2013年7月17日水曜日

Xofigo(塩化ラジウム-223)

2013年5月16日、FDA(米国食品医薬品局)は、骨転移を有する(他臓器に転移のない)去勢抵抗性前立腺がんの治療薬として、Xofigo(塩化ラジウム-223)を、予定より3ヵ月前倒しで承認した。治療対象となるのは、テストステロンの産生を抑制する薬物療法や去勢術を受けたことのある前立腺がん患者で、全生存期間が約3ヶ月延長することが確認された。
Xofigoは、アルファ線を放出する放射性医薬品で、骨内のミネラル成分と結合し、骨腫瘍に直接放射線を照射するため、周辺正常組織へのダメージを抑えることができる。
アルファラディンの名称で臨床試験結果をお伝えしていたものと同じ薬剤で、呼称がXofigoと変わたもの。
臨床試験で報告された主な副作用は、悪心、下痢、嘔吐、ならびに、脚、足首、足の腫脹。
血液検査における異常は、赤血球、リンパ球、白血球、血小板、好中球の減少であった。

治療用放射性医薬品としては、すでにメタストロン注(ストロンチウム-89)が、我国でも用いられているが、メタストロン注がベータ線を放出するのに対し、Xofigo(塩化ラジウム-223)はアルファ線を放出する。
ストロンチウムとラジウムは、いずれもカルシウムと似た性格を持つため、骨に集まりやすい。
ラジウムの放出するアルファ線は、ストロンチウムの放出するベータ線に比べて、放射線のエネルギーが数倍高いが、飛程距離はうんと短いため紙1枚でも遮蔽でき、体外に放射線が漏れる心配はない。
放射性ラジウム226 は、1,500年という長い半減期を持っているので、被曝が重要問題となり、取り扱いも困難だが、今回承認された 223 は、数10分という半減期なので、短時間で放射能を失ってしまう。
半減期が50日ほどのストロンチウム89の効果持続期間がほぼ3ヵ月と言われているのに対し、Xofigo がほぼ1ヵ月という理由は、この半減期の違いによるものと思われる。