米国食品医薬品局(FDA)2008年12月29日の発表によると、FDAは注射剤degarelix〔デガレリクス〕を前立腺がん治療薬として承認した。前立腺がん治療薬では数年ぶりの新薬となる。
Degarelixは進行性前立腺癌の治療を目的とする、Gn-RH(*)アンタゴニスト(受容体拮抗薬)。
リュープリンやゾラデックス等のLH-RHアゴニストがLH-RH受容体の働きを刺激する(ダウンレギュレーション作用で結局は抑制に働く)のに対し、
デガレリクスは同受容体と拮抗して直ちに抑制作用を発揮させるのが特徴。
この薬群は、前立腺癌が成長し続けるうえで重要な役割をもつテストステロンを抑制し前立腺癌の成長と進行を遅らせ、去勢と同等の状態を作り出す。
これまでのLH-RHアゴニスト(アナログ剤)というのは、要するにLH-RHの類似偽薬ですから、
LH-RHの自然な反応として、一時的せよテストステロンの上昇を招くことがあります(フレアーアップ現象)。
その過剰連続刺激に対する防御反応から、今度はレセプターが減少しテストステロンの産生が抑制されるわけですから、
初期投与時には、前もって抗男性ホルモンでテストステロンを下げておく等、それなりの注意が必要でしたが、アンタゴニストであるデガレリクス(degarelix)は直接テストステロンの産生を抑制するので、フレアーアップ現象はみられず、その必要はありません。
どちらの薬剤の投与でも、患者のほぼ全員に、精巣摘出術と同等レベルのテストステロン抑制効果があり、副作用に関しては類似しており特に優劣はありません。
* GnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン):
FSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体化ホルモン)を下垂体前葉から分泌させるペプチドホルモンで、視床下部で合成、分泌される。