2013年7月26日金曜日

ドセタキセルの感受性は復活可能!?

前立腺がんの抗がん剤「docetaxel(ドセタキセル)」の効果が薄れてきても、リバビリン(ribavirin)を添加すれば、再びその効果が復活し、抗がん剤に感受性を取り戻すことが可能であるという発表がなされました。
慶応大と産業技術総合研究所の共同研究によるものです。

(慶応大医学部 プレスリリース 2013/7/24)

既存薬をほかの疾患の治療に転用することを「ドラッグ・リポジショニング」と呼んでいますが、リバビリンというのは、本来は、インターフェロン(薬剤)との併用でC型肝炎の治療に用いられている抗ウイルス剤です。
「ドラッグ・リポジショニング」の例は色々ありますが、特に有名なのは、肺動脈性肺高血圧症の治療薬「シルデナフィル」が、「バイアグラ」として勃起不全の治療にも用いられていることです。
既存薬は、すでに安全性の検討は終えており、新薬開発に必要とされる膨大な時間と費用が大幅に削減されるので、この手法が今、製薬業界で注目されているとか。





抗がん剤に耐性を示すのには、多能性幹細胞が関わっており、多能性幹細胞には OCT4 という遺伝子転写因子の高発現が見られます。OCT4 の発現が高い細胞(耐性細胞)と、そうでない細胞(感受性)を分離し、ドセタキセルの効果を比較試験したところ、その違いは明らかであり、このOCTの発現を逆転させ、「抗がん剤耐性」を再び「感受性」に戻す、即ちリプログラミングさせるため、新たに開発されたプログラムで、既存薬の中から候補9種類をピックアップ。実験でこれらを検証、絞り込むことにより、リバビリンが浮上してきたとか。
慶応大では引き続き臨床試験を始めるべく検討を始めているとのことですが、普通は、ここから先が、思いのほか長くて厳しい道のりになるんですよね。

「ドラッグ・リポジショニング」の利点を生かして、なんとか早期に実用に漕ぎつけてもらいたいものです。

詳しくはこちらのプレスリリースをご覧ください。
http://www.keio.ac.jp/ja/press_release/2013/kr7a4300000ccfyu-att/130724_1.pdf
その要約がマイナビニュースにも書かれています。
http://news.mynavi.jp/news/2013/07/25/174/index.html