビリテーションとして有効であり、
かつ術後早期からの投与がより効果的であると考えられる。
東北大では、手術直後からPDE5iの内服を開始、初めの1ヶ月は2回/週、あとは1回/週としている。

2009年4月10日金曜日

前立腺がん:照射線量はリスクによって調節

NCCNの第13回臨床ガイドライン(2008年)で、前立腺がん放射線治療ガイドラインの改訂版が発表された。

低リスク前立腺がんに対する線量は70~79Gyで十分であり,リンパ節には照射しなくてもよい。また,アンドロゲン抑制療法も必要ない。
前立腺の位置は膀胱や腸の充満状態により最大2cmは変化するため,75Gyを超える線量では,照射ごとに位置確認をする特別な作業が必要。

中~高リスク患者では,75~80Gyの照射が必要で,骨盤リンパ節への照射も同時に検討すべきで、
照射療法後4~6か月間のアジュバントアンドロゲン抑制療法の併用を考慮すべきである。

標的臓器の移動には照射ごとの移動と1回の照射中の移動があり,照射中の臓器移動のほうが制御困難である。
照射中の標的臓器の移動は,患者の呼吸や心臓の鼓動,腸運動,嚥下,くしゃみなどの動作により発生する。
高線量を照射する際には,直腸などの近傍組織に有害な影響を与えないため,標的の移動制御はより重要となる。

2009年4月7日火曜日

グリソンスコアと生命危険度

(PDQより抜粋要約)
PSA検査の普及前に限局性前立腺癌と診断され、その後、注意深い経過観察もしくはホルモン療法により、
20年に渡り追跡観察された患者767人の、集団ベースコホート研究調査の長期追跡結果(米国)は次のとおり。

グリソンスコア  前立腺癌特異的死亡率(1000人当たり)
  2~4        6人
   5         12人
   6         30人
   7         65人
  8~10       121人

高分化がん(GS2~4)に対する低分化がん(GS8~10)の死亡率(生命危険度)は約20倍。

2009年3月26日木曜日

SBRT(体幹部定位照射)による寡分割照射

”限局前立腺がんの治療法として、体幹部定位照射(SBRT)による寡分割照射(5回)が有望”であるというニュースが、
日経メディカルやがんナビなどのサイトで、報道されました。(2009/3-19)
http://cancernavi.nikkeibp.co.jp/news/5_7.html

そのあとすぐ、もっと詳しい訳が「海外癌医療情報レファランス」に掲載されています。
http://www.cancerit.jp/xoops/modules/pubmed/index.php?page=article&storyid=451

日経メディカルとがんナビは姉妹サイトでもあるので、内容はほぼ同じ、某フリーの医学ライターの記事が元になっているようですが、これを読むと、
前立腺がんを「1回の照射線量を増やし、たった5日間で治療できる」時代が、もうそこまで来ているかのように感じてしまうのですが、
「海外癌医療情報レファランス」の訳文をよく読むと、だいぶニュアンスが異なりますね。
翻訳・要約の仕方には、どうしても、ライターの主観や先入観、時には誤解も混じりますから、読み手としても注意が必要だと思います。
上記2例の訳を比較参照しながら、これをより判りやすく、かつできるだけ間違いのないように要約してみました。

41例の低リスク前立腺患者に、サイバーナイフ(画像誘導装置:SBRT)で36.25 Gy(7.25Gyx5分割)を照射。
6カ月以上の追跡調査の結果、直腸・膀胱には早期・晩期とも"4度"の放射線障害は認めなかった。
"3度"の晩期放射線障害は膀胱で2例あったが、直腸では発生しなかった。
「隔日5回照射」と「5日間連続照射」を比較したところ、重篤な直腸障害はそれぞれ、
0%、38%となり、隔日照射のほうが副作用が少なかった。


つまり、5日間連続照射は、重篤な直腸障害が4割近くにも達し、まったく話にならないということです。

軽度のPSA上昇(中央値0.4)が治療後18カ月後(中央値)に12例(29%)で認められたが、
最終追跡時にPSA再発を来たした症例はなかった。
32例の12カ月以上の追跡で25例(78%)が、治療後3年までに測定底値0.4までのPSA低下が観察された。
前立腺がんに対する体幹部定位照射の副作用とPSAの反応は有望であり、今後さらなる症例の追加と経過観察が必要である。


