PSA検診を不要とする主な理由は以下の二つです。
(これに財政問題を加える人もあり)
1.死亡率を下げるという根拠がない
臨床系医師の多くは「死亡率を下げる」といい、公衆衛生や予防医 学に関わる人の多くは「下げるとは言えない」という。それぞれ自 説に有利なランダム化比較試験を持ちだしている。
好きに論争していただければけっこうなので、特にコメントはしな い。
ただ、PSA検診を止めれば、低リスクがんの発見が減ると共に、 がん発見のタイミングも遅れるので、骨転移などの進行がんの比率 が高まるのは否定できない。米国では3倍になるとう報告もある。
2.がん死を防ぐメリットよりも、生検や不必要な手術によって被 るデメリットの方が大きい。
デメリットそのものは否定しないが、デメリットが大きいことの説 明に用いられているこの図(元は英文です)は、我国では非常に誤 解を生みやすい。
下の図によれば、検診により前立腺がんと診断されるのは1000 人中「110人」、そのうちなんらかの治療によって合併症を引き 起こすのは、少なくとも「50人」。
しかし、我国の実情はこれ(下)が正解です。
PSA検診によってがんと診断されるのは1000人中「11人」 そのうちなんらかの合併症を生じるのは「5人ほど」。
前立腺がんの罹患率は米国の1/ 10以下であり(米国:93.4 対 日本:8.5)、実際の住民健診データ(45万人)の分析でも、 がんと診断されるのは「11/ 1000」であることが裏付けられています。がん治療によりなんら かの合併症を引き起こすのは約0.5%。これを多いと思うか少な いと思うかはともかくとして、デメリットを10倍に拡大されたよ うな図を見せられて、どや!と言われても、ちょっと返事に困って しまいます。
米国のデータですから「正しい」ことには間違いないのでしょうが 、注記もなくこれを日本語で見せられると、我国もこれと同等と早 合点しかねません。強烈な「誘導」となってしまうのではないでし ょうか。
PSA検診の普及率も日米では雲泥の差ですよね。米国ではほぼ8 割ですが、日本は2割にも満たない。
PSA検診を受けた1000人当たりの比較はこの数値だけれど、 実数ではもっととんでもなく大きな開きがあるわけです。
PSA検診事情においては米国は日本よりはるかに成熟しています 。
発展を追い求めて成熟した先進国が、「公害」の広がりに気付いて その行きすぎの修正に乗り出したというのが今の米国のPSA検診 事情ではないでしょうか。
はたして、我国が発展途上国であることを自覚しないまま、ストレ ートに米国に追随して良いものでしょうか。
PSA検査の年間費用は少なくとも30億ドルにのぼり、米国の保 険財政を圧迫しているという話も聞きます。日本の財政事情には詳 しくありませんが、この数値も我国では桁違い、米国とは大きく異 なるはずです。
しかし医療財政に関わる人にとっては、是非とも取り上げたい話題 でしょう。
PSA検診の規制につながる動きには、純学問的な話以外に、それ ぞれの国情が大きく関与しているように思われます。
前立腺がん患者のほとんどはPSA検診は必要だと考えているよう に思うのですが、私はもともと公的検診の普及にはどちらかと言え ば慎重な方でした。しかし、我国の現状を見ずして安易に「PSA 検診廃止」の論調に乗っかろうという動きには、どうしても違和感 を覚えてしまいます。
「公害」に十分注意を払いながら、先進国の仲間入りをするという 手を模索して行くべきではないでしょうか。
1.死亡率を下げるという根拠がない
臨床系医師の多くは「死亡率を下げる」といい、公衆衛生や予防医
好きに論争していただければけっこうなので、特にコメントはしな
ただ、PSA検診を止めれば、低リスクがんの発見が減ると共に、
2.がん死を防ぐメリットよりも、生検や不必要な手術によって被
デメリットそのものは否定しないが、デメリットが大きいことの説
下の図によれば、検診により前立腺がんと診断されるのは1000
しかし、我国の実情はこれ(下)が正解です。
PSA検診によってがんと診断されるのは1000人中「11人」
前立腺がんの罹患率は米国の1/
米国のデータですから「正しい」ことには間違いないのでしょうが
PSA検診の普及率も日米では雲泥の差ですよね。米国ではほぼ8
PSA検診を受けた1000人当たりの比較はこの数値だけれど、
PSA検診事情においては米国は日本よりはるかに成熟しています
発展を追い求めて成熟した先進国が、「公害」の広がりに気付いて
はたして、我国が発展途上国であることを自覚しないまま、ストレ
PSA検査の年間費用は少なくとも30億ドルにのぼり、米国の保
しかし医療財政に関わる人にとっては、是非とも取り上げたい話題
PSA検診の規制につながる動きには、純学問的な話以外に、それ
前立腺がん患者のほとんどはPSA検診は必要だと考えているよう
「公害」に十分注意を払いながら、先進国の仲間入りをするという