詳細記事を見れば放射線晩期障害(後遺症)の内訳は、
 膀胱では1度:41%、2度:24%、3度:5%
 直腸では1度:33%、2度:15%
2度以上の障害というのはなんらかの対応が必要とされていますが、これはかなり大きな頻度ですね。
ちなみに、私が治療を受けたK大学病院のIMRT(2gyx39回)では、2度以上の直腸出血発生率は4%程度だと言われています。
この例は少ない方でしょうけど、他の施設でもIMRTで2度以上の直腸出血が10%を超えているところはないはずです。

「海外癌医療情報レファランス」の記事には、抄録訳者コメントならびに、別の医師からの批判文も掲載されています。
専門家としてちょっと理屈っぽいコメントも書かれていますが、要は、患者の安全を第一と考えるなら、
こうした実験は倫理的にも好ましくないというものです。

「早期前立腺がんへの5日間の体幹定位放射線治療で有望な結果」というような「がんナビ」等の記事タイトルは、
現時点においては極めて誤解を招きやすい危険な内容を含んでいるように思います。
これはまだ第II相臨床試験に過ぎないわけですが、その説明もありません。
「5日間」を「隔日5回照射」と表現を変えるならまだしも、こうしたサイトでの紹介は影響が大きいだけに残念ですね。
日本でも、民間病院でこうした先端治療機器を導入する病院が出てきましたが、
少々の副作用には目をつぶるという安易な治療を助長してしまう恐れもなきにしもあらず。
患者の立場としても、落ち着いた判断が必要で、副作用の恐れが高く安全性の裏づけに乏しい照射方式に、
安易に飛びつくべきではないでしょう。

2009年3月25日水曜日

定位放射線治療

現在の高精度放射線治療は、定位放射線治療(stereotactic radiotherapy:SRT)、
定位手術的照射(stereotactic radiosurgery、SRS)、強度変調放射腺治療(intensity
modulated radiotherapy:IMRT)へと進歩し、さらには病巣を追跡しながら照射する4次元照射、動体
追跡照射(real-time tumor-tracking radiotherapy)へと進化した。

脳腫瘍、肺癌などの治療は、かつて手術が第一選択であったが、今や定位放射線治療で手術と同等の
治療成績が得られるようになった。
定位放射線照射法とは「多軌道の回転照射あるいは多門照射を用いて、小病変に対して線量を集中的に
照射する方法で、照射野の中心精度が頭部では±1mm以内、体幹部では左右背腹が±5mm 以内、
頭尾が±10mm 以内のもの」と定義されている。

1951年にスウェーデンの脳外科医Lars Leksell が定位放射線治療(stereotactic radiosurgery )の
概念を提唱し、1968 年にカロリンスカ大学において、ガンマナイフ(201 個のコバルトからガンマ線を
集中させ、癌を手術と同様に1回で治療する装置)による治療が始まった。
これが契機となり、一般的な放射線治療器であるリニアックに改良を加え、X線の集中精度を高める照射方
法として発達したのが定位放射線治療(stereotactic radiotherapy:SRT)で、その手法は脳腫瘍にと
どまらず、頭頸部腫瘍、肺癌、肝臓癌、前立腺癌へと適用されるようになった。

この方法により、通常の照射方法では困難とされるような大線量を投与できることになり、腫瘍制御率
が大幅に改善された。一回の線量は一般に広く用いられてきた2Gyかつ週5回の通常分割照射と異なり
1回が3Gy〜35Gyと大きい。そのためBiological Effective Dose(BED、生物学的等価線量)に換算して
評価し、通常分割照射と比較する。
10Gy ×5〜6回、12Gy ×4〜5回、15Gy ×3〜4回では、いずれもBED 100Gy 以上となる。

abiraterone:(酢酸)アビラテロン

2008年のASCO(米国臨床腫瘍学会)では、再燃前立腺がんに対する有望な新薬アビラテロンが紹介された。
これまでのホルモン薬は脳下垂体の受容体をブロックして男性ホルモンの産出を止めたが、アビラテロンは、性ホルモンの合成に関与する酵素「CYP17」を選択的に阻害し、テストステロン(男性ホルモンの一種)の精巣や副腎での産生を抑制するまったく新しい薬だ。

東京慈恵会医科大学泌尿器科の穎川晋教授の解説によれば、 「アビラテロンは、ドセタキセル(商品名タキソテール)以来の期待できる薬です。従来のホルモン療法が効かない再燃前立腺がん患者への臨床試験では34人中22人、ドセタキセルが効かない再々燃前立腺がん患者でも、28人中10人でPSA値が50%以上低下した」とのこと。

米Cougar Biotechnology社は、2008年4月にフェーズ3(第3相)試験を開始している。
ホルモン耐性の転移性前立腺癌で、ドセタキセルベースの化学療法が無効となった患者を対象に、アビラテロンとプレドニゾンの併用と、プラセボとプレドニゾンの併用を比較する。
試験終了は2011年の予定。

これまでの臨床試験についてJournal of Clinical Oncology誌(2008/7/2)には、次のように書かれている。

・複数の被験者でPSA濃度が90パーセントも低下していることが示された。
・被験者の大部分で原発巣および転移巣のいずれも腫瘍が縮小していた。
・複数の試験参加者がこの薬剤を2年半服用し、良好に疾患をコントロールでき、
 副作用も少なかった。
・多くの患者が骨痛の緩和のために服用しているモルヒネをやめることができた。

「PSA値の低下や腫瘍の縮小は単なる薬理活性の証拠でしかない。患者と一般の人にとって重要なのは、生存期間の長さや生活の質の改善などを評価項目とした無作為に比較した臨床試験が必要なことである」
と米国がん協会はコメントしている。

2009年3月22日日曜日

がん転移の仕組

<米科学誌「キャンサー・セル」(電子版)に2009/3/3>

 慶応大学の河上裕教授と工藤千恵助教らは、がん細胞が転移する際に、免疫の働きを抑えて転移をしやすくしていることを発見した。新しい治療薬開発にもつながる成果。 研究チームはがん細胞で働く「Snail」という遺伝子に注目。この遺伝子が働くと細胞同士がくっつく力が弱まり、がんが転移しやすいことが知られている。マウスでこの遺伝子の働きを調べたところ、免疫反応に必要な細胞の働きを弱めるなど、がん細胞を体内の異物として認識されないようにして免疫から逃れたりしていた。

 この遺伝子が働かないようマウスを操作したところ、がん細胞の転移や増殖が抑えられたほか、免疫反応も活発になったという。

2009年3月18日水曜日

慢性骨髄性白血病に新薬2剤(ニロチニブ、ダサチニブ)

イマチニブ抵抗性の慢性骨髄性白血病(CML)に対する新薬2剤が、2009年3月相次いで発売された。

ニロチニブ(商品名:タシグナ・・・ノバルティスファーマ)は、経口投与可能な新規チロシンキナーゼ阻害剤。
対象疾患はイマチニブ抵抗性の慢性期または移行期の慢性骨髄性白血病。
国内フェーズ2試験では、イマチニブ抵抗性のCML患者の100%で血液学的完全寛解、69%に細胞遺伝学的完全寛解が得られた。

ダサチニブ(商品名:スプリセル・・・ブリストルマイヤーズ)も経口投与製剤で、5種類のチロシンキナーゼ/キナーゼファミリーに対する阻害剤。
対象疾患は慢性期、移行期、急性期のイマチニブ抵抗性慢性骨髄性白血病と
再発または難治性のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病。

2009年3月14日土曜日

樹状細胞免疫療法

(2009年2月20日 読売新聞)
がんワクチン療法」とは、がんを攻撃対象だとわかるような目印(がん細胞特有のペプチド)や、体外でがんの目印を覚えさせた免疫細胞(樹状細胞)を、ワクチンとして体内に注入し、体内の免疫細胞に、がんを攻撃させようというもの。

 樹状細胞には、がん細胞を食べることで、リンパ球にがんの目印を覚えさせる働きがあるが、元々体内には少ない。そこで、体外で増やして体に戻し、免疫細胞にがんを攻撃させようというのが、樹状細胞療法だ。
 白血球のうちの単球を、患者から採血して取り出し培養。数を増やすだけではなく、がんを攻撃対象として学習させながら育てるのが特徴だ。

 滋賀医大助教の寺本晃治さん(呼吸器外科)は「治療期間中に限れば、約40%の患者でがんの増大を抑えられた」と話す。

 がんの免疫療法は、一部のがんへのインターフェロン治療などを除き、原則保険がきかない。
 樹状細胞療法は、滋賀医大など五つの大学病院で、一部に保険がきく国の先進医療の認可を受けており、患者の自己負担額は約3か月で70万円前後。東大など、病院負担の臨床試験として行っている大学病院もある。患者の自費診療で行っている民間のクリニックでは約3か月で150万~200万円かかる。

◆樹状細胞療法を先進医療 として行っている病院

・福島県立医大(福島市) (電)024・547・1111
・東京女子医大(東京都新宿区) (電)03・3353・8112
・滋賀医大(大津市) (電)077・548・2111
・大阪大(大阪府吹田市) (電)06・6879・5111
・九州大別府先進医療センター(大分県別府市) (電)0977・27・1600

2009年3月12日木曜日

短期・高線量照射

マイアミ大学とフォックスチェイスがんセンター(ペンシルバニア)の研究によると、
前立腺癌のα/β比(癌種ごとに至適線量を決定するパラメータ)は従来考えられているよりもっと高くて、
1回の照射線量を増やすかわりに、照射期間を短縮することを考慮すべきだという。
5週間(2.7Gyx26日=総量70.2Gy・・・生物学的等価線量では84.4Gy)で行う前立腺癌の短期・高線量照射は、
7.5週(2.0Gyx38日=76Gy総量)で行う従来の標準照射と、再発リスクや副作用に大差がないことが判明した。
放射線療法を短期に終えることは、患者にとっても好ましいことで、今後、もっと考慮の余地がある。

2009年3月9日月曜日

フィナステリド(プロペシア)は前立腺がんを予防する

ASCO(米国臨床腫瘍学会)とAUA(米国泌尿器科学会)は、
「前立腺がんの発症リスクを減らすため、フィナステリドの使用を主治医と相談することを勧める」
という内容を、新しいガイドラインに盛り込むことを決定。
ASCOはこれらの薬剤の服用に関する、リスクとベネフィットについて、図表を用いた説明書(意思決定ツール)を発表した。
ガイドラインの全容は、3月発行の学会誌(Journal of Clinical Oncology/ The Journal of Urology)に掲載予定。

注:フィナステリドは、5αリダクターゼの活動を阻害する男性型脱毛症(AGA)治療薬の成分のひとつで、
本来は前立腺肥大の治療および緩和に使用されている薬として、
米国メルク社から「プロスカー」という商標名で発売されていたが、
AGAの治療薬としての効果に注目があつまり、世界50カ国で発売中。
日本では、飲む育毛剤「プロペシア」という商品名で万有製薬から発売中。

ホットフラッシュを防ぐ

■ガバペンチン
シカゴで行われた2007年ASCO年次総会での報告によると、前立腺癌のホルモン治療を受けている200人以上の男性で行われた臨床試験で、ガバペンチン〔gabapentin〕(Neurontin®:日本商品名ガバペン)900mg/日の投与 によって、ホットフラッシュの頻度や症状が、ともに約45%改善した。
有害事象としては、食欲低下と便秘の増加が見られた。

抗けいれん剤であるガバペンチンは、すでに乳癌女性患者のほてりの治療薬として部分的に有効であることを示しており、前立腺がんへの適用についても有意義であることが実証された。

「われわれ研究チームは、ガバペンチン900mg/日の用量は前立腺癌の男性患者に対するホルモン療法に関連して生じるほてりを中等度に減少させることに強い確信を持っています」とASCO年次総会の研究結果の発表でLoprinzi医師は結論している。

■SNRI
2009年第97回日本泌尿器科学会のパネルディスカッション、千葉大の今本敬氏の発表によると、ホットフラッシュには、
抗うつ剤の一種セロトニンノルアドレナリン再取込み阻害薬(SNRI)の50mg/日の投与が有効であり、
また間欠内分泌療法(IAS)を行った患者のQOLでは性機能と社会・家族関係で有意な改善が認められることが分かった。

2009年3月7日土曜日

BNCT(ホウ素中性子補足療法)

中性子線を使ってがんを叩く「ホウ素中性子補足療法(BNCT)」が、今、注目されている。
がん細胞が取り込みやすいホウ素化合物をあらかじめ投与しておき、そこに中性子線を照射すると、中性子とホウ素が微小核反応を起こし、がん細胞のDNAを切断破壊するが、ホウ素を集積しない正常細胞を傷つけることはない。
BNCTは、がん細胞だけを狙い打ちできる次世代の放射線治療とも言われ、治療の難しい脳腫瘍や口腔がんに効果的なことがわかってきた。
まだ臨床試験段階だが、すでに400例を超える実施例がある。

ただ、これまでは、中性子線を発生されるためには原子炉が必要で、京大原子炉や日本原子力研究開発機構の研究炉など、研究施設が限定されていたが、このたび中性子を照射できる小型加速器(約3m四方)が、京大原子炉実験所の小野公二教授と住友重機械工業の手により開発された。
ホウ素も大阪府立大の切畑光統教授とステラファーマにより、より安定性の高い薬剤が開発されている。

今後は、原子炉などの大げさな装置が不要となったこともあり、大学病院への設置も視野に、研究に弾みがかかる見通し。
ただ、中性子を扱える専門家が少ないことが問題で、これをもっと普及させるためには、今後の人材育成も欠かせない。

2009年3月6日金曜日

ピコプラチン(picoplatin)

新規白金系抗癌剤であるpicoplatinとドセタキセル、プレドニゾンの併用が転移性ホルモン療法抵抗性前立腺癌のファーストライン療法となる可能性が明らかとなった。フェーズ2試験の結果、文献的な評価で既存の治療法と比べて、RECISTによる奏効率は同等で、PSA奏効率が上回り、PSA値増悪までの期間が長いという。成果は、2月26日から28日に米国オーランドで開催された2009 Genitourinary Cancers Symposium(ASCO GU)で米Poniard Pharmaceuticals社のR.Earhart氏によって発表された。

これも前立腺がんの新しいマーカー?

前立腺癌の悪性度と関連するメッセンジャーRNA(mRNA)を尿中から検出する遺伝子検査キットのプロトタイプが開発された。TMPRSS2(T2)遺伝子と癌原性転写因子ERGの遺伝子のmRNAが融合した「T2:ERG」の量をTMA法という遺伝子増幅法で検出するもの。T2:ERGは前立腺癌の組織に特異的に存在し、前立腺癌の約半数に確認されるという。アンドロゲンによる癌遺伝子の発現調節に関与していると考えられている。3施設で行われた評価で、85%という高い特異性を示し、癌の悪性度とT2:ERGの量が相関性を示した。成果は2月26日から28日に米国オーランドで開催された2009 Genitourinary Cancers Symposium(ASCO GU)で米Gen-Probe社のJ.Groskopf氏によって発表された。

2009年2月16日月曜日

前立腺がんの新しいマーカー

悪性度の高い前立腺がんでは、アミノ酸の一種サルコシンが患者の尿中に増加していることが判明。米ミシガン大などの研究チームは、サルコシンが前立腺がん診断のバイオマーカー候補になりうることを、英科学誌ネイチャー(2/12)に発表した。血液を採取するPSA測定より、簡単でより正確な診断法の開発につながる可能性があるという。

参照:asahi.com の「医療・健康」
http://www.asahi.com/health/news/TKY200902150124.html

2009年2月13日金曜日

循環がん細胞検出検査(CTC)について

(参考文献): New England Jounal of Medicine 2004,351,781-791
        2004年 ASCO 抄録9552

 従来のCTやPET検査では既に病巣として5mmもしくは1cm以上のものがないと検出できませんでしたが、CTCが血液中にあるがん細胞を検出できる方法として、米国FDAで測定方法として2004年1月に認可されました。

1.CTCが測定する価値がある病態
 A.手術後転移がないか調べる場合 
  (手術後再発予防の治療を受ける必要があるかどうか)
 B.CTやPETでは転移が明らかでないが再発の超早期の検診を希望する
  場合
 C.CTやPETでは転移が明らかでないが腫瘍マーカーなどが高く再発が
  懸念される場合
 D.長期にわたり再発しやすい乳がん、前立腺がん、腎がん、肝臓がん
  などのfollowの場合

2.CTCがあまり意味がない場合
 A.既に再発場所が明らかな場合
 B.健康診断あるいは人間ドックの代わりのがん検診
 C.血中転移が少ないタイプのがん

3.CTCを推奨するタイプのがん
 乳がん、前立腺がん、大腸がん、胃癌、膵臓がん、肺癌、卵巣がん、
 子宮がん、腎臓がんなど

4.測定方法
 単なる血液検査であり、採血のみで患者自身に負担がかかりません。

5.検査精度
 1回の検査で血液中にあるがん細胞を平均36%で検出可能です。検査陽性だが実は転移がない擬陽性は0.3%以下で信頼度は高い検査です。
 つまり検査陽性の例はまず間違いなく、転移・再発があると考えられます。偽陰性が高いのが難点ですが、血液中のがん細胞を発見する方法が他にない上、この検査を時期を置いて2回練り返す事により偽陰性の割合は半減することができます。

P53遺伝子変異

肺、前立腺、咽喉頭、食道、肝臓、乳がんに対して、
P53遺伝子変異が有る場合

 ・5-FU系の抗がん剤は効きにくい。
 ・将来的には遺伝子治療薬Adveinが希望。

以上 あきらめない診察室

抗サイトカイン療法

がんの悪液質は、血液中のサイトカインが高くなっているため、 このサイトカインが悪さをして進行がん患者のQOLを下げているのだと言うことは、 以前当サイトにも記したことですが、この事実を裏付ける記事が医学雑誌に載りました。
(日本医事新報 2007 No.4359 p49~52、p57~69)

 この記事は大変参考になりますので、是非一度読むことをお勧めします。
 がんの悪液質改善、抗がん剤治療後の副作用を抑えるには、サイトカインを抑制する必要があること、 そのために抗サイトカイン療法を行う事が必要となります。

 従い、改めて進行がん患者及び抗がん剤治療中の患者に、抗サイトカイン療法、 即ちレミケード、エンブレルの投与を呼びかけます。 一人でも多くの方に抗サイトカイン療法の恩恵がある事を期待します。

がん患者のあきらめない診察室 2008年5月28日

2009年2月12日木曜日

前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)の鎮痛効果

ノースカロライナ大学医学部とヘルシンキ大学の研究グループは、前立腺癌(がん)の腫瘍マーカーのひとつ、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)が、痛みを引き起こす化学伝達物質を痛みを抑える物質に変換する、痛覚ニューロンにみられる蛋白と同一であることを突き止めた。
 マウスを用いた試験の結果、PAPの単回投与(single dose)によって、モルヒネと同等の鎮痛効果が認められ、さらに持続時間はモルヒネよりも大幅に長いことが判明した。モルヒネ単回投与の効果持続時間が5時間なのに対し、PAP単回投与では最長3日間とはるかに長い。
「この蛋白(PAP)には革新的な疼痛治療をもたらす可能性がある。モルヒネのように注射して疼痛治療に用いることもできるが、錠剤として使用できるようにしたい。」とノースカロライナ大学細胞分子生理学助教授Mark J. Zylka氏は述べている。

ホルモン療法と化学療法の併用療法

Recently, researchers in England conducted a clinical trial evaluating treatment consisting of hormone therapy plus the chemotherapy agent mitozantrone versus hormone therapy alone for patients with locally advanced prostate cancer.
Hormone therapy in this trial consisted of injections of an agent that reduced the production of androgens (particularly testosterone) in the body.
Ninety-five percent of patients who received the combination treatment experienced a complete or partial disappearance of their cancer, compared to only 53% of patients who received only hormone therapy.
Importantly, the average duration of survival following therapy was significantly higher in patients who received both Novantroneツョ and hormone therapy, nearly 7.5 years, compared to 3 years for patients receiving only hormone therapy.

最近、イギリスの研究者は、局所進行前立腺癌患者を対象とし、ホルモン単独療法・・・アンドロゲン(特にtestosterone)の生産を抑える薬剤(LH-RHアナログ剤)・・・と、ホルモン療法と化学療法(ミトキサントロン)の併用療法を比較評価する臨床試験を行いました。
がんが消滅もしくは縮小(complete or partial disappearance)したと判断しうる割合は、ホルモン療法だけを受けた患者では53%でしたが、併用療法を受けた患者では95%パーセントに達しました。
注目すべきは治療後の生存期間の平均値で、ホルモン療法だけを受けた患者の約3年と比べて、併用療法を受けた患者では約7.5年と明らかに高い数値を示しました。

2009年2月10日火曜日

NOTES(経管腔的内視鏡手術)

外科手術は、侵襲の大きい外部からの切開から、内視鏡やロボットなどを利用した低侵襲手術へ移行しつつありますが、
このNOTESという手法はそれをさらに進化させたもの。
内視鏡の進入口(あるいは臓器の摘出口)を人体の自然孔、口(胃壁)、肛門(大腸壁)、膣(膣壁)等を利用することで、
より患者への負担を少なくし、傷跡もより目立たなくすることができるという。
現段階でヒトに応用されているのは経胃と経膣の2つで、腸壁への応用は感染制御法の確率が先決。
ただ、内視鏡の操作性などの問題から「ピュア(完全)NOTES」は少なく、腹腔鏡のアシストを伴う「ハイブリッド(混合)NOTES」が大勢。
インドや南米では臨床応用がすでに盛んに行われているとのこと。

【参考実施例】
・従来なら開腹をしなければわからなかった膵がんの病期診断を、口からの内視鏡で経胃的に腹腔内観察を行う。
 (大分大第一外科北野正剛教授)

・経膣的胃粘膜下腫瘍切除を55歳女性と63歳女性に対して施行し成功。術後の疼痛の訴えは皆無に近かった。
 (阪大消化器外科中島清一助教)

・経膣的腎移植(48歳の女性から姪に)に成功。ドナーには特に低侵襲性(痛み・傷跡が小さい)が求められる。
 (米国:ジョンス・ホプキンス大)

前立腺切除に、はたしてNOTESが応用できるのか?
直腸経由となるので、傷口からの感染がやはり一番問題になるでしょうね。
会陰式同様リンパ節の郭清は難しいと思うので、初期がんに限られるでしょうし、
初期がんなら、ブラキセラピーなどもっと楽な方法もありますね。
腎臓の手術でもオトコは膣がないので難しいでしょうね。ここでも女性優位?

2009年2月6日金曜日

ダヴィンチ手術について

■医学的に期待しうる効果
- Improved cancer control
がん制御率の向上
- Early return of urinary function
排尿関連機能の早期回復
- Improved outcomes for potency
性機能を保持する可能性の向上

■術者(医師)から見たメリット
- Enhanced 3D view of the operating area
3次元画像の進歩による操作視野の向上
- Improved dexterity
器用さを発揮するための操作性の向上
- Greater surgical precision
手術精度の飛躍的増大
- Increased range of motion
操作可能範囲が広がった
- Improved access
とっつきやすい術式である
- Reproducibility
再現性がある

■患者から見たメリット
- Less pain following the operation
低進襲手術である(痛みが少なく傷跡も小さい)
- Fewer complications
煩わしさが減る
- Less risk of infection
感染の危険性が低い
- Less anesthesia
麻酔が少ない
- Less blood loss
失血が少ない
- Shorter hospital stay
入院が短くなる
- Faster and more complete recovery
より速くて、より完全な回復
- Quicker return to normal daily activities
通常の毎日の活動への、より迅速なリターン

2009年1月12日月曜日

骨転移の対処法

骨転移の対処法としては、次のような対応が一般的です。

1)まずは疼痛緩和を強く要望する
   痛みからの解放は、患者の権利でもあり、がん対策基本法でも重要項目として
   取り上げられている緩和医療の精神です。
   ただし、緩和ケア(WHO方式3段階除痛ラダー)に習熟した医師であることが必須。
   習熟した医師でもこれが効かない場合(骨痛の場合これもありえる)は(2)

2)神経ブロック あるいは オピオイド(医療用麻薬)のくも膜下投与。
   これで痛みは取れるはずですが、やはりその技量を持った医師が必要です。
   また、これだけでは骨転移そのものは改善しない為、以下の併用が望ましい。

3)ビスフォスフォネート剤(ゾメタ等)の静注。

4)骨転移が限局的であれば放射線の外部照射。

5)骨転移ヶ所が多ければ放射性同位元素(メタストロン)の静注。
   ただしこの処置ができる医療機関は限られています。

以上ですが、主治医とも良く相談なさってみてください。(私見)

2009年1月9日金曜日

東大、数学モデル用いた前立腺がんの治療法を開発

 東京大学生産技術研究所の合原一幸教授らは、数学モデルを用いた前立腺がんの治療法を開発した。前立腺がんの大きさを反映する、糖たんぱく質の一種「前立腺特異抗原(PSA)」に着目。微分方程式を応用し、PSAの数値から投薬の最適なタイミングを患者ごとに割り出す。有効な治療法の提供につながるため、患者のQOL(生活の質)の向上が期待できる。 前立腺がんに対し、国内の多くの病院では抗男性ホルモン剤などを投与するのが一般的。ただ投与をそのまま続けていくと効果が薄れ、がんが再発してしまうことがある。そのためPSAに応じて投与を中断・再開する治療法が提唱されているものの、患者により効果にバラつきがあるのが難点だった。(日刊工業新聞 2008年12月24日)

意味がもひとつ分かり難い記事ですが、推測するにどうも前立腺がんに詳しくない記者が書いたようです。

間歇療法を行う時は、PSAがどの数値まで下がればホルモン剤を休止し、どの数値まで上がれば再開するかが重要なポイントとなりますが、
「患者それぞれのPSAの値(初期値かどうかは不明)から、間歇療法におけるホルモン剤投与の休止と再開のタイミングを数式で判断可能とした」と言えばもっと明快になるでしょう。
その式の中でPSAの値を函数としてどのように扱っているのかをもっと知りたいですね。
素人には理解不能なほど高度な数式なんでしょうか?(^^;;;

2009年1月8日木曜日

術前の血漿HER2、EHFR値は予後に関連

ヒト上皮増殖因子受容体-2(HER2)および上皮増殖因子受容体(EGFR)発現は前立腺癌の進行に関連することが知られている。限局性前立腺癌に対し根治的前立腺摘出術ならびに両側リンパ節切除術を施行した患者227例の術前の血漿HER2およびEGFR値を市販のELISAにより測定した。術前血漿EGFRおよびHER2の中央値はそれぞれ31.4ng/mL(4分位範囲19.2ng/mL)および10.0ng/mL(2.7ng/mL)であった。精嚢浸潤のみられた患者ではHER2が上昇していた(p=0.033)。標準的な術前予測因子で補正した個別多変量解析では、EGFRの低値、HERの高値およびHER2/EGFR比の高値がPSA増悪と関連していた(それぞれp=0.003、p<0.001およびp<0.001)。標準的な術後予測因子で補正した個別多変量解析では、EGFRの低値およびHER2/EGFR比の高値がPSA増悪と関連していた(それぞれp=0.027およびp<0.001)。PSA増悪のみられた患者ではHER2が有意に高値(p=0.023)、EGFRが低値(p=0.04)であり、侵襲性癌の特徴(転移の発症、PSA倍加時間<10か月または局所救済放射線療法無効)を示した。
根治的前立腺摘出術前の血漿HER2およびEHFR値は術後の前立腺癌の進行に関連しており、長期の無再発生存期間および早期転移の予測ツールになりうると考えられた。
↓ 原文
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez?cmd=Retrieve&db=PubMed&dopt=AbstractPlus&list_uids=17875766

直腸脱気チューブ

前立腺がんの放射線治療で最もやりにくいのは直腸の位置が定まらないこと。
直腸脱気チューブは直腸に挿入して直腸の形状を固定し、放射線を前立腺のみに照射しやすくする器具。先端は滑らかな半球状で直腸に挿入しやすい。側面に細長い楕円(だえん)形の穴が複数空いており、挿入すると穴から直腸内を脱気できる。
アオイ(静岡県御殿場市)が製造し、ネジメーカーの東海部品工業(静岡県沼津市)が包装・検品を担当、医療機器専門商社の協和医科器械が販路を開拓する。(日刊工業新聞 2009年01月08日)

デガレリクス(Gn-RHアンタゴニスト)

米国食品医薬品局(FDA)2008年12月29日の発表によると、FDAは注射剤degarelix〔デガレリクス〕を前立腺がん治療薬として承認した。前立腺がん治療薬では数年ぶりの新薬となる。
Degarelixは進行性前立腺癌の治療を目的とする、Gn-RH(*)アンタゴニスト(受容体拮抗薬)。
リュープリンやゾラデックス等のLH-RHアゴニストがLH-RH受容体の働きを刺激する(ダウンレギュレーション作用で結局は抑制に働く)のに対し、
デガレリクスは同受容体と拮抗して直ちに抑制作用を発揮させるのが特徴。
この薬群は、前立腺癌が成長し続けるうえで重要な役割をもつテストステロンを抑制し前立腺癌の成長と進行を遅らせ、去勢と同等の状態を作り出す。
これまでのLH-RHアゴニスト(アナログ剤)というのは、要するにLH-RHの類似偽薬ですから、
LH-RHの自然な反応として、一時的せよテストステロンの上昇を招くことがあります(フレアーアップ現象)。
その過剰連続刺激に対する防御反応から、今度はレセプターが減少しテストステロンの産生が抑制されるわけですから、
初期投与時には、前もって抗男性ホルモンでテストステロンを下げておく等、それなりの注意が必要でしたが、アンタゴニストであるデガレリクス(degarelix)は直接テストステロンの産生を抑制するので、フレアーアップ現象はみられず、その必要はありません。
どちらの薬剤の投与でも、患者のほぼ全員に、精巣摘出術と同等レベルのテストステロン抑制効果があり、副作用に関しては類似しており特に優劣はありません。

* GnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン):
FSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体化ホルモン)を下垂体前葉から分泌させるペプチドホルモンで、視床下部で合成、分泌される